記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/7/21 記事改定日: 2018/2/23
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
咳、発熱、喉の痛みなどの症状があると、まずは風邪やインフルエンザが疑われますが、それらの症状が長引いたりひどくなっていくようであれば、肺炎にかかっている可能性が高くなります。
では、肺炎・風邪・インフルエンザはどのように違うのでしょうか?
この記事で詳しく見ていきましょう。
肺炎と風邪、インフルエンザの症状は似ているので、見分けるのが難しいことも少なくありません。それぞれの特徴を以下にご紹介します。
風邪とはウイルスによる上気道炎のことを指し、代表的な症状は軽度の発熱、鼻水、咳、喉の痛みなどです。程度は重くない場合が多いですが、倦怠感や食欲低下が見られることもあります。
風邪の特徴は症状がゆっくりと現われることです。
もしも、38℃を超える発熱や頭痛、重度のうずきや痛みなどがみられる場合は、風邪ではない可能性があります。
インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症を指します。症状は突然現れることが多く、主な症状として<高熱(38℃を超えるもの)、頭痛、重度のうずきと痛み、極度の倦怠感、乾いたから咳>などが見られます。インフルエンザの症状は2~5日で緩和する傾向がありますが、軽度の咳や喉の痛みは2週間程続くことがあります。
肺炎は主に肺炎球菌やマイコプラズマに代表される細菌によって引き起こされる肺の炎症です(ただし免疫力が低い子供や高齢者の場合はウイルスや真菌によって肺炎が引き起こされることもあります)。
肺炎を発症すると<発熱、悪寒、呼吸障害、痰を伴った咳>などの症状が見られます。
風邪とは異なり、通常は鼻水や喉の痛みが現われにくいことが特徴です。通常、肺炎はインフルエンザよりも遅く風邪よりも早く症状が表れる傾向にあります。
ただし、風邪やインフルエンザは合併症として肺炎を引き起こすこともあるので、見極めは難しいです。
二次感染による肺炎が起こったときは、風邪などの症状が一時的に回復した後に再度発熱などの症状が出現して重症化することがあります。
そうなると、肺炎は完治するまで3週間以上、倦怠感がなくなるまでは1か月以上かかることもあります。
ここでは肺炎の代表的な症状と子供にみられる肺炎の症状を紹介します。
肺炎の主な症状は以下の通りです。
・40℃近い高熱
・緑色、黄色、血の混じった痰を伴う咳
・悪寒(体が震えること)
・たくさん動いた後に息をつくことができないように感じる
・激しい倦怠感
・食欲がない
・鋭く刺すような胸の痛み(特に咳や深呼吸をしたときに特に感じることがあります)
・大量の汗をかく
・速い呼吸と心拍
・唇と爪が青紫色になる
・混乱(高齢者)
子供は大人よりも風邪やインフルエンザによって発熱しやすいので、肺炎との見分けがさらに難しくなります。ただし、<激しく速い呼吸(毎分45回以上の呼吸)、40℃近い発熱、咳、喘鳴、唇や指先が青く見える>などの症状がある場合は肺炎である可能性があります。
また、赤ちゃんが肺炎になっても不機嫌になったり食事を食べなくなったりというような曖昧な変化しか現われないことも少なくないので、見極めには注意が必要です。
上の項目で説明したように肺炎は細菌によって引き起こされる感染症ですが、アルコールをたくさん飲む習慣や喫煙の習慣があると肺炎にかかる確率は高くなります。
また、入院していたり養護老人ホームなどで過ごしている高齢者は肺炎の原因となる病原菌と接触する機会が多くなるため、肺炎に感染するリスクも高くなります。さらに、入院中の高齢者の場合はすでに健康上の問題を抱えていることが多いので、肺炎の症状が深刻化しやすい状態です。
肺炎の症状があると思われる場合は、症状が悪化する前にできるだけ早く病院を受診してください。
肺炎かどうかは複数の検査によって診断されます。また、原因となっている病原微生物が何であるかを特定するために痰や尿の検査を行うこともあります。
以下に、肺炎の診断時に行われる検査方法をいくつかご紹介します。
医師が聴診器で肺の音を聞きます。
呼吸するときにパチパチ、ブクブク、ゴロゴロといった音(肺雑音)が聞こえないかどうか、呼吸音が弱くなっていないかを診ます。
胸部X線は肺炎を診断するのに適した検査ですが、どの病原体が肺炎の原因になっているのか、また、初期の肺炎や骨に隠れた陰影などは検出できないこともあります。
胸部X線では検出が難しいわずかな肺炎像を検出できます。また、そのほかに肺膿瘍や胸水、気胸など他の肺疾患も検出することができます。
体内の炎症の程度を調べるために行います。
喀痰の中にどんな微生物がいるかどうか調べる検査です。喀痰検査は原因微生物を特定して適切な抗菌薬を処方するためにも大変重要で、同時に結核菌など肺炎に似た症状が出る疾患の有無を調べることもできます。
患者が入院していて、抗生物質の治療がうまくいかない場合や他の病気が考えられるような場合に行われることがあります。麻酔をした上で内視鏡を口から空気の通り道に沿って検査位置まで到達させていきます。
肺炎は死亡率が低いとは言えない病気ですが、普段から下記の2つのポイントに気をつけることで予防することができます。
適度の運動、たとえば、20分~1時間程度のウォーキングをすると、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)などの免疫細胞が活性化されて免疫力が高まることがわかっています。ただし、激しすぎる運動は免疫力を低下させてしまうので無理はしないようにしましょう。
また、腸内環境を整えることも大切です。免疫細胞の60%~70%は腸内にあるので、腸内環境を整えること免疫力の向上につながります。免疫活性を高める食品として知られる、ビタミンCを多く含む果物や野菜のほか、キノコ類、ヨーグルトなどを食事に取り入れて腸内の環境を改善しましょう。
免疫力を高めると同時に細菌やウイルスの侵入を防ぐことも重要です。
この項目では細菌やウイルスを防ぐための具体的な方法を紹介します。
外出時、特に風邪やインフルエンザの流行時にはマスクを着用しましょう。鼻の上からあごまでを覆う、隙間のないマスクがおすすめです。
外出から帰宅したときや食事の前やトイレの後などには必ず手を洗う習慣をつけましょう。
肺炎の予防には石鹸で洗った後にアルコール消毒薬で消毒をするとさらに効果的です。
帰宅時だけでなく食事のあとや歯磨き時にも、うがいをして喉の雑菌などを排除しましょう。
歯磨きやマウスウォッシュで口の中をいつも清潔に保ちましょう。とくに高齢者は、睡眠中の咳などで唾液を飲みこむとき、細菌が入りやすいので、就寝前の口腔ケアはしっかりと。
喫煙は喉の炎症を引き起こしやすくして線毛による排出機能を鈍らせるため、細菌やウイルスが侵入しやすくなります。特に一度禁煙した人が、再度タバコを吸うと急性の肺炎を起こしやすいと言われているので注意しましょう。
肺炎の症状が重いときは複数の検査が必要になる場合も多いため、面倒に感じてしまうかもしれませんが、症状が肺炎によるものなのかそうでないのか、どのタイプの肺炎なのかを明確にすることが早期回復につながります。
肺炎と疑わしい症状が見られる場合は、早めに主治医に相談するようにしましょう。特に子供の肺炎は注意が必要なので、肺炎が疑われる場合は必ず病院を受診してください。