記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/1 記事改定日: 2019/4/8
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
咳が止まらない、呼吸が苦しい、急に発作が起きた、という気管支喘息(以下、喘息と表記します)の症状には吸入器が頼りになります。応急処置だけでなく予防に使えるものもありますが、吸入器は適切な使い方をしないと効果が減少してしまいます。この記事で吸入器の種類や正しい使い方について見ていきましょう。
まず、気管支喘息(以下、喘息)の吸入器は使用目的によって大きく2つに分かれ、吸入器(リリーバー)と予防型吸入器(コントローラー)に分かれます。
以下にそれぞれの特徴を紹介します。
この種類の吸入器は喘息の症状や発作を素早く止めるため、応急処置として用いられます。短い時間で症状を緩和することが可能で(5~15分程度で通常効果が現れます)で、通常は「短時間作用型β2刺激薬」と呼ばれる薬が使われ、気道を広げて呼吸を楽にしてくれます。
商品名としては「メプチン®」「サルタノール®」などがあります。
このリリーバーはあくまで短期間の症状緩和が目的であり、長期的に喘息をコントロールするものではないことがあげられます。
理想を言うと、この種類の吸入器はあまり頻繁に使わないほうが良いのですが、喘息ならば大きな発作などの万一の備えとして持っておくようにしましょう。
β刺激薬は交感神経に働きかけるため、吸入器を使った後に軽い手の震え、頭痛、筋肉のけいれん、頻脈、動悸などの副作用があらわれることがあります。
これらの症状は通常数分以内に消えることがほとんどです。
コントローラーと呼ばれる吸入器は、なるべく毎日継続して使うことで長期的に発作を抑える役割を果たします。
吸入ステロイド薬が含まれていて、喘息の人の気道に慢性的に起きている炎症を抑える効果的があります。発作があってもなくても、喘息の予防のために1日に決められた回数を吸入しましょう。
商品名として「フルタイド®」「パルミコート®」「オルベスコ®」などがあります。
また、近年では長時間作用型β刺激薬との合剤(商品名は「アドエア®」「シムビコート®」「レルベア®」など)を使うことも増えてきているようです。
通常の用量であれば非常に安全ですが、高用量を長期間に渡って使用すると副作用を引き起こす可能性があります。
代表的な副作用としては
などがあります。
これらは口の中に残っている成分が原因なので、吸入後にうがいをして発症を防ぎましょう。
また、予防型吸入器には即効性が無いため、発作や症状が出た場合には先述したコントローラータイプの症状を和らげる吸入器を使う必要があります。急な事態に対処できるよう、ひとつは持っておきましょう。
吸入器にはいくつかのタイプがあり、個々の症状に合ったものを選ぶことができますが、吸入動作や手順が少しずつ違うために操作に戸惑う人も少なくありません。
そこで、この項目では代表的な2つのタイプの使い方を紹介します。
喘息の吸入器は大まかに、上の2つのタイプにわかれます。
適切な効果を得るために、使用する吸入器に応じた正しい使い方を見ていきましょう。
息を吸いながら吸入器を押して、スプレー状に放出された薬を吸い込みます。息をゆっくり吸いながら吸入ボタンを押しましょう。
エアゾール自体はゆっくり入ってきますので、あまり急いで吸い込むとうまくいきません。
また吸気とタイミングを合わせるのが少し難しいかもしれませんが、吸い込み終わったらそのまま息を吐かずに5秒ほど息を止めて、粒子を空気の通り道に行き渡らせるようにしましょう。
粉末状の薬を放出する非加圧の装置です。薬剤を吸引するには素早く・力強く息を吸い込む必要があるので、幼い子供、高齢者、そして呼吸困難があるような場合には使用が難しい場合があります。
ただ、こちらは逆に自分の好きなタイミングで吸入ができる点がメリットです。
エアゾールとは違って思い切り息を吸い込む(蕎麦をすするように、とよく例えられます)のがポイントで、こちらも吸い込み終わった後少しの間息を止めたままにして粒子を行き渡らせるようにしてください。
喘息の治療薬とうたった市販薬は販売されていますが、いずれも喘息を根本的に治療するものではありません。また、喘息に効く吸入タイプの市販薬は販売されていません。
どうしてもすぐに病院に行けない場合などに市販薬で一時的に症状をおさえることができることもありますが、あくまで代替的に一時的に症状をおさえるために使用し、長期に渡る使用は避けるようにしてください。
喘息は市販薬で完治することはほぼないため、医療機関の受診が必要です。
喘息の症状がみられたら、子供の場合は小児科を、大人の場合は呼吸器科やアレルギー科を受診しましょう。
喘息の吸入器は基本的に飛行機へ持ち込むことが可能です。しかし、渡航する国や渡航する航空会社によっては、説明を求められることがありますので、念のため英語の使用説明書を用意しておくと安心です。
さらに、医療機関に英訳の診断書や証明書を発行してもらうと役立つこともありますので、渡航前にかかりつけの医療機関に相談するようにしましょう。
使用済みの吸入器は家庭ごみとして処分することができます。処分方法は各自治体の定めによって異なりますが、プラスチックのみが使用されている容器であれば、可燃ごみとして処分して問題ありません。しかし、中に金属のバネ、針、アルミなどが入っているタイプのものは不燃ごみとして処分しましょう。
自身が使用する吸入器の詳しい素材が分からない場合は、処方された病院や薬局に聞くのがおすすめです。病院によっては、使用後の吸入器を回収して医療廃棄物として処分してくれることもありますので、処分の仕方に困ったらまずは相談してみるとよいでしょう。
喘息の吸入器にはいくつかの種類があり、種類によって効果や使用法が異なります。使用前に医師や薬剤師から正しい使用法のレクチャーを受けるようにしてください。最初のうちは気をつけていても、長期間使用を続けていくうちに自己流になってしまうことも少なくないようです。定期的に自分の吸入方法を見直し、正しい方法で吸入器を使えているかを確認しましょう。