記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/2/27
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
すべての人にとって健康的な体重であることは重要です。体重を増やしたり、減らしたりする必要がある学習障害(LD)があると、新しい情報を理解したり新しいスキルを習得したり、コミュニケーションをとったりすることが難しくなります。なかには、健康的な体重を維持することが困難になり、生活の質(QOL)に影響を及ぼす可能性があります。
学習障害(LD)では、体重不足または過体重になる可能性が高いといわれています。重度のLDでは摂食不良や嚥下障害のために低体重であることが多く、一方、健康的な食事や生活習慣の選択に必要な情報を得ていないために太りすぎることもあります。
食生活や栄養、調理、定期的な運動に関する情報やアドバイスは、LD児を理解するうえで重要です。まれにLDは、過体重や身長に影響を及ぼすダウン症候群、食欲不振の原因となるプラダー・ウィリー症候群などの病気と関連していることがあり、これらの疾患は特に体重管理を困難にすることがあります。LDを理解するためには、健康的な体重維持に役立つ方法を考えることが重要となります。
体格指数(BMI)は、身長に対して適正な体重であるかどうかを判断する指標です。しかし、LDをはじめとする障害のある人の体重をチェックするには、BMIを使用するだけでは十分ではなく、体重や身長に影響を与える疾患があるかもしれません。そのときは医師の診察を受ける必要があります。
エレイン・ガードナーによれば、LDとそれにかかわる人たちの運動を含めた生活様式の改善を行うには健康的でバランスの取れた食事の選択を促すためにコミュニケーションをとることがとても重要で、そのためには座って話す時間を設け、LD患者、親、介護者の三者で会話をすることは、生活習慣の変化や異常な体重減少や体重増加の受診のタイミングをみるのに最適だとしています。
以下の状況でどのように食生活を変えることができるかを考えましょう。
・買い物をする
「買い物リスト」を作る手助けをしてください。読解に問題があるときは、写真を使用してみましょう。毎週買い物に行く時間を設定し、自分で買い物に行けるようにしてください。
・自宅で調理をする
「献立表」を作成してください。健康的な食事になるよう、規則正しく食事ができるように食事時間の前後、食間でサポートするようにしてください(おやつのビスケットを果物に変えるなど)。
・外食をする
レストランなどでの食事は、メニューから健康的なものを選ぶように促してください。
・記録をつける
食習慣の実態を確認するために、食べた物と廃棄した物の記録をつけることは、規則正しい食生活につながります。
体重を増やすためにエネルギー摂取量を増やす必要があるときは、1人前の量を増やすことが1つのステップになりますが、食欲がなく量を増やせないときは、食事を補うために栄養補助食品や飲料を与えたりして必須の栄養素を短時間で追加することが必要なこともあります。管理栄養士などの専門家によって適切な栄養計画が立てられていることを確認して、体重不足や低体重のアドバイスを受けてください。
・運動する
運動は体重を管理するうえで重要です。体重を減らす必要のある人がカロリーを燃焼させるのに役立つだけでなく、体重を増やす必要のある人の食欲を抑えることもできるからです。日常生活により多くの運動を取り入れるかは、まず興味のある運動について話すことです。定期的な運動のスケジュールを立て必要に応じてサポートし、確実にそれを実行することについて考えてみてください。たとえば、車で移動する人は毎週サイクリングや速めのウォーキングなどの中強度の有酸素活動を少なくとも150分くらいするのが最適です。
体重を管理するのに役立つサポートには以下のものがあります。
・健康診断
体重が心配なときは受診してください。医師は運動と健康的な食事についてアドバイスしてくれるでしょう。
・LD支援プログラム
地域のコミュニティでは健康的な体重維持の方法を教えているところもあります。太りすぎの場合は、利用可能な体重管理サービスがあるかどうか医師に相談してください。このサービスは以下の手助けになります。
・効果的な減量方法
・体重増加を止める
・規則正しく、バランスのとれた食事パターンを身につける
・より身体的に活発になるための運動
・過食および1人前の量を減らす
・長期的な生活スキルを学ぶ
資格をもった体重管理アドバイザーによる検査で、適性と好みが判断されます。LDのある人にとっては、1対1のプログラムのほうがよいでしょう。
入院はどんな人にとっても不安なものですが、LD患者ではさらに困難な状況になることがあります。以下のことを念頭において対処してください。
入院する前に、LDがあることを知らせてください。これは医師の紹介状にも書かれていなければなりません。
コミュニケーションを取ることができるなら飲食の介助が必要か、苦痛を感じているかどうかを医師や看護師に伝え、治療にかかわるすべての職員がコミュニケーションの困難を認識していることを確認してください。痛みはあるものの伝えることができないとわかったら、すぐにだれかに伝え、職員が理解する手助けをしてください。
医者や看護師のいうことを理解できないときは、治療や診断を説明するのに入院に付き添うことも必要があるかもしれません。
手術を行う前や治療をはじめる前には「同意書」が必要です。しかし、LD患者では理解できない場合があります。理解する能力が足りない場合は、医師は同意なしに患者を治療することができますが、代理人として医療上の決定をする弁護士や保護者が代理人となる必要があります。
・治療には何が含まれますか?
・治療によって患者の健康はどのように改善しますか?
・ほかの治療と比べてどのようなメリットがありますか?
・成功する確率はどれくらいですか?
・治療の選択肢はありますか?
・どのようなリスクがありますか?
・治療を受けないとどうなりますか?
針を恐がる人は多く、それはLDをもつ人でも苦痛を与えるかもしれません。血液検査や静脈注射、薬物注射など、病院で針を避けるのは難しいことです。LD患者が針で動揺した場合は、外用局所麻酔剤(商品名:エムラクリーム)を使用して針が入る領域を麻痺させることもできますので医師に相談してみましょう。
LDをもつ人の退院にもサポートが必要です。病院からの移動手段、滞在場所、投薬、通院日や自宅で続けるケアプランの確認など、退院してからあわてることのないよういっしょに退院計画をたてましょう。
読む・書く・話す・計算するなど特定の分野が困難なLD患者は、知的障害ではないのでまわりのサポートで普通に日常生活が送れます。LD患者が健康的な生活を送るために、ゆっくりじっくりサポートしてあげることが大切です。