記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/10 記事改定日: 2018/4/3
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
家族や同僚でてんかんを抱える人がいるとき、発作が起きたときの対処法を知っておくと適切に対処できるようになります。また、本人はてんかん発作中の記憶がないため、周囲の人が医師に、発作が起きたときの状況をできるだけ詳しく伝えることが、適切な治療につながります。この記事では、てんかん発作の種類とともに、対処法について解説します。
てんかんとは、「種々の成因によってもたらされる慢性の脳疾患で、大脳ニューロンの過剰な発射に由来する反復性の発作(てんかん発作)を特徴とし、それにさまざまな臨床症状及び検査所見が伴う」と定義されます。一般的には突然けいれん発作などが起こることが多いです。発作の種類によってさまざまな症状が現れたり、意識障害が現れたり、完全に意識を失ったりすることがあります。
しかし、患者本人はてんかん発作に関してほとんど記憶がない(あるいは全く覚えていない)ため、発作の様子について医師が詳しい情報を得るためには、周囲の人がどのような症状がみられたかを伝えることが重要です。特に、最初の症状(突然意識を失う、四肢のひきつりや痙攣が起こる、奇妙な感覚を覚えるなど)は、てんかん発作の種類を特定する上でとても重要です。
てんかん発作が起こりやすい方の場合、運転や水泳、一人での入浴、機械の操作などをするときは特に注意が必要です。というのも、このような場面で突然発作が起こってしまうと、本人はもちろん、周囲にいる人も思わぬ怪我をする可能性があるからです。
てんかん発作にはいくつかのタイプがあります。個々のてんかん発作は原因が異なっていたり、特定の薬物に反応したりする可能性があるため、正確に区別することが重要です。
部分発作は、脳の一部だけに限定して発生する発作です。ほかの部位に発展しない限り、患者が意識を失うことはありません(このあとに解説する「全般化部分発作」の場合は、けいれんや意識喪失が起きることがあります)。
部分発作は、さらに下記の2つのタイプに分類されます。意識障害を伴う「複雑部分発作」と、伴わない「単純部分発作」です。
<複雑部分発作>
最も発生頻度が高い部分発作が「複雑部分発作」です。複雑部分発作を起こすと、奇妙な感覚や異臭を感じた後、意識が混濁したり、ぼーっとした状態になります。呼びかけに応答せず、異常な行動(衣類をつまむ、唇を鳴らす、うろうろと歩き回る)をとります。
<単純部分発作>
部分発作の中でも比較的発生頻度の低いものが「単純部分発作」です。この発作は脳内の特定の部位が原因で起こるもので、手足のけいれんが起きたり、異常な感覚に陥ったりします。ただ、意識ははっきりしているので、周囲の人と会話したり、状況を把握したりすることは可能です。
全般発作は、脳の両半球の大部分が引き起こす発作で、意識喪失が起こります。全般発作も、さらに以下の発作に分類されます。
<全身性強直間代性発作>
全般発作の中でも、最も見た目が劇的に変わる発作です。全身の力が抜け、意識が失われたあと、筋肉のけいれんが起こり、手足が激しく収縮します。発作は徐々に激しくなりますが、数分後に自然に治まります。
全身性強直間代発作は、呼吸停止や失禁を引き起こしたり、舌を噛んだり、地面へ倒れこんで怪我をする恐れがあります。また、発作が治まった後、数時間にわたって疲労や筋肉痛、頭痛がみられることがあります。
<欠神(けっしん)発作>
欠神(けっしん)発作も意識の喪失を伴いますが、全身性強直間代発作とは異なります。欠神発作は子供の患者によくみられる発作で、短時間(秒単位)の間でのひきつけを何度も引き起こします。このため、やっていたことを何度も中断したり、そわそわしたり、服を触ったりするなどの行動が伴うことがあります。ただ、子供本人と家族はその異常な現象に気づかないことが多いため、学校にいるときに気づくことが多い発作です。
<そのほか>
そのほかの全般発作では、突然筋緊張を失い、全身に激しいけいれんが起こることもありますが、このような発作が起こることはめったにありません。
初めて発作があらわれたときは、検査で発作の原因を調べることが大切です。必ず専門機関を受診してください。また、受診するときは発作を目撃した人と一緒に行ってください。
たいていの場合、病院に到着したときに発作は治まっていますが、発作中どのようなことがあったのかを医師に説明する必要があるためです。
また、てんかん発作が長時間続いている場合(「痙攣重積状態」と呼ばれます)は緊急事態なので、すぐに救急車を呼ぶことが大切です。抗てんかん薬を服用しているてんかん患者も、薬が体に合わないと思われる場合には医師に相談する必要があります。
てんかん発作を起こしたときは、下記の対処法を行ってください。
てんかん発作による動きで、患者が怪我をする恐れがあります。安全な場所に患者を移動させましょう。もし、地面が硬いところで発作を起こした場合は、患者の頭を枕や洋服など、柔らかいもので支えてください。このとき、患者の体の動きを押さえつけないようにしてください。
患者の身体は横向きにし、頭は下を向くようにしてください。唾液の分泌を促したり、嘔吐したものを吸い込むのを防ぐことができます。
てんかん発作が脳や体の病気が原因で起きている症候性てんかんの場合、原因となっている病気を治療することが最善の発作の予防法です。根本的な治療を行うことで、抗てんかん薬を服用する必要がなくなる可能性もあります。
なお、発作の原因にかかわらず、睡眠障害、薬物やアルコール濫用など、発作を引き起こす特定の状況や活動を避けることも、発作を予防する効果的な方法と考えられています。
てんかんと診断されたことのある方でしたら、発作や対処法について十分理解していると思いますが、家族や友人、同僚など、周囲の人もてんかんについての正しい知識を得ておくと、発作が起きたとき適切に対処することができます。万が一に備えて、てんかん発作が起きた時の対処法を学んでおきましょう。