記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/7/31
記事監修医師
前田 裕斗 先生
葉巻・タバコ・パイプからの煙は様々な形で体にダメージを与えますが、喘息患者の肺にとっては特に有害です。この記事では喘息とタバコの関係性について説明します。
タバコの煙は肺機能を傷つけるため、喘息への強力な引き金となります。下記で、タバコの煙が害を及ぼす理由を見ていきましょう。
タバコの煙を吸うと、気道の湿った内膜に刺激性の物質が沈着します。
これらの物質は、喘息のある人が発作を引き起こす要因になり得るものです。
また、たばこの煙は気道にある繊毛を損傷します。通常は繊毛が気道にあるほこりや粘液を掃除してくれますが、タバコの煙によって繊毛が機能しなくなることで塵や粘液が気道に蓄積し、喘息を引き起こしやすくなると考えられます。
さらに、タバコの煙は肺が正常時よりも多くの粘液を作る原因となります。その結果より多くの粘液が気道に蓄積して発作が引き起こされるのです。
受動喫煙とは、喫煙者でない人が喫煙者が吐き出した煙を間接的に体内に取り入れてしまうことです。受動喫煙は、実際に喫煙するよりも有害である可能性があります。それは、葉巻やタバコの端から出る煙には、喫煙者が吸った煙よりも多くの有害物質(タール、一酸化炭素、ニコチンなど)が含まれているためです。また、受動喫煙は喘息のある人にとって特に有害で、喘息のある人が受動喫煙をした場合、喘鳴に伴う喘鳴、咳、息切れなどを発症する可能性が高くなります。
受動喫煙は喘息の子供にとって、成人よりも大きな害悪となります。
子供がタバコの煙にさらされると肺が刺激されて正常より多くの粘液を分泌するため、気道に溜まりやすくなってしまうと考えられています。
子供の気道は大人より小さいため受動喫煙の影響を受けやすく、成長後に肺機能へ影響を与えることが予想されています。
また、喫煙する両親の子供は肺の感染や副鼻腔感染症を発症するリスクがより高いとされ、これらの感染は喘息の症状を悪化させる他、発作の制御を難しくする可能性を大きくします。
タバコをやめると1週間で喘息患者の肺機能が改善されることが判明しています。喫煙者をしている20人の喘息患者(平均年齢40代)を対象にした研究では、喫煙をやめてから1週間以内には肺機能が改善し始め、さらにその後も肺機能検査の数値に改善が見られました。一方で喫煙を続けている患者には、このような変化は見られませんでした。
ちなみに、この研究で肺機能に改善が見られた被験者は少なくとも28年間に渡って1日に平均20本以上のタバコを吸っていました。
このことから、禁煙が肺機能の回復に大きく関係していることがわかります。また、“一度喫煙したからには禁煙しても意味が無い”という考えは間違っており、禁煙を始めることは喫煙年数を問わず喘息の改善に効果的だと言えるでしょう。
タバコや葉巻、パイプからの煙は喘息にとって大きな害悪です。また、受動喫煙も喘息を悪化させる要因となります。自らが喫煙者ならばタバコをやめるのはもちろん、禁煙中はタバコの煙を避けるようにしましょう。