記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/3/10 記事改定日: 2020/4/24
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
腸チフスとパラチフスは開発途上のアジア圏やアフリカに多くみられる感染症です。海外旅行のときにはとくに注意したい感染症ですが、症状の特徴や予防対策をご存知でしょうか。
この記事では、腸チフスとパラチフスの症状や治療、予防方法について解説していきます。
ここでは、旅行の際に注意したい腸チフスの情報と予防接種について説明していきます。
腸チフスとパラチフスは、以下のような症状が現れる感染症です。病名に「腸」がつくため下痢を想像する人が多いようですが、下痢の症状が出ないこともあります。
腸チフスはチフス菌、パラチフスはパラチフスA菌が原因菌であり、感染すると1週間〜2週間ほどの潜伏期間を経たあと症状が現れ始め、重症化すると腸出血や腸穿孔、難聴、意識障害などに陥ることもあります。
腸チフスとパラチフスの症状にはほとんど違いがないとされていますが、パラチフスのほうが潜伏期間が短く、軽症のことが多いといわれています。
腸チフスやパラチフスの流行地域は以下の通りです。
世界中で感染が見られる感染症でありますが、衛生基準や食品衛生基準の低い地域での感染数がとくに多く、南アジア、東南アジア、中南米、アフリカでの発生例が目立ちます。
また、近年では流行地域から持ち込まれることによる国内感染の例も報告されています。
腸チフス、パラチフスともに、チフス菌やパラチフスA菌に汚染されたヒトの糞便や食品・水から経口感染します。
非常に少ない量でも感染力があり、発症者・保菌者が触ったものから接触感染することもあります。
腸チフスやパラチフスは「細菌感染によって引き起こされる病気」であるため、治療には抗生物質が使用されます。一方で、近年では抗生物質が効きにくい「薬剤耐性」を持つチフス菌やパラチフス菌も増えており、治療が難しくなるケースも少なくありません。
また、そのほかにも発熱に対する解熱剤、下痢や嘔吐による脱水症に対する点滴治療などそれぞれの症状を改善するための対症療法が同時に行われます。
腸チフスやパラチフスを予防するには、原因菌を体内に取り込まないよう手洗い、手指消毒を徹底することが大切です。また、東南アジアなどの流行地に渡航したときは、衛生状態がわからない生水やサラダ、生焼けの肉類などのような、きちんと火が通っていない食品は避けるようにしましょう。
また、腸チフスにはワクチンがありますが、日本では感染者がほとんどいないため未認可です。受けられる医療機関は限られていますので、流行地に赴任・移住する予定があって接種を希望する人は注意しましょう。
なお、パラチフスに関しては現在のところ有効なワクチンは開発されていません。
腸チフス・パラチフスともに適切な抗生物質の投与で回復しますが、アジアでは薬物耐性菌の報告もあるため注意が必要です。腸チフスのワクチンは日本では未認可のため受けられる医療機関が限られていることもあり、感染しないための予防対策が大切になってきます。
流行が確認されている地域に行くときは、口にする食べもの・飲みものに気をつけ、海外渡航後に気になる症状があるときは、早めに専門の医療機関に相談しましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。