食中毒の検査と治療 ― 病院に行くべきなのはどんなとき?

2017/7/21 記事改定日: 2018/5/18
記事改定回数:1回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

食中毒は、約250種の異なる細菌、ウイルス、寄生虫が原因になって発症します。下痢や嘔吐、腹痛だけでなく、言語障害や呼吸困難などの症状も引き起こすこともある怖い病気です。では、実際に食中毒になった際には、どのような診断や検査がなされるのでしょうか?

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食中毒の検査と診断 ― 病院へ行くべきタイミングとは?

食中毒の主な症状は、胃痙攣、嘔吐、下痢などです。身近な症状なので、しばらく寝ていれば治ると放置しがちですが、受診のタイミングが遅れると重症化して回復が遅れてしまう可能性があります。

食中毒の症状は、原因となる食べ物を食べた後、数時間から数日続きます。もし、数日過ぎても症状が改善しないときは、食中毒が原因の症状ではなく他の病気が隠れている可能性があります。すぐに病院で検査しましょう。
また、発熱、血便、脱水などの症状が同時に見られる場合や、1日に10回以上嘔吐や下痢がある場合は、必ず医師に相談するようにしてください。

診断方法

大半のケースでは症状のみで食中毒を診断しますが、症状が重症化・複雑化していると医師に判断された場合は、より詳しい検査が必要になります。

食中毒では、どんな検査が行われるの?

食中毒の主な検査は以下のとおりです。

便培養

汚染された食べ物を食べた可能性があり、症状が重く、診断が不確かであると医師が判断した場合や、発熱や胃の激しい痛みなどの症状がある場合に行なわれることがあります。
また、症状が長く続いている場合もこの検査を行なうことがあります。

便のサンプルを検査して、原因がウイルスによるものか、細菌によるものか、寄生虫によるものかを特定します。細菌が原因の場合は、細菌の種類を特定することで、効果のある抗生物質を絞り込むことができます。ただし、検査結果が戻ってくるまでに数日かかることがあります。

血液検査

血液に感染が広がった疑いがあるときは、血液検査を行う場合があります。血液検査では、細菌のリステリア・モノサイトゲネスおよびA型肝炎ウイルスを検出することができるほか、炎症と脱水の徴候を見つけて、症状の重さを明らかにする検査方法もあります。

また、便培養検査や血液検査では、ボツリヌス中毒などの毒素がないかどうかを調べることも可能です。

画像検査

MRIやCTスキャンなどの画像検査は、食中毒ではあまり使用されません。しかし、他の病気が原因で症状が起こっている可能性を排除するために使われることがあります。

トキソプラズマ症検査

免疫系に障害がある人や妊娠中の人など、トキソプラズマ症が重症化・深刻化する可能性がある人に対しては、この検査が行われる場合があります。

食中毒の治療 ― 病院ではどうやって治すの?

食中毒は原因がウイルスか細菌化によって治療法は大きく異なります。

ウイルス性の場合には、その原因ウイルスに対する抗ウイルス薬が存在しないことがほとんどであり、病原菌自体を排除する治療はできません。このため、下痢や嘔吐による脱水症に対する補液療法や、炎症した胃や腸の粘膜を保護する薬、解熱剤などを使用して症状が治まるのを待つことになります。

一方、細菌性の場合には、原因菌に対する抗生物質が使用され、細菌を死滅させる治療も行われます。ただし、腸管出血性大腸菌などのように体内で毒素を排出するタイプの細菌は、抗生物質を服用することで体内での毒素排出を急激に増加させる危険もあるため、投与は慎重に行われます。また、ウイルス性と同様に脱水症の予防などの治療が同時に行われます。

このように、食中毒の治療の基本は、脱水症に注意しながら、症状が治まるのを待つことです。下痢止めや吐き気止めは、病原体の体外への排出を遅らせ、治るのに時間を要することにつながりますので、自己判断で市販薬を服用するのはやめましょう。

おわりに:下痢や嘔吐だけでない場合は病院での検査が必要!

食中毒の症状は非常にわかりやすいので、自分で「食中毒」と気づくことも多いでしょう。しかし、吐き気や下痢、嘔吐、胃痙攣といった症状だけでなく、脱水症状や目まい、視界が二重になるなども現れてきた場合は、病院で検査・治療が必要になります。長引く下痢や嘔吐がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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