記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
日本人の死因の第1位であるがん(厚生労働省『平成27年 人口動態統計月報年計(概数)の概況』)。死に至るかもしれない大病でありながら、とても身近な病気でもあります。
予防するための確実な方法はありませんが、少しでもそのリスクを軽減するために、おすすめの方法をご紹介します。
多くのがんは生活習慣病の一種であり、生活習慣を改善することで発病を予防することが可能です。がんを予防するために必要な生活習慣の改善には次のものが挙げられます。
タバコには多くの発がん物質が含まれているため、喫煙はがん発症のリスクを大幅に上昇させます。特に、喉頭がんや肺がん、胃がん、膀胱がんなどは喫煙によって発症率が上昇することが分かっており、いち早い禁煙が望まれます。また、喫煙している本人だけでなく周囲の人の受動喫煙でもがんの発症リスクは上昇しますので注意しましょう。
アルコールは適量であれば健康に害はないとされています。しかし、過度な飲酒は肝臓にダメージを与え、肝炎から肝硬変、肝臓がんへ進行することがあるので適度な飲酒を心がけましょう。
正しい食生活は健康維持の基本です。塩分の多い食事は胃がんのリスクになり、野菜や果物不足はがんの発症率を高めることがわかっています。特に食物繊維の少ない食事は便秘になりやすく、大腸がんの原因ともなります。
食事は適正カロリーをきちんと守り、野菜や果物を適度に取り入れた減塩メニューを選ぶようにしましょう。
適度な運動を定期的に行う人は、行わない人に比べてがんの発症率が低いとのデータがあり、身体活動は肥満や心疾患などの病気を予防するだけでなく、がんの発症も予防することが分かっています。
極端なやせや肥満はがんのリスクとなります。男性ではBMI値21~27、女性では21~25が最も健康的な体型だと考えられていますので、この範囲での体重を維持するように心がけましょう。
がんの発症を確実に防げる食べ物やサプリメントはありません。
しかし、食事の内容とがんの発症リスクとの間に関連があることは、研究によって判明しています。
健康でバランスの取れた食生活を心がけると、がん発症のリスクを低下させることができるといわれています。以下のようなことに気をつけて食事を摂るようにしてみてください。
十分な食物繊維を摂ると、腸のがんにかかるリスクが低下することがわかっています。繊維が多い食事は、腸の健康を保ち、便秘の予防にも役立ちます。
食物繊維が豊富な食品として、全粒粉のパスタ、パン、朝食用シリアル、米があります。豆、果物、野菜も繊維質が摂りやすい食べ物です。
肉は、タンパク質、ビタミン、鉄、亜鉛などのミネラルを豊富に含む食品です。しかし、赤身の肉や加工肉を食べる量と、腸のがんの発症リスクの上昇を招く可能性があると考えられています。
肥満の場合、以下のようながんのリスクが高まる可能性があります。
健康的な体重を保つことで、がんの発症リスクを減らすことができます。 BMI(WHOが定めた肥満判定の国際基準)に基づく計算をして、健康的な体重かどうかを知っておきましょう。
体をよく動かすことで、腸や乳房のがん、子宮内膜がん(子宮の内側にできるがん)のリスクを減らせるといわれています。
どのようなメカニズムで減少させるのか、はっきりとはわかっていないものの、定期的な運動がホルモンのレベルを正常に保つのに役立つことが研究で明らかになっています。ホルモンのレベルが高いと、がんのリスクが高まる可能性があります。
また、体を動かすことは健康的な体重維持にも役立つため、がんの発症リスクの軽減につながります。
飲酒は、以下のようながんのリスクを高めることがわかっています。
週のほとんどで酒を飲んでいるなら、健康へのリスクを減らすために以下のことをお勧めします。
また、禁煙はがんの発症リスクを大幅に軽減します。早ければ早いほどいいですが、禁煙に遅すぎるというタイミングはありません。30歳で禁煙する人は、タバコを吸わない人と同じくらい長生きしますが、50歳で禁煙した人でさえ、タバコによるダメージを半減させることができるとされているのです。
日焼けしないよう日光に気をつけることは、皮膚がんを予防するうえで重要です。以下のことに気をつけましょう。
ほくろやそばかすが少しでも変わった場合(たとえば、今までより大きくなったり、出血したりする場合)は、がんの初期症状である可能性があります。注意して観察するようにしましょう。
医学が進歩した現在では、がんは早期の段階で発見され、適切な治療を行えば非常によい予後が期待できます。治療法も早期であれば内視鏡での切除など体に負担が少ないものを選ぶこともできます。
このため、がんは予防だけでなく、がん検診をしっかり受けて早期に発見できるようにすることが重要です。また、がん検診はあくまでがんがあるかどうかのスクリーニング検査ですので、「要精検」と判定された場合は放置せずに速やかに病院での精密検査を受けるようにしましょう。
がんは生活習慣の改善で、ある程度予防できると考えられていますが、現在のところ完全に予防する方法はありません。そのため、万一発症したときに備えて、定期健診で体の状態を把握しておくことが大切です。
生活習慣の改善とともに、定期健診も徹底しましょう。