下痢の原因とは ~ 健康問題と感染症 ~

2017/7/28

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

下痢はゆるい、あるいは水っぽい大便という特徴があります。下痢は感染症など、根本的な健康問題の症状であり、腸の食物からの適切な栄養吸収を阻害します。今回の記事では、下痢の原因について解説します。

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下痢の原因

食中毒、感染症、吸収不良、消化管の炎症性疾患など、下痢には様々な原因があります。下痢はウイルス性胃腸炎や食中毒でもよく起こりますが、ほとんどの場合は自己制限疾患、もしくは数日で治る食中毒によるもので、深刻な結果には至りません。また、糖尿病の人も慢性的な下痢を患うことがあります。以下に下痢の原因について解説します。

感染性下痢

感染性下痢は超小型のウイルス、細菌、寄生虫など、腸内に住み着くものを体内に取り入れることで起こります。こうした微生物の感染経路は、他人の下痢であることがほとんどです。感染症は排泄の後、手を洗わず食事を準備するなど日常的な接触をする感染者から伝染する可能性があります。

ウイルス感染

ウイルス感染は、短期の下痢ではもっとも多い原因といえるでしょう。ウイルス感染症による下痢のほとんどは、自然治癒するといわれています。ロタウイルスやノロウイルスなどのウイルスは腸内に広がる粘膜を損傷し、水分の吸収を邪魔するので水様下痢となります。脱水にならないように特に注意しましょう。ロタウイルスは2歳以下の子供の下痢の原因として多くみられます。ノロウイルスは大人に多く見られ、汚れた水や食べ物の摂取でよく起こります。

細菌感染

汚れた食べものや水の中に潜む細菌は腸粘膜を強く障害します。サルモネラ菌とカンピロバクターは細菌性腸炎のもっとも典型的な原因菌です。細菌性腸炎では高熱が出たり、便に血が混じることがよくあります。

旅行者の下痢は主に大腸菌によって引き起こされ、公衆衛生が良くない発展途上国を訪れる人の間で起こりやすいとされています。症状の1つにひどい下痢が挙げられるコレラは、主に汚染された水を飲むことで引き起こされます。

ジアルジア症

ジアルジア症には、幼い子供での感染がよくみられます。これは直接の接触、もしくは手を洗うことなく他の子供のおむつを替える大人たちによって伝染するもので、感染した子供の家族も危険です。ジアルジア症を治療をしないままにしておくと、感染は数ヶ月続き、素早く拡散します。自分では下痢を発症することなく感染症を広める人もいるので、原因を探し全ての接触を確かめることが重要です。

感染性ではない下痢の原因

以下に感染症ではない下痢の原因を解説します。

食品

ある種の食品は、体質によって下痢が起こることもあります。例えば、ラクターゼ不足の人は乳糖を分解できません。ラクターゼは乳糖をグルコースに分解する酵素で、その後は腸管によってすぐ吸収されます。ほんの少しの牛乳や乳製品でも、ラクターゼ欠乏症の人は下痢になる可能性があります。

多量のアルコール、カフェイン、人工甘味料、脂っこかったり香辛料が効いている食べものも下痢を引き起こす原因になります。赤ちゃんの消化器官は多量のミルク、ジュースや果物に耐えることができない場合もあります。ただし、母乳に含まれる抗体のおかげで、母乳で育った赤ちゃんはそれほど下痢にならないといわれています。

人工甘味料

ソルビトールやマンニトールと呼ばれる人工甘味料も、下痢を起こすかもしれません。人工甘味料は砂糖よりカロリーが低く、腸内でゆっくり、不完全に溶けるため、多く摂ると下痢を起こす恐れがあります。人工甘味料は、無糖製品と多くのチューインガムなどに入っています。

薬を服用し始めてから下痢になった場合は、医師に相談しましょう。抗菌薬の場合は、服用してから1ヵ月後でも下痢の症状が表れることがあるので注意してください。また、抗菌薬によって腸内細菌叢に異常をきたし、クロストリジウム・ディフィシル腸炎と呼ばれる腸炎を引き起こす可能性もあります。

様々な消化器疾患

2週間以上続く慢性的下痢は、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、慢性膵炎、大腸癌、そして小腸のある種の腫瘍など、様々な腸の問題によって起こります。

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome: IBS)は下痢の原因として代表的なものといえるでしょう。腸がスムーズにリズミカルに収縮しない時に下痢が起こるとされますが、収縮があまりに強力すぎても下痢を引き起こします。弱すぎる場合は便秘になります。

手術

腹部手術の後に下痢の症状が表れることがあります。これは消化管が治癒すれば回復するものであり、数週間程度しか続かないものがほとんどです。手術の影響で、食べものが消化器官の中を動くスピードが変わってしまうことがあることが、下痢の原因と考えられています。また、胆嚢を除去した後に下痢にケースもあります。

おわりに:下痢の原因を知ろう

ひどい下痢は数日にわたって続き、生活圏のほとんど全員に影響を及ぼします。慢性的な下痢は普通4週間以上続き、これは炎症性腸疾患または胃腸炎といった深刻な状態の印かもしれません。こうした混乱は長期にわたるもので、消化器官の炎症を起こします。下痢には、胃腸感染症、乳糖不耐症、薬物、人工甘味料、手術など多くの潜在的な理由があります。

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