てんかんの原因はストレス?遺伝することもあるって本当?

2017/8/1 記事改定日: 2018/4/4
記事改定回数:1回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

突然の発作で、思わぬ事故を引き起こすこともある「てんかん」ですが、このてんかんを発症する原因とは一体何なのでしょうか?ストレスや遺伝が原因という話もありますが、それは本当でしょうか?

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ストレスが原因でてんかんになる?

てんかんとは、脳の一部の神経細胞が突然異常な電気活動を行うことで、急に意識を失うなどのてんかん発作を繰り返す病気です。

このてんかんが起こる原因は、わかっているものとわかっていないものとがあり、原因不明のてんかんは「特発性てんかん」と呼ばれ、原因がわかっているてんかんは「症候性てんかん」と呼ばれます。「症候性てんかん」は、脳に何らかの障害が起こったり、脳の一部を損傷することで起こるもので、具体的な原因については後述します。

なお、てんかん発作とストレスの関連性についてですが、脳波にてんかん性の波形が出ることが原因で起こるので、ストレスや疲労、睡眠不足などによって脳に疲労が溜まると、てんかん発作が起こりやすくなる可能性はあります。

てんかんの原因は遺伝って本当?

てんかんのほとんどは遺伝しないと考えられていますが、「特発性てんかん」の一部のケースでは、発病に遺伝子が関連していたり、てんかんになりやすい体質が遺伝した可能性が指摘されています。まだ研究段階ではありますが、こうした遺伝タイプのてんかんは多くは良性であり、治療しやすいと言われています。

高齢者のてんかんの原因は?

てんかんの原因の多くは体質によるものであり、3歳以下での発症が圧倒的に多く、ほとんどが高校生になる前に発症しますが、高齢者がてんかんを発症することもあります。高齢者のてんかんは原因が明らかなものが多く、中でもよくみられるのが、脳卒中の後遺症や脳腫瘍、加齢による脳の異常、認知症、頭部外傷によるものです。

症候性てんかんの原因は?

症候性てんかんを引き起こす原因としては、以下のものが挙げられています。

頭部の外傷

頭部を損傷したときやその周辺の時期、その後(通常は2年以内)に、てんかんの発作が起こることがあります。

感染症

神経系の感染症により、ニューロンが損傷し、てんかんの発作が起こりやすくなる可能性があります。影響する感染症には、髄膜炎(脳および脊髄液の被覆物の感染)、脳炎(脳自体の感染)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などがあります。

特定の薬は発作を引き起こす可能性があります。さらに、薬によっては、突然服用を中止することで、発作が起こることもあります。発作を誘発する可能性のある薬には、三環系抗うつ薬、リチウム、抗精神病薬、高用量のペニシリンなどがあります。

また、不正な薬物使用、特にコカイン、ヘロイン、アンフェタミン、PCPは、てんかん発作を引き起こす可能性があります。

禁酒

お酒を急にやめることも、てんかん発作の原因となる可能性があります。アルコール性発作は、通常、最後に飲んでから12〜24時間後に起こりますが、飲みすぎている場合は、48時間以内、またはそれ以上時間が経過した場合にも起こることがあります。麻薬処方薬(モルヒネなど)の中止も、発作につながる可能性があります。

代謝障害

代謝障害は、血糖代謝、心血管機能(血流および細胞性酸素化を含む)、ホルモン調節など、体内の様々な代謝の過程における障害のことです。てんかん発作を起こす代謝障害としては、以下のものが挙げられます。

・電解質障害
・低血糖や高血糖
・尿毒症(血液中の尿素増加)
・腎臓透析の時期に起こる腎不全(腎疾患)
・発作に関連する毒素の上昇をもたらす肝不全
・低酸素(脳への酸素供給の低下)

運動障害

酸素の欠如、感染、外傷などによる脳麻痺(運動障害)は、てんかんに関連があるとされています。

脳卒中

脳卒中は、酸素欠乏が原因で、脳への神経学的損傷が及び、発症します。てんかんの発作は、脳卒中発症時、または数年後に発生する可能性があります。

腫瘍

脳腫瘍は、悪性(癌性)も良性の場合も同様に、てんかん発作と関連している可能性があります。腫瘍の位置は、てんかん発作の可能性に影響します。なぜかというと、腫瘍はニューロンに圧力をかけることがあり、電気活動の不規則なパターンを引き起こし、発作につながる可能性があるからです。

熱性けいれん

熱性けいれんは、乳幼児が発熱したときに起こる発作です。発症すると、子供はしばしば意識を失い、体の両側の四肢がひきつけを起こします。あまり一般的ではありませんが、体が硬直したり、腕や脚だけ、または右だけ左だけなど、身体の一部だけにけいれんが起こることもあります。ほとんどの熱性けいれんは1~2分続きますが、数秒程度の短いものもあれば、15分以上続くこともあります。

熱性けいれんは乳幼児の3~4%に発症するといわれています。熱性けいれんの後遺症としててんかんが発症するわけではないようですが、てんかんを起こしやすい子供は熱性けいれんも起こしやすいといわれています。

低栄養

てんかんのある子供は、健康な子供と比較して、全カロリー、タンパク質、炭水化物、脂肪、食物繊維、複数のビタミンとミネラルが統計的に、顕著に低レベルであることが報告されています。

てんかん発作が原因で事故が起こることも

てんかん発作は時間や場所に関わらず、突然発症するものです。そのため、車の運転中や機械での作業中に起こる可能性も当然考えられます。数年前にてんかん患者による交通事故がニュースになりましたが、発作はいつ起こるかわからないため、早期治療をしたり、事故につながるような業務に就かないことが重要になります。

おわりに:てんかんの原因はさまざま。該当する病気や怪我があれば要注意

てんかんは原因不明のものも多いですが、原因がわかっているものについては、脳血管障害や頭部の外傷などによって起こる傾向があります。大人になってからも発症することはあるので、該当する病気や怪我のある人は、てんかん発作のようなものが見られたらすぐ脳外科を受診するようにしてください。

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