記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
食中毒は、気温が高い日はもちろん、1年を通して注意が必要です。この記事では、食中毒防止のための食事面の注意点と食中毒になってしまったときの対処法について紹介しています。自分や家族を守るための参考にしてください。
生卵、低温殺菌されていない牛乳やジュース、チーズ、生や生焼けの肉や魚介類などは、正しく処理・調理しないと食中毒になる可能性があります。
そして、気温が30度を超えると、食べ物は1時間ほどで腐敗が進むとされているので、夏場のピクニックやキャンプで食事をする際は、肉や魚は中までしっかり火を通し、生肉を触った手や使ったまな板は後は流水と石鹸・洗剤で洗うようにしましょう。また、暑い日は、必ずクーラーボックスなどで食材を保存することも大切です。
食中毒は、細菌やウイルス、寄生虫を含んだ食べ物を食べることで、下痢や嘔吐などの症状を引き起こすことです。ほとんどの食中毒は医学的な治療なしでも自然に回復しますが、免疫系が弱い赤ちゃんや子供、妊婦、高齢者は特に注意が必要です。
以下で食中毒の原因となる代表的な細菌やウイルスと注意点を紹介していきます。
ノロウイルスは汚染された食べ物を食べることによってだけではなく、感染した人と接触したり、その人が触ったドアノブなどの表面を触ることによっても感染します。一緒に住んでいる人の中にノロウイルスに感染している人がいる場合には、キッチンを拭いて除菌する必要があるでしょう。薬局で専門的な除菌用具を購入しましょう。
サルモネラは細菌の一種ですが、生焼けの卵や肉の中、低温殺菌されていない牛乳やチーズなどから感染する可能性があります。また、メロンや芽キャベツなどの果物や野菜からもサルモネラが発生することがあります。症状は感染から1~3日以内に現れ、最長で1週間ほど続く場合もあります。
ウェルシュ菌は牛肉、鶏肉、肉汁に潜んでいます。食堂や老人ホームなどで食べ物が大量に生産されるときに現れる可能性の高い細菌です。加熱調理によって細菌を殺すことはできますが、胞子は殺すことができません。そのため、温かいままの食べ物の中で新たな細菌が成長する可能性があります。
けいれんや下痢が起こることもありますが、ほとんどの場合は他の症状は現れないといわれています。感染から約6~24時間以内の間に体調が悪くなり、数日で回復することが多いです。
生焼けの肉や低温殺菌されていない牛乳、水の中に発生します。症状がはっきりと出るまでには、2~5日かかることが多く、その後2~10日で回復します。症状が感染する心配はありませんが、重度の場合は血性下痢になる可能性があります。
食中毒を起こしているときは、ウイルスや細菌などによって消化管の粘膜が炎症を起こして傷ついている状態です。このため、食中毒になったときは、胃腸に負担をかけない消化のよい食事を摂るようにしましょう。また、塩分や香辛料は粘膜を刺激するので、症状があるうちはできるかぎり控えた方が無難です。
おすすめの食材としては、お粥やそうめんなど柔らかく消化の良い炭水化物や、ヨーグルトなどの乳製品、ニンジンやジャガイモ、りんごなどの食物繊維が少ない野菜や果物などです。
これらの食材は熱すぎたり、冷たすぎると胃腸を刺激する原因となりますので人肌や常温に戻して食べるのがおすすめです。また、食材はなるべく小さめにカットしたり、柔らかく煮ると食べやすく、消化も良くなります。
食中毒では、症状が治まっても数週間は便と共に病原体が体外へと排出されます。その後症状が治まるとともに、消化管の炎症やダメージも改善し、いつもと同じ食事に戻すことができるようになります。
通常の食事に戻す目安としては、下痢や嘔吐が治まった頃であり、一般的には一週間ほどの期間が必要といわれています。ただし、通常の食事に戻して吐き気や腹痛、下痢などの症状が現れた場合には、再度食中毒によいとされる食事に戻し、少しずつ食材を硬めにするなどの対策を取って元の食事に戻していきましょう。
下痢や嘔吐による脱水症状は、食中毒の中で最もよく見られる合併症です。特に高齢者や子供は脱水症状になりやすいので注意が必要です。ここでは自宅でできる対処法をご紹介します。
経口補水液を少しずつこまめに飲むようにしてください。排泄をする度に水や経口補水液をコップ1杯飲みましょう。尚、スポーツドリンクや炭酸飲料、フルーツジュースは砂糖が多く含まれており、下痢によって失われる重要な電解液が十分に含まれていないので、脱水症状の場合の水分補給にはおすすめできません。
失った栄養を摂るためにもできる限り通常の食事をするようにしましょう。ただし、胃腸に負担がかかるような、脂肪分と糖分が多く含まれるメニューは避けてください。
食中毒の原因となる細菌は、パッケージ、出荷、貯蔵、調理など・・・どの段階でも食べ物の中で発生・繁殖する可能性があります。特に気温や湿度が高い夏は食中毒が起きやすいので、食品の管理や調理法にも注意してください。