熱中症で救急車が来るまでにできる対策とは?

2017/7/20 記事改定日: 2019/5/9
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

熱中症は最悪の場合命に危険が及ぶため、早急に対処する必要があります。この記事では、重度と軽度の2つのケースに応じた正しい熱中症の対処法をご紹介します。
熱中症は一年中起こる可能性があります。今一度確認しておきましょう。

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熱中症で起こる体の変化

熱中症の症状は体温の上昇から意識の喪失まで多岐に渡ります。熱中症は最悪の場合は回復不能の障害や死という結果を招くこともある侮れない病気なのです。見られる症状は以下の通りです。

  • 体温が異常に高くなる
  • 皮膚が紅潮し、熱く、乾く(発汗はなし)
  • 脈が速くなる(頻脈)
  • ズキズキするような頭痛
  • 目眩
  • 吐き気
  • 錯乱
  • 意識消失

熱中症で救急車を呼んだほうがいいのはどんなとき?

熱中症は重症化すると脳にダメージを与え、高次脳機能障害などの重篤な後遺症をのこすこともあり、場合によっては死に至ることもある病気です。
このため、熱中症を発症した場合はなるべく早くその兆候に気づき、適切な対処を行う必要があります。

多くは涼しい場所に移動する、水分を摂る、身体を冷やす、などの対処で症状も改善していきますが、以下のような状態の場合は一刻も早く病院での治療が必要となりますので救急車を要請するようにしましょう。

  • 呼びかけに反応せず、意識がない
  • 痙攣が見られる
  • 言動がおかしく、錯乱状態となっている
  • 身体を触ると非常に熱い
  • まっすぐ歩けなくなる
  • 頻回な嘔吐や下痢が見られる

救急車が来るまでの応急処置

とにかく体温を下げる

まずは患者を直射日光に当たらない涼しい場所に移動させましょう。
余計な衣服は脱がせ、横向きに寝かせます。肌が空気に触れるよう、可能であれば上着のボタンやチャックは開けると尚良いです。

次に、冷たい水で身体を拭くかスプレーなどで水をふきつけ、扇ぐことで全身の温度を下げます。このときに熱中症の症状が悪化して、発作、数秒間以上にわたる意識消失、中程度から重度の呼吸困難などがないかどうかに注意してください。

氷嚢(ひょうのう)を当てられる部位全てに当て、できるかぎり早く39度以下まで下げるようにしてください。体温が高い状態が長く続くほど病状は深刻になり合併症が発症する可能性が高くなるためです。
尚、重度の熱中症のような状況では口や耳で測る体温は正確ではないため直腸で体温を測ってください。

処置のときの注意点

呼吸が停止した場合は、すぐにCPR(心肺蘇生術)を始めてください。薬の服用によって問題を引き起こす可能性があるため、熱中症によって高熱が出ていても熱を下げるための薬は与えないようにしましょう。

また、嚥下が可能な程度に意識がある場合は、水分(1・2時間で1リットル~2リットル)を補給させてください。多くの熱中症患者の意識レベルは変化するため、安全に水分を摂取することは難しくなります。むせない程度に起き上がれるよう体の補助をすることも必要になるかもしれません。

軽度の熱中症は家庭で対処できる

多くの熱中症は早い段階で発見された場合は家庭で対処することができます。ここでは自宅でできる対処法を見ていきましょう。

水分・塩分を補給する

経口補水液やジュース、水を飲むことで水分を補給してください。2~4時間かけて2リットルほどの冷たい飲み物を摂取しましょう。患者の尿の色が正常で2~4時間に一度排尿していれば水分を充分に摂取できています。

また、熱けいれんと呼ばれる体の震えは涼しい場所で横になり、水分と塩分を補うことで治すことが可能です。食べ物を受け付けるようであればナッツやプレッツェルなどを食べて少し多めに塩を摂取しましょう。ただし、塩の錠剤は吸収が遅く、胃への刺激にもなりうるため服用は控えてください。

完全に回復するにはおよそ36時間かかりますが、多くの人は水分補給後数時間で気分が良くなるとされています。気分が回復しても24時間は休み、水分補給を続けるようにしましょう。また、回復後1~3日間は激しい身体活動は控えてください。

脚の筋肉を動かす

熱中症によって起こる浮腫(むくみ)は休息を取ることと脚を頭の位置より高くすることで対処が可能です。暑い環境で長時間立った状態になるような場合は、脚の筋肉を頻繁に動かして下腿に血が貯留しないようにすると浮腫や失神を予防できます。

おわりに:熱中症はできるだけ早くに対処することが重要

熱中症から回復するためには、程度を問わず早急な処置が大切です。特に重度の熱中症の場合は救急医療機関での治療が必要なこともあります。もしもあなたの近くに熱中症になった人がいた場合、まずは涼しい場所に移動して、冷やす・扇ぐなどして体温を下げるようにしてください。

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