記事監修医師
前田 裕斗 先生
2025/7/9
記事監修医師
前田 裕斗 先生
熱中症が重症化すると命に関わることもあります。重症化を防ぐには、初期の段階で応急処置を行うことが大切であり、見逃してはいけない症状・サインがあります。この記事では、熱中症の症状と重症度について、それぞれに適した応急処置の方法もあわせて解説していきます。
熱中症は医学的緊急事態であり、高温に長い時間さらされ体温制御システムが働かなくなり、脱水症状が重なることで起こります。小さな子どもや高齢者に起こりやすく、炎天下・酷暑・高温多湿など、一定の環境がそろえば、健康で若い人にもリスクがあります。熱中症では、高熱が出る・卒倒するなどのわかりやすい症状以外にも、以下のような症状が現れる場合があります。
熱中症の重症度はⅠ~Ⅲ度までに分類されていて、それぞれ現れる症状と応急処置の方法が変わってきます。
Ⅰ度は、熱中症の初期段階です。多量の発汗で脱水状態になり水分や電解質が失われることで、めまいや立ちくらみ、動悸、足がつる・筋肉痛などの症状が現れるようになります。強い喉の乾きを訴えることが多くなりますが、意識や行動に変化は見られません。この段階では、以下の対処を行うことが推奨されており、可能であれば、わきの下やふとももの付け根を冷やしてください。
Ⅰ度のうちに上記の対処ができれば、状態が回復しやすいといわれています。状態が良くならない場合や悪化している場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
Ⅰ度の段階で適切な対処ができなかった場合には、Ⅱ度の段階まで状態が悪化する可能性があり、高齢者や小児では急激にⅡ度にまで悪化する可能性があるため注意が必要です。
この段階になると、頭痛・吐き気・おう吐・下痢などの症状が現れ、注意力・集中力の欠落などの軽い精神症状が見られることも多く、強い倦怠感を感じたり、ぐったりして力が入らなって座り込んだり、倒れこんだりすることもあります。すぐに以下の応急処置を行いましょう。
Ⅱ度まで進んだ場合は、症状が落ち着いた場合でも必ず医療機関を受診するようにしてください。判断が難しい場合は、先に救急車を呼んでもかまいません。自分で水分が摂れない場合や嘔吐している場合にはすぐに救急車を呼び、応急処置を始めましょう。倒れてしまった、意識がはっきりしない、呼びかけにこたえない、言動がおかしいというときも、救急車を呼ぶことを優先し、救急車が来るまで上記の応急処置を続けましょう。
Ⅲ度は、非常に重症で危険な状態です。対処が遅れると後遺症が残ったり、命に危険が及んだりすることもあります。この段階まで進むと、Ⅱ度の症状に加えて、以下の症状が現れるようになります。
すぐに救急車を呼び、救急車が来るまでわきの下やふとももの付け根などを冷やし、体温を下げる応急処置をしましょう。
熱中症は誰にでも起こる可能性がある緊急状態です。炎天下・酷暑・高温多湿の環境であれば、室内でも起こる可能性があります。小さな子どもやお年寄りの体の変化にはとくに気をつけるようにして、気になるサインを見つけたときは、すぐに応急処置を行いましょう。また、これは自分自身にも当てはまることです。気になる症状・サインを自覚したときは、すぐに対処し、予防のため水分・電解質をこまめに補給することを心がけてください。