記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/2/21
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
子どもの肥満を防ぐには、生活習慣の改善が重要です。朝食をとらない、夕食時間が遅い、睡眠時間が短いことが、子どもの肥満を促進させる要因であることがわかっています。また近年では、脂肪や塩分の多いスナック菓子などが出回り、気軽に手に入る環境にあります。さらに、部屋にこもってゲームなどをする生活をする子どもは外に出てからだを使った運動をしている子どもにくらべて肥満になりやすいという調査結果も出ています。
適正体重の子どもは、より健康的で、よく学び、より自分に自信をもてる傾向があり、卑屈になったり、いじめを受ける可能性も低いとされ、大人になって生活習慣病にかかるリスクがずっと少なくなります。子どもをより健やかに成長させるために、親としてできることは何なのでしょうか?
太りすぎだからといって、スリムな子どもよりもたくさん運動しなければならないというわけではありません。余分な体重の分だけカロリーを燃やせばいいのです。子どもは、健康のために1日約1時間の身体活動が必要ですが、一度に行う必要はありません。5~10分の運動を何度か繰り返すことで、1時間のストレッチと同じ効果があります。
低年齢なら、ボール遊びや追いかけっこ、キックボードに乗ったり、ブランコ、ジャングルジムやシーソーなど、積極的に遊ぶことが身体活動となります。年長児であれば、徒歩通学をはじめ、自転車、スケートボード、水泳、ダンス、格闘技などが身体活動になってきます。
家族で車やバスの代わりに歩いたり、自転車に乗ることは、素晴らしい身体活動の方法で、またお金も節約できます。
果物・野菜は、食物繊維、ビタミン、ミネラルの宝庫です。大人と同じく、子どもも毎日5種類以上の果物・野菜を食べるのが理想的です。毎日5種類の摂取は、そんなに困難なことではありません。生、缶詰、冷凍、乾燥、どれでもOKです。ジュース類は、糖が放出することで虫歯のリスクを高めるため、食事のときにいっしょに飲ませるのがお勧めです。
高カロリーで栄養が少ないので、ケーキやお菓子、スナックや炭酸飲料は極力遠ざけましょう。カロリーの大半を、果物・野菜、炭水化物(ご飯、パン、パスタ、ジャガイモなど)からとるようにし、ソフトドリンクよりできるだけ水を飲ませましょう。
子どもに過剰に食べさせるのは避けてください。食べ物に関していえば、子どもが必要とする量は、どうしても自分自身で判断する必要があります。だいたいの目安として、まず少ない量を食べさせ、それで足りない場合にもっと食べさせるようにするといいでしょう。また、どれくらい食べられるかを子どもに聞いてもいいでしょう。
子どもを活動的にするには、座ったり、寝転がって過ごす時間を減らす必要があります。じっと座っていたり、むやみに横になっているのは体重を増やし、肥満につながります。テレビを見たり、ゲームをしたり、パソコンで遊ぶのに費やす時間は、制限してください。
どのくらいの時間が適度なのか確固たる数字はありませんが、1日2時間以上テレビを視聴しないようにしましょう。また夜は、携帯電話を含め、テレビ、PCを遠ざけましょう。
よく眠れば眠っただけ、子どもはしっかりと育ちます。睡眠が足りないない子どもは、太りすぎの可能性が高くなることが研究で示されています。睡眠時間が少なければ少ないほど、子どもは肥満になります。それだけでなく、睡眠不足は気分や行動にも影響を及ぼします。夜は、子どもをしっかり眠らせましょう。
夜と日中の活動にメリハリをつけることが、よい睡眠につながります。日中は交感神経を活発にして活動的に、夜は副交感神経が優位になるように静かに過ごすことを心がけましょう。
いちばん重要なのは、子どもにさせるのではなく、親がお手本になることです。親に好き嫌いが多くては、子どもに「好き嫌いなく食べなさい」とはいえませんよね。一緒になって遊べば子どもはからだを動かして遊ぶことが好きになります。小さい子どもはひとりで寝るのは難しいでしょう。一緒に布団に入って絵本を読み聞かせてみてください。きっとぐっすり寝てくれるはずです。子どもの肥満を解消するいちばんの薬は、親の愛情かもしれませんね。