記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/7 記事改定日: 2018/3/22
記事改定回数:1回
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
年をとると記憶力が低下し、認知症を発症しやすくなりますが、この認知症は食事である程度予防できる可能性があることをご存知でしたか?具体的な食事のポイントを中心にお伝えしていきます。すでに認知症の傾向がある患者さんも必見の内容です。
さまざまな研究によって、認知症は食事によって予防できることがわかってきています。加齢による認知機能の衰え自体は防げませんが、認知機能を低下させるような食事を防ぐことで、脳の老化を遅らせることはできると考えられているのです。具体的には、下記の食べ物には認知症予防効果があると言われています。
魚(イワシ、サバ、アジ、マグロなど)に含まれるDHAというオメガ3脂肪酸には、記憶力や判断力を向上させ、認知症を予防する効果があると言われています。なお、オメガ3脂肪酸は加熱に弱いので、これらの魚を食べる際はお刺身で食べることをおすすめします。
オメガ3脂肪酸の一種であるαリノレン酸は、不足するとアルツハイマー病の発症リスクが上がると言われています。αリノレン酸はアマニ油やえごま油に豊富に含まれているので、1日小さじ1杯を目標に摂取しましょう。
ほうれん草や菜の花、小松菜などの緑黄色野菜やオレンジ、いちごなどの果物、枝豆には葉酸が多く含まれています。この葉酸は不足するとホモシステインという悪玉アミノ酸を増加させ、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの作用を強めてしまいます。このことから、これらの野菜や果物を食べることが認知症予防につながると考えられるのです。
大豆や乳製品、卵、肉などにはコリンという物質が豊富に含まれています。このコリンは、認知症予防において重要なアセチルコリンという物質の材料になる成分であり、海外の研究によれば、コリンをたくさん摂取していた人は言語記憶や視覚記憶を高く維持できていたという結果が得られています。
ラードなどの動物性の脂や、トランス脂肪酸を多く含むマーガリンを食べ過ぎていると、血中コレステロールが増え、動脈硬化の発症リスクが上がります。動脈硬化が起こると脳梗塞の発症リスクも上がり、結果的に脳血管性認知症の発症率が上がってしまうので、これらの食べ物の過剰摂取に注意してください。
食事以外に身近でできる、認知症の予防法には以下のものがあります。
運動はあらゆる病気を予防し、脳への血流を維持するため、認知症の予防につながると考えられています。週5回の適度な活動を一回30分程度行ってください。ウォーキング、ハイキング、自転車に乗る、水泳などがおすすめです。また喫煙、飲酒は避け、十分な睡眠を取ってください。
脳のトレーニングやアクティブな知的活動を通じて、精神的に活発な状態を保つことは、脳機能にいい効果を与えるということがわかっています。以下を試してみてはいかがでしょうか。
・無料のオンラインゲームやアプリ
ゲームの数は多いほど効果が上がります。 飽きた場合は、別のゲームにして続けてください。ゲームやアプリを検索するのも、記憶、注意力、言語、論理力、手の運動、視覚に刺激をあたえる活動になります。
・将棋、囲碁、チェス、ジグソーパズル、クロスワード
・スケジュールを書いて、記憶する
・新しい歌を聞き、フレーズをいくつか書き留める
・習慣を変える(右利きなら、左手でコーヒーをかき混ぜてみるなど)
・読書をする
・新しい趣味に挑戦する(語学、楽器など)
すでに認知症を発症している患者さんで、食事の際に問題が生じた場合の対処法についてまとめました。
食事をとる行為自体を忘れている場合は、横で寄り添って料理の説明をしたり、一緒に食事をとったりすると患者さんも食べるようになることがあります。人によって合う方法は違うので、色々試してみてください。
「さっき食べたよ」と言っても、認知症患者さんは食事の記憶自体が抜け落ちているため通じません。この場合は記憶がないことを責めず、日々の食事の1回の摂取量を減らして回数を増やすなどの工夫をするといいです(トータルの摂取量が減り過ぎないよう注意してください)。寒天などの低カロリーなおやつを別途用意するのもおすすめです。
入れ歯が合わなかったり、体調が悪かったりして食事を食べない可能性があります。原因はさまざまなので、まずはその特定をしましょう。
箸がうまく使えないことで、手づかみで食べようとする患者さんも少なくありません。その場合は、食べやすい大きさに切るなどの工夫が必要です。
チャレンジしてみたいものや、実践できそうなものはあったでしょうか?生活習慣の変更は大変なので、 一度にすべてを変えようとせず、徐々に改善していくことが大切です!