記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士 呼吸器内科専門医
山本 康博 先生
2017/8/8 記事改定日: 2018/4/26
記事改定回数:1回
今回の記事では、不眠症改善のために今日からできる対処法を紹介します。また、睡眠薬の使用上の注意や、不眠症のチェックリストも紹介するので、眠れない日がある人は参考にしてください。
不眠症には、大きく分けて2種類あります。
まず、1つ目は一次性不眠症です。この不眠症は他の健康に関する問題とは直接関係がなく、大きなストレスや情緒不安、日頃の疲れなどが原因で引き起こされます。ただし、一時性不眠症は、このような原因が改善された場合でも続く可能性があり、昼寝の習慣が原因となる場合もあります。
もう1つは二次性不眠症です。この不眠症は無呼吸症候郡などの睡眠障害、病気、関節炎や頭痛からくる慢性的な痛み、治療薬、アルコールやカフェインやその他の物質など、別の問題が原因となり起こる睡眠障害です。
以上の症状が当てはまる場合は、不眠症の可能性があります。早めに対処を始めましょう。
では、不眠症を改善するためにできることは何でしょうか。ここでは今日からできるような簡単な対策を紹介していきます。
毎日一定の時間に起きて一定の時間に寝ると、睡眠サイクルが確立されるため、眠りやすくなります。週末の朝は早く起きない方も多いかもしれませんが、なるべく平日と同じ時間に起きるように心がけましょう。
アルコール、ニコチン、カフェインはどれも睡眠を妨げる大きな原因になります。
特にカフェインの効果は長時間にわたって続くため、カフェインが睡眠に与える影響は非常に強いです。カフェインは眠りにつく際の妨げになるだけでなく、夜中に何度も目を覚まさせてしまう原因になる可能性があります。
アルコールは、口にしてから初めの数時間にわたっては鎮静作用によって眠気を誘ってくれるかもしれませんが、その効果が切れてしまった後は目を冴えさせてしまう可能性があります。
ニコチンも不眠症の原因になる可能性があります。現在タバコを吸う方はできれば禁煙するのが良いでしょう。
あまり遅い時間に昼寝をすると夜に眠りにくくなってしまう上に、睡眠の質も下がる可能性があるので、なるべくしないようにしましょう。
適度な運動をしましょう。運動によって睡眠の質と睡眠が持続する時間を改善することができます。しかし、寝る直前に運動することは避けるほうがいいでしょう。就寝時間の少なくとも2~3時間前からは運動を控えた方が良いでしょう。
夜食を食べたり就寝前に軽食を食べたりすると、消化系が活発になり眠りにくくなってしまいます。また、寝る前に飲み物を飲みすぎると夜中にトイレに行きたくなってしまい睡眠が妨げられる可能性があります。
寝室は暗く、静かで、暑すぎず寒すぎない室温になるようにしましょう。光が差し込んでいたり雑音がする場合は、アイマスクや耳栓を使用するのも良いでしょう。
寝る前はリラックスできることをしましょう。例えば、読書をしたり、ゆったりとした音楽を聴いたり、アロマを使ったお風呂に入ったりするのがおすすめです。また、次の日のことについてはなるべく考えないようにしましょう。心配事で眠れなくなってしまう可能性があります。
不眠症には様々なタイプのものがあり、使用される睡眠薬はそのタイプに合わせて選択されます。
睡眠薬は大きく分けて、脳の睡眠を司る大脳辺縁系や脳幹網様体などの機能を低下させて眠りを誘発するものと、強い眠気を起こして眠りを誘発するタイプのものがあります。
脳の機能を低下させる睡眠薬には、マイスリー®などの非ベンゾジアゼピン系、ハルシオン®やレンドルミンなどのベンゾジアゼピン系があります。かつてはバルビツール酸とよばれるタイプのものもありましたが、他の睡眠薬に比べて副作用が多いため現在ではほとんど使われることはありません。
これらの睡眠薬はどれも脳の活動を活発にするGABAと呼ばれる伝達物質をブロックすることで脳の興奮を抑制し、睡眠を促す効果があります。
超短期作用型から中時間作用型まで様々なタイプのものがあり、それぞれの症状に合わせて選択されます。一般的には短時間作用型の方が、睡眠から覚めた時の倦怠感や頭痛、眠気などの症状が起こりにくいといわれています。
一方、眠気を強めるタイプの睡眠薬にはロゼレム®やベルソラムなどのメラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬があります。メラトニンは体内時計のリズムを調える働きを持つ脳内物質であり、オレキシンは脳を覚醒する作用を持ちます。このタイプの睡眠薬はこれらの物質の受容体に作用することで、自然な眠りを促す効果が期待できるのです。
しかし、自然に近い眠りが得られ、副作用が極めて少ないというメリットがある一方、効果の現れ方には個人差があり、全く効かない人もいるのが問題となります。
また、病院で処方される睡眠薬以外にも、薬局やドラッグストアでは睡眠導入剤を購入することができます。これらの大半は、抗ヒスタミン成分を含み、強い眠気を誘発します。一時的に効果がみられてとしても、長く使用するのは危険であり思わぬ副作用が生じることがあるので注意しましょう。また、アルコールや他の薬との飲み合わせによっては効果が増大して長く眠気が続き、日常生活に支障をきたすことも考えられます。
一か月以上の不眠に悩んだ時は、自己判断で市販薬を使用するのではなく、病院を受診して自分に合ったタイプの睡眠薬を処方してもらいましょう。
不眠症は改善が難しいことも多いですが、日頃の小さな対策で改善することもあります。不眠症に悩んでいる方、是非実践してみて下ください。
ただし、長期化している場合は別の病気が隠れている可能性がありますので、早めに病院で診てもらいましょう。
また、市販の睡眠薬を自己判断で長期服用することもいけません。薬の効果が現れないときは、必ず医師に相談し、適切な治療を始めましょう。