1型糖尿病と付き合っていくための日常生活のポイントとは?

2017/7/25 記事改定日: 2019/7/2
記事改定回数:2回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

1型糖尿病は何らかの原因で膵臓にあるインスリンを出す細胞(β細胞)が壊されてしまう病気です。
1型糖尿病と付き合っていくためには生活の中で気をつけるべきポイントがいくつかあるので、この記事でその方法をお伝えしていきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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1型糖尿病とは、どんな糖尿病?

糖尿病は血糖(グルコース)レベルが正常値よりも高くなってしまう病気であり、一度なってしまうと生涯にわたり付き合い続ける必要があります。

膵臓で産生される「インスリン」というホルモンは、血液中のグルコース量を制御する役割を担っていますが、1型糖尿病に罹ると膵臓がインスリンを産生しなくなるために高血糖状態が続いてしまうのです。

全世界の糖尿病患者全体の約5%が1型糖尿病と言われ、若い方を中心に幅広い年齢で発症する傾向があります。生活習慣が原因となる2型糖尿病とは原因と治療が大きく異なります。

1型糖尿病が進んでいくと自力でインスリンがほとんど出せない状態となります。インスリンの働きが悪くなると血糖値が上昇してしまうため、1型糖尿病と診断された場合には注射などを利用した体外からのインスリン補給を行う必要があります。

また、1型糖尿病はその進行のスピードによって、「劇症」「急性発症」「緩徐進行」に分類されます。

1型糖尿病と付き合っていくための食事の注意点とは?

健康的でバランスの取れた食事をとることは、糖尿病を改善するうえで非常に重要です。

ただ、調理するときには脂肪や油の量を減らしたり、食塩や砂糖を減らしたり、食物繊維の量を増やすなどの工夫は必要ですが、特定の食品群を完全に避ける必要はありません。(※砂糖や高脂肪食も食事から完全に排除する必要はありませんが、適量まで制限するようにましょう)

糖尿病を管理するうえで重要なことは、規則正しくバランスの良い食事を心がけることです、お米や麺類、パンなど炭水化物だけでなく、魚や豆類、野菜などを増やしてタンパク質や食物繊維、ビタミン類をとるように心がけましょう。
このような食生活の改善は、健康な体重維持にもつながります。

1型糖尿病の人のメニュー作りのポイント

1型糖尿病の人は、血糖値の乱高下を避け、インスリン注射によって極端な低血糖が引き起こされないような食事を心がける必要があります。

血糖値の上昇には炭水化物が大きく関与しており、極端に炭水化物を多く摂ると血糖値が急激に上昇し、極端に摂取量が少ないとインスリン注射が効きすぎて低血糖を引き起こすことがあります。
このため、1型糖尿病の人は、インスリン量に合わせて摂取する炭水化物量を調整する「カーボカウント」と呼ばれる食事療法が勧められています。

どのような食事を摂るべきかについては、治療法や病状などによってそれぞれ異なりますので、医師や栄養士の指導に従って食事に注意するようにしましょう。

また、1型糖尿病の人は血糖値が変動しやすいため、食間におやつなどの補食が必要になることもあります。学校や職場などには事前に理解を求めておくことが望ましいでしょう。そして万が一低血糖が生じたときのために飴やジュースなど手軽に糖分を補給できるものを常に持ち歩くことも大切です。

食事以外では日常生活のどんなことに注意すればいい?

食事内容の見直しの他にも、1型糖尿病をコントロールするためには生活習慣の改善が必要です。以下にどのように改善すればよいのかをご紹介します。

定期的な運動

体を動かすことはインスリンの働きを高めて血糖値を低下させる効果があります。定期的に運動する習慣をつけましょう。
週に1度は、サイクリングや速足で歩くなどの中強度の有酸素運動を少なくとも150分ほど継続して行うことを目標にしましょう。

ただし、運動によって低血糖や高血糖を引き起こす可能性があるため、運動に取り組む前に自分が行って良い運動とそれに関する注意点を必ず医師に確認してください。
また、血糖値を安定させるためにインスリン治療または食事療法を調整をする必要が出てくる可能性もあります。

禁煙

糖尿病の方は心臓発作や脳卒中などの心臓血管疾患を発症するリスクが高いので、喫煙をするとそれらの発症リスクがさらに高まってしまいます。また、喫煙は肺がんなどの他の重大な病気を招く可能性もあります。
喫煙習慣のある方は禁煙に取り組みましょう。

飲酒量の制限

お酒(アルコール飲料)を飲むことはインスリン治療や血糖管理の能力に影響し、飲酒量によっては高血糖または低血糖を引き起こす可能性があります。
1型糖尿病の人は、基本的にはお酒を飲まないことをおすすめします。お酒と飲む場合は、1日に推奨されている量(※)を超えないように注意し、空腹時の飲酒は絶対に避けましょう。

※厚生労働省の示す指標では「節度ある適度な飲酒は1日平均純アルコールで20g程度」とされています。20gとはおよそ〈ビール中ビン1本、日本酒1合、チュウハイ(7%)350mL缶1本、ウィスキーダブル1杯〉などに相当します。

インフルエンザの予防接種

糖尿病になると免疫力が低下する傾向があるので、感染症が悪化する可能性が早くなります。
インフルエンザの予防接種や肺炎球菌性肺炎と呼ばれる重篤な胸部感染症を予防する肺炎球菌ワクチン接種などを受けるようにしましょう。

足と目の健康チェック

糖尿病の人は足に問題が起こるリスクが高いです。
これは、糖尿病の人は足の血液循環が悪くなりやすく、血糖が神経損傷して足の感覚を鈍くするためです。足に水疱や傷ができても目で見るまで気づかないような場合は、足の病変が進んでいる可能性があります。毎日足の状態をチェックし、傷や皮膚の異常があるのに、痛みなどの違和感がない場合はすぐに病院に相談しましょう。

また、糖尿病の人は「糖尿病性網膜症」という目の病気を発症する危険性も高くなります。
糖尿病性網膜症は治療せずに放置すると、最終的には失明につながる可能性があります。
糖尿病性網膜症の有無を確認するためにも、最低でも年1回は目の検査をしましょう。
をしましょう。

1型糖尿病でも妊娠、出産はできるの?

糖尿病を抱えていても妊娠・出産は可能です。
ただし、先天性欠損症のリスクを減らすために妊娠前と妊娠8週目までの血糖値を厳密に管理する必要があるので、医師に相談しながら妊娠・出産の計画を進めていくようにしましょう。
また、妊娠前・妊娠中に以下の点に気をつける必要があります。

葉酸錠剤の服用

葉酸はお腹の赤ちゃんの脊椎の疾患の予防に必要な栄養素です。
糖尿病の女性は毎日5mgを服用するようにすすめられています(※これは処方箋でのみ入手可能です)。

目の検査

妊娠している・していないに関わらず糖尿病の方は目の検査を受ける必要がありますが、妊娠は目の小さな血管に通常よりも圧力がかかる可能性があるので、目の状態を頻繁に確認するようにしましょう。

おわりに:1型糖尿病と付き合っていくために、きちんと生活習慣を管理しよう

1型糖尿病と付き合っていくためには食事の見直しや生活習慣の改善が大切になります。
生活習慣の改善に取り組もうとしている方は、今回紹介したポイントを参考にしてみてください(※人によっては今回ご紹介した方法が適さないこともあるので、取り組む場合は必ず事前に医師の許可を得てください)。

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