感染症の治療に必要不可欠 “魔法の弾丸”抗生物質

2017/2/14

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

細菌学者フレミングが偶然の産物で生み出した抗生物質。

細菌を完全に殺しつつ、人体には害をもたらさない“魔法の弾丸”は、

第二次世界大戦の戦場で多くの兵士の命を救いました。

そして、ペスト、チフス、コレラという、長い間、人間を苦しめてきた伝染病の脅威を根絶し、人類の平均寿命を格段に延ばしました。

抗生物質が、人類の歴史に対し、大きな役割を果たしたことは、疑いの余地がない事実です。

しかし、永遠とも思えた抗生物質“神話”も崩壊する時がきました。

絶滅したかに思えた細菌の逆襲がはじまったのです。

抗生物質が効かない細菌“耐性菌”がその姿を現わしたのです・・・

と、これから、そんな抗生物質の危機について紹介する予定だったんですが、これについてはまたの機会に詳しく。

今回は、まず、抗生物質について説明させてください。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

抗生物質とは?

抗生物質は、生命を危険に晒す伝染病をはじめ、さまざまな感染症の治療に用いられる非常に強い力を持つ医薬品です。

抗生物質が人間にもたらした恩恵は、はかり知れず、多くの生命を救ってきました。しかし、抗生物質は、ただしく用いられなければ、大きなマイナスを引き起こす危険性があります。

いつ、どんな場合に抗生物質を使用すべきか、逆に使用すべきでない場合を知ることが大切です。

抗生物質はすべての感染症に対して効果があるのか?

抗生物質は、細菌、真菌、寄生虫によって引き起こされる感染症に対して作用します。

ウイルスによって引き起こされる風邪、インフルエンザに対しては機能しません。

抗生物質耐性とは?

通常、抗生物質は、細菌を殺したり、細菌の増殖を止めます。しかし、細菌のなかには、抗生物質に対して耐性を持つものがあります。

これが、「抗生物質耐性」で、抗生物質がその細菌に作用しないことを意味します。

すべての抗生物質が効かない耐性菌が存在し治療が不可能なため、医療界の頭を悩ませています。

また、抗生物質は、医師の指示通りに正しく用いられない場合、急速に抵抗力を身につけます。

風邪やインフルエンザへの効果は?

抗生物質はすべての病気の治療に効果があるわけではありません。 風邪やインフルエンザなどのウイルス性疾患の場合、抗生物質は効果がないため、服用はできません。

抗生物質が必要な場合

細菌が感染症を引き起こしている場合、抗生物質が必要になりますが、そのほかにも 処方されることがあります。以下に例を挙げます。

・咳、気管支炎
ほとんどの場合、ウイルスが原因だが、長期間続いたり、肺に問題がある場合、細菌が原因である可能性があり、 抗生物質が処方されることがあります。

・喉の痛み
ほとんどの喉の痛みはウイルスが原因のため、抗生物質は必要ありません。 しかし、検査を受け、細菌による連鎖球菌性咽頭炎であることが判明すれば、抗生物質が処方されます。

・耳の感染症
耳の感染症にはいくつかの種類があり、一部の耳感染の治療に使用されます。

・副鼻腔感染症
副鼻腔感染症の治療に抗生物質がよく使われます。

おわりに

医師が抗生物質を処方した場合、処方された期間は、必ず服用を続け、回数・量もすべて守ってください。抗生物質に耐性を持ちうる細菌が体内に残る可能性を減らすためです。

また、処方箋なしで抗生物質を服用しないでください。抗生物質を何らかの形で入手したとしても、医師の指示がない限り、服用しないでください。病気に対しては機能せず、服用することで、体調不良を引き起こし、また、細菌が抗生物質に耐性を得るリスクも高まります。

抗生物質は、必ず、医師の処方のうえ、服用してください。

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