記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/20 記事改定日: 2019/5/23
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
禁煙って難しいですよね。きっとあなたも、世の中に出回っている禁煙方法のうちのいくつかを試したことがあるのでは? 実は私、medicommi編集部・前田(33歳・男)も2度、禁煙に失敗しています。でも、いまはまったく吸っていません。成功させたんです! 3度目にして。
ここでは、私が禁煙に成功した方法と、その一部始終を詳しくお伝えしようと思います。なにかの参考になればうれしいです。
喫煙歴13年、この間に社会の禁煙・嫌煙熱はどんどん高まり続け、私もそのプレッシャーに圧されるように、2度ほど禁煙したことがありました。結果は惨敗。
もちろん、健康のために、というのもありましたが、やはりそのモチベーションが“流行に乗ってなんとなく”では、失敗するのがオチだったんです。
そして、「禁煙って、どうすれば成功するのかな」と考えていたときに襲ってきたのが、父親の病気というシチュエーション。がんでした。長男ということもあり、自分の健康について初めて真剣に考えざるを得ない状況になったんです。そして、やっと「そうだ、禁煙しよう。本気で」という決意をしたのです。
そこからしばらくは、有効と思われるいろいろな禁煙方法を探しました。ニコチンパッチ、ニコチンガム、禁煙外来、どれも一長一短あると同時に、継続する場合の予算や「めんどくさそう」という考えが浮かんでしまい、NGに。
もちろん、「絶対、今回の禁煙は成功させる!」と思ってはいましたが、だからこそ「ラクでなくてもいいけど、自然なペースで」やめられる方法がいいということで、さらにネットを探ってみたんです。
ある時、ネットで見つけたのが「iQOS(アイコス)」でした。いま大変、人気の商品だそうですが、これはそもそも禁煙サポート用品ではありません。加熱式タバコなのですが、ニコチンは少なめ、タールはほとんどカット、副流煙による他人への迷惑も最小限になるとのこと。
私が考えたのは、アイコスでまずスタートし、タバコを吸っている気分は残しつつ、少しずつ体内の、そして新たに摂取するニコチンを減らしていく。そして、もう大丈夫というタイミングを自分で判断し、アイコスもストップして完全禁煙に突入するという作戦でした。
約1カ月間、アイコスのみの期間を設けました。しかし、摂取量が減ったとはいえ、引き続きニコチン自体は摂っているうえ、“摂取方法(=タバコを吸う)も同じ”。そこからくる安心感からか、比較的、気持ち的にも身体的にも、大きな変化を感じることなくアイコス期間は終了。「このまま禁煙に突入して大丈夫か?」と思ったり、「いや、ニコチン依存度は減ってるはず」と思ったり…。
ただ、(メーカーさん曰く)アイコスは副流煙にほぼ害がないということで、周囲の人たちには喜ばれていたようです。
ここがやはり一番、きつかった! 正直、目を血走らせながら我慢しました! いや、ほんとにキツかった。タバコなんてすぐやめれると思っていましたし、実際、次の1本までの間をあけるのはけっこう平気だったはず…。
とにかく、タバコのことを忘れようとするのですが、忘れようとすればするほど頭に浮かびます。まだ喫煙していた頃、長時間吸わないのは大丈夫なのに、自宅でタバコをきらしている(いま1本も持っていない)ことがわかったとたん、無性に吸いたくなったものですが、その感覚に近い気がしました。
ストレスが原因と言われる、睡眠中のジャーキングが頻繁に起こったり、離脱症状のひとつらしい“眠気”がやたらと襲ってきて、仕事中も大変でした。
また、以前は1日の中で、起床時や出勤前、入浴の後など、“いつも吸う同じタイミング”があったのですが、そのタイミングがきて吸えないと無性にイラッとするんですよね。それがストレスとなって寝不足となり、また昼間眠くなるという悪循環。そして、さらにストレスがたまり…。
やはりアイコスは、禁煙サポート用品ではないのだなと。そして、6日目には、これは“とにかく我慢”という方法では無理。何か違う方法を付け足さななければ、と考えるようになりました。
この頃もまだ定期的にタバコが欲しくなる状況は変わりません。お酒の席では特に吸いたくなり、「もういっか、禁煙」という考えが頭に浮かんだりします。覚悟は決まっていたはずなのに。それだけニコチンに依存してしまっていたのでしょうか。
また、この頃、エレベーターで喫煙者が分かるようになっていました。タバコの臭いって意外と漂っているものなのだな、そしてかなりクサイなと、初めて気づきました。
会社では、タバコを吸うために離席することがなくなったため、少し能率はアップした気がします。さらにこの後、禁煙1ヵ月が経つ頃には、仕事中の気分転換のための喫煙は必ずしも必要ないという結論にいたります。ただ、まだこの頃は、吸いたいのを我慢しながらの仕事だったんですけどね…。
1週目途中より、何かエクストラな方法を付け足したいと考えていましたが、2週目の途中でやっとそれを発見しました!週末、一緒にサッカーを楽しんでいる仲間のひとりが教えてくれたストレッチがあるのですが、それを喫煙欲求が起こったときにすかさずやるようにしたのです。ストレッチによって吸いたい気持ちがなくなるというよりは、単なる“気を紛らす”ためのものではあるのですが。
しかし、欲望の抑え方をネットで調べているときに知った、「発生した欲望は、5分しかもたない」という情報と、ストレッチとが結びつきました。この2つを結びつけた自分を褒めてあげたいです。
欲望が起こったら、すかさず何かをする。数分でいいんです。その数分をいままで乗り越えられなかったんです。5分で去ることを知らなかったから。そして、知らなかったからその欲望を意識したままになり、30分も1時間もそこに居座らせていたんだと思います。
私が教わったのは、「肩甲骨はがし」という名前です。まずはコブシを真上に突き上げ、そのまま真横に、肘が直角程度になるところまで下ろしてくる。しばらくそのままにします。それを何セットか繰り返します。もうひとつは、腰に手をあて、そのまま肩を上下に動かします。肩甲骨を動かしているイメージがよいと思います。2つとも、ゆっくりと呼吸しながら行ないます。
この頃には、吸いたくなると、すかさずストレッチをするため体が動きます。自宅にいても会社にいても、即ストレッチ。ただ、吸いたい気持ちがなくなったわけではなく、たとえば悲しいときや落ち込んだときに吸いたくなったりしました。そのタイミングで吸えないのは辛かった。タバコが問題を解決してくれるわけではないですが、一瞬の逃避になるんだと思います。
16日目あたりには、何でこんなに我慢しているんだろう、とふと思ったりもしました。私の場合、たとえば味覚が変わるなど、顕著な変化がこの頃まだ現れていなかったこともあり、油断すると吸いたくなっていました。
17日目、ラーメンを食べた時に吸いたくなりましたが、だんだん欲求が薄まってきていることに気づきました。
18日目、タバコを吸う仲間と、半日一緒にいました。吸っていたころは一緒に喫煙をしていましたがもうそういうわけにいかず、タバコミュニケーションがなくなったことを少し寂しく感じます。
どんどん吸いたいと思う瞬間が、減ってきたと気づいたのがこの頃です。“我慢している”という感覚がなくなってきました。欲求は生まれるのですが、ストレッチをするとすぐ収まります。気を紛らせ、欲求を忘れさせるというより、ほとんど条件反射のようになってきたのがこの頃。
ただ、この4週目には、無性に吸いたくなったことが2回ありました。徹夜仕事の朝帰り、駅からの道、妙に空気が澄んでいるなぁと感じた瞬間と、会社で仕事が立て込んでイライラがピークになった瞬間です。そのときタバコを持っていなくてよかったです。持っていたら問題ですが。
このあたりが、仕事のイライラが増していた時期。こういう時に、必ずタバコを吸いに行っていたことを思い出します。もちろん、今はストレッチで対応します。
そして、この頃、徐々にタバコのない生活が当たり前になってきました。こういうのが非喫煙者の日常なんだろうなと思うと少しうれしい気持ちがわいてきます。
31日目、やっと1カ月! ひとまず1カ月の目標を掲げていたので、大きな達成感がありました。しかも、なんとかこぎつけたという感覚ではなく、欲望をやりすごすことを覚え、気持ち的には余裕を持って1カ月を迎えることができました。おそらく、もうタバコは吸わないと思います。せっかくつくったいまの状態を、もう手放したくありません。
なんの苦労もなくやめられればいいですが、ほとんどの人が吸いたい気持ちとの戦いになるでしょう。周囲に協力してもらうことも大事ですが、結局、欲望に打ち勝たないといけないのはあなたです。
私がやった「欲望の置き換え」も選択肢のひとつだと思います。欲望が起こったときに、やることを決めておきましょう。できれば、その場で自分だけでできることがよいと思います。
ほんの数分でいいんです。少しの間だけやり続けましょう。気持ちを別のものにフォーカスし、体を動かしましょう。では、がんばってください。応援しています。
禁煙を達成した貴重な前田さんのレポートを頂きました。喫煙やお酒など、脳内の報酬系という回路に作用するものを止めるとき、いわゆる禁断症状のような症状が強く出るため苦労します。ご自身なりに様々に工夫を重ねながら禁煙を達成できたのは素晴らしいと思います。なお、医療機関では禁煙をサポートするための禁煙外来を構えているところがあります。禁煙をサポートできるお薬を処方できますので是非ご検討ください。