摂食障害の治療で大切なこととは!?どんな治療法があるの?

2017/7/31 記事改定日: 2018/6/5
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

摂食障害には食事をほとんどとらなくなってしまう「拒食症」と、食べ物を大量に食べてしまう「過食症」があります。ストレスや精神的な要因が大きく、10~20代の女性が発症する傾向が高いといわれています。
この記事では、摂食障害の治療法について説明します。治療を成功させるうえで大切なことにも触れているので、参考にしてください。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

摂食障害の治療では「本人の価値観を変える」ことも大切

摂食障害の治療では、食行動の改善や体重の回復が重要です。
しかし、同時に「痩せていないと自信を持てないのではないか」「過食衝動が襲ってきたら食べる以外にどうすればいいのか」といった恐怖心を乗り越え、それまで持っていた価値観を変えていくことこそが最も重要な工程だと言えるでしょう。

そのためにも、治療は時間をかけて行う必要があります。
また、本人の行動はもちろん、治療者や周囲の支えてくれる人たちの存在やサポートが不可欠です。

そして、摂食障害は長期化すると骨粗しょう症など、命に関わる病気を招く危険性があります。また、女性の場合は妊娠や出産にも影響が及びます。まだまだ続く人生を健康的に過ごすためにも、一度医師の診断を受けることをおすすめします。

摂食障害の病院治療ではどんなことをするの?

病院では、体重に対するこだわりや間違った自己評価などを正常にするための心理療法を中心に、心身の回復を目的とした薬による治療や栄養指導などを行います。

診断中の会話で自分の症状や気持ちを医師に話すことで摂食障害の原因となっている感情に気づき、改善への糸口が見つかることもあるかもしれません。

摂食障害の治療法:対人関係療法

摂食障害の患者さんは自己主張があまり得意でない傾向があります。
過剰適応を繰り返すうちに自己評価が低くなり、他人の評価に振り回されやすくなったり、あるいは完璧主義で人前で失敗することが怖くなり、対人関係でつまずいてしまうこともあるといわれています。
特に過食症の患者さんの中には、対人関係でのストレスから過食行動に走ってしまういる人がしばしば認められますし、過食が唯一のストレス発散だという人もいます。

感情を伝える練習

摂食障害の対人関係療法としては、対人関係での悲しみや怒りといった陰性感情に気づき、それを表現・コントロールできるようにするという方法があります。これは、陰性感情のコントロールが食行動の改善に深く結びついているからです。

摂食障害の治療法:カウンセリング

カウンセリングは摂食障害の克服の大きな手助けとなります。
これは、摂食障害の発症には社会・文化的要因、心理的要因、また生物学的要因が複雑に関与しているため、肉体へのアプローチ(食事や体重を通常にすること)だけで解決することは難しいからです。

また、摂食障害の患者さんは「完璧主義」や「0か100」という考え方の人が多く、少しでも失敗したり期待から外れると全てを否定的に捉えてしまいがちです。そのような思考のクセは治療の妨げになるため、治療者と一緒に考え方のパターンを改善していくことは摂食障害の克服に大変効果があるといわれています。

一方で体重が回復し栄養状態がよくなってくると、病気になる前に隠し持っていた不安や自信のなさが急に現れてくることがあり、過食症の場合は憂うつや不安感からどうしようもなく暴食に走ってしまうことも多いです。

心理的なアプローチ以外の摂食障害の治療法とは!?

心理的なアプローチ以外のの摂食障害治療法として、下記の2つの手段があります。

薬物治療

拒食症の場合は統合失調症や気分障害に広く使用されている非定型抗精神病薬が、過食症の場合は過食衝動軽減の目的でSSRIが使用されることがありますが、現在のところ摂食障害の特効薬は存在しません。

入院治療

以下のような状況にあてはまる場合は入院治療が必要となる可能性があります。

  • 急激な体重減少が認められる
  • (拒食症の場合)外来治療をしても体重増加がない
  • (過食症の場合)外来治療をしても、暴食・嘔吐・下剤乱用が続いている
  • 重篤な身体合併症(低カリウム血症、心臓異常所見、糖尿病の合併)がある
  • うつ病、強迫性障害、境界性人格障害、自傷行為などの精神疾患を伴っている
  • 治療環境として問題のある家族環境あるいは心理社会的に不適切な環境である

摂食障害の食事と栄養療法

摂食障害では、体に必要な栄養素やカロリーを適正量摂取する栄養療法が進められます。
拒食症の場合は摂取カロリーを重視して、苦痛なく食べられるものを選び、過食症の場合は食事量を減らすことを重視して、大皿盛りはしない・一人で食事させないなどの対策が必要となります。

また、食事でカロリーや栄養素を摂ることが理想ですが、極端に摂取カロリーが少なかったり食事が偏って十分な栄養素が摂れない場合には、高カロリーの補助食品や栄養剤などが使用されることもあります。

おわりに:ひとりで悩まず、助けを求めることも大切。家族や友人の力も借りよう

摂食障害の治療は、食事に対する価値観を変えることが重要で、必要に応じて薬や栄養剤を使いながら治療が進められていきます。また、様々なストレスが要因となっていることも多いため、周囲の人の理解やサポートがとても大切です。
摂食障害で悩んでいる場合は、ひとりで乗り越えようとせず、まずは信頼できる人に打ち明けることからでも良いので、家族や友人、医師やカウンセラーの力を借りましょう。

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