記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/9
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
タバコの煙は肺癌の原因になるだけでなく、肺の炎症を促進して病状をさらに悪化させることはご存知ですか。この記事で、肺癌と喫煙の関係やタバコが体に与える悪影響について詳しく見ていきましょう。
肺癌と喫煙の関連は以前より唱えられてきました。
タバコの煙にはニコチンや一酸化炭素をはじめ様々な発癌物質が多く含まれています。そんな有害物質を含んだ煙を吸えば肺が汚染されてしまうのは火を見るよりも明らかです。
実際に、生涯に渡って喫煙をする人たちは非喫煙者に比べて肺癌を発症させてしまうリスクが10倍以上もあることが近年の研究で明らかになっています。
タバコの煙には60種類以上の有害物質が含まれています。
有害物質は、煙の通り道である口や喉、鼻はもちろん、唾液に溶けて通るため消化管(食道・胃)にも影響します。また、血液中に移行して排出されるので、血液・肝臓・腎臓などにも行き渡るリスクがあるのです。
動脈硬化、冠動脈疾患、脳卒中などの循環器疾患も、喫煙で発症リスクが上がる病気です。
喫煙によって血管の壁が損傷を受けて細胞が機能不全になると、血栓が形成されやすくなり酸素運搬機能が低下することが主な要因と考えられています。
タバコは慢性閉塞性肺疾患(いわゆる肺気腫)の大きな原因です。
主要な呼吸器症状すべて(せき・たん・喘鳴・息切れなど)を引き起こし、また気管支喘息のコントロールを悪化させます。
タバコを吸うと交感神経が刺激されて血糖が上昇し、体内のインスリンの働きが邪魔されるために糖尿病にかかりやすくなるといわれています。
また、糖尿病患者がたばこを吸い続けると治療の妨げとなるだけでなく、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病性腎症などの合併症のリスクが高まります。
【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco-summaries/t-03】
タバコの煙は肺癌の原因になるだけでなく、肺の炎症を促進して病状を悪化させることが明らかになっています。
初期の肺癌病巣のあるマウスたちに実験を行なったところ、繰り返しタバコの煙にさらされたマウスたちは、さらされなかったものたちよりもより大きな腫瘍を形成し、その腫瘍はより早く拡大したという結果が出ました。
早期の肺癌を除去する手術を受けた喫煙者のうち、手術後1年以内にタバコを吸い始めた、あるいは頻繁にタバコを吸っていたという人は多く、その中でも、再び喫煙を始めた患者の6割以上が肺癌手術を終えた2ヶ月以内にタバコに手を出してしまうという報告もあります。このことから、喫煙者がタバコをやめることは大変難しいといわざるをえないでしょう。
このような場合は、禁煙外来などでの治療をできるだけ早く始めるようにすることをおすすめします。
タバコの煙は腫瘍の原因になるだけでなく、癌の腫瘍を増悪させるものです。発癌リスクやその他の疾病を避けるためにも早めに禁煙することをおすすめします。
また、肺癌の手術後の喫煙は絶対に避け、自力で禁煙することが難しい場合は禁煙外来を受診するなど専門機関でサポートしてもらうようにしましょう。