記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
2017/8/10 記事改定日: 2018/4/9
記事改定回数:1回
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
腟カンジダ症は女性の7割以上が経験するとされている身近な感染症です。
比較的治療が容易といわれていますが再発しやすい特徴があり、頻繁にカンジダ症を繰り返す場合は「再発性カンジダ症」の可能性があるため注意が必要です。この記事で腟カンジダ症の再発の原因と危険性を予防法とあわせて紹介しています。
糖尿病の人で血糖値のコントロールができていない人も、カンジダ症再発の可能性がより高くなります。
これは、高血糖によってカンジダ菌が腟内で育ちやすくなってしまうためと考えられています。
ストレスや疲労から免疫機能が弱まると、腟内のphバランスが崩れてカンジダ症の原因菌(カンジダ菌)が繁殖しやすくなります。
HIVとはヒト免疫不全ウイルスのことで、感染すると長い時間をかけて体の中の免疫細胞を攻撃し、徐々に免疫力を低下させます。
腟内には健康な人でもカンジダが生息しています。通常は免疫力が働くことで、問題となることはありませんが、HIVに感染して免疫力が落ちると、カンジダが増殖し、様々な症状が生じるのです。
妊娠中は様々な体調の変化が生じやすいものですが、それはつわりやホルモンバランの変化で体力が落ちやすいためです。また、ストレスや疲れもたまりやすく、抵抗力の低下に拍車をかけた状態となっています。
そして、妊娠中は腟カンジダになりやすい状態であるうえに、妊娠中はプロゲステロンの作用で体温が上がり、お腹を守るためのマタニティーパンツや腹巻などは下半身を常に汗ばんだ状態にします。
カンジダは高温多湿の環境で盛んに増殖するため、妊娠中のからだはカンジダの生育にとって最適な環境にあるといえるでしょう。
このため、妊娠中は腟カンジダを再発しやすくなり、妊婦健診のたびに治療を受ける妊婦さんも少ないといわれています。
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンという二種類のホルモンがあります。その中でもエストロゲンは、腟内のグリコーゲンと呼ばれる糖質の産生量を増加させる効果を持ちます。このグリコーゲンは、カンジダの「餌」となるため、エストロゲンが多く分泌された状態は腟カンジダが発症しやすくなります。
女性ホルモンのバランスは妊娠や月経周期によって変わり、ストレスや疲れによって簡単に乱れるものです。腟カンジダはホルモンバランスの乱れのサインでもありますので、注意しましょう。
抗生物質を長期間かつ頻繁に利用していることも腟カンジダの原因のひとつです。
抗生物質を使う期間が長いと、抗生物質が腟内の善玉菌まで減らしてしまう可能性があります。善玉菌の量が減ることでカンジダ菌が育ってしまい、カンジダ症にかかる可能性も高くなるのです。
経口避妊薬、殺精子クリーム、ジェリーなどのホルモン性の避妊薬を使っていると、腟内の細菌バランスの変化を招きやすいため、カンジダ菌が増えてしまう原因となり得ます。
たとえば汗で濡れたトレーニングウェアをすぐに着替えなかったり、泳いだ後に湿った水着のまま出かけたりすることは、カンジダ症の再発率を高めている可能性が高いです。
さらに「塗れていて」「ぴったりと肌に密着する」2つが組み合わされた服は、よりカンジタが成長しやすい腟内環境になってしまうと考えられています。
腟カンジダが直接、子宮や卵巣などの妊娠に深く関わる臓器にダメージを与えることはありません。しかし、カンジダは活動が活発になると周辺を酸性にする性質を持ちます。このため、腟カンジダの人の腟内は酸性に傾きます。妊娠に必要な精子はアルカリ性のため、腟内が酸性の状態では、運動能力が低下し、妊娠しづらくなる可能性もあります。
また、妊娠中は腟カンジダになりやすく、特に妊娠前にも腟カンジダを繰り返していた人は、再発しやすいものです。出産時に腟カンジダを発症していると、赤ちゃんが産道を通るときに感染し、カンジダ肺炎などの重篤な感染症にかかる可能性もあります。
腟カンジダは自然と治ることも多いですが、妊娠前にきちんと治療し、再発の予防に努めましょう。
腟カンジダ症は抗生物質や処方薬(クリームや腟専用の座薬)で比較的簡単に治療することができます。しかし、何度も再発を繰り返す場合は他の治療法や日常での予防を検討したほうが良いでしょう。
腟カンジダ症になったら、まずは医師から指示された治療法に従ってください。
そのうえで、次に紹介するような方法を実践し腟カンジダ症の再発を防ぎましょう。
患部を清潔に保つことが大切です。以下のことを心がけましょう。
・外陰や肛門を定期的に洗う
・入浴後は患部をしっかり乾燥させる
・他の人が使ったタオルは使わない
衛生用スプレー、刺激性の石鹸や香りが強い入浴剤、香水やタルカムパウダーなどの化学製品の使用は避け、使う場合は最小限に止めるようにしましょう。
締め付けが強い衣服や下着の着用は避け、通気性が良い衣類を着用するようにしましょう。
腟を通常の入浴以上に洗浄する必要はありません。何度も洗浄をすることで腟内に存在している菌類の正常なバランスが崩れてしまいます。
可能であれば経口抗生物質を頻繁にあるいは長期に渡って使わないようにしましょう。ただし、自己判断で薬を止めることは絶対にしないでください。
肥満の人や肥満気味の人は、減量に励みましょう。
糖尿病の人は、徹底した血糖コントロールを行い、きちんと治療を続けていきましょう。
軽度な腟カンジダは治療をしなくても自然に治ることも多いです。しかし、腟の中には常にカンジダが潜んでいることになり、ちょっとした体調の変化ですぐに再発しやすく、多い人では毎月のように繰り返す人もいます。
そのため、一度腟カンジダの症状が現れたときには放置せず適切な治療を受けた方が無難ですし、同時にカンジダが再発しないように注意した方がいいでしょう。
また、再発する腟カンジダは市販薬で治すことができますが、半年の間に二度以上の再発を繰り返す場合には、病院を受診して適切な検査・治療を受けることをおすすめします。
腟カンジダ症の再発を防止するためには、原因を正しく特定し適切な治療を施す必要があります。なるべく早めに病院で治療してもらいましょう。
また、腟カンジダが直接不妊の原因になるわけではありませんが、妊娠しにくくなる間接的な原因になることがありますし、出産時に再発してしまうと赤ちゃんへの感染のリスクがあります。日ごろから予防に努め、未治療のまま放置しないようにしてくださいね。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。