記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/14 記事改定日: 2018/6/19
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
近年、「百日咳」に感染する大人が増えているといわれています。百日咳といえば赤ちゃんや小さい子供がかかるイメージかもしれませんが、大人が百日咳にかかってしまうのはなぜでしょうか?
大人の百日咳の原因と治療中の注意点について説明していきます。
百日咳に感染するのは基本的にワクチン接種前の乳幼児ですが、ワクチン接種をしたことのある大人でも百日咳にかかることがあります。これはワクチンの効力が低下したタイミングで(現行ワクチンの免疫持続期間は4〜12年とされています)、百日咳菌患者の飛沫を吸い込んだり、接触したりすることが原因と考えられています。
子供の百日咳では長引く咳だけでなく、ヒューヒューといった呼吸音、咳き込んだときの嘔吐といった症状がありますが、大人の百日咳の場合は2週間以上の長引く咳や、発作的な激しい咳だけが現れるケースがほとんどです。初期症状として鼻水やくしゃみが出ることもあるため、風邪と診断されたり、気管支炎などの呼吸器感染症と誤診されてしまうこともあります。
なお、大人の百日咳が重症化することはまれですが、人によっては咳が強すぎて眠れなかったり、激しい咳による肋骨骨折を起こすこともあります。
成人患者の百日咳保菌量は、小児患者の1/250程度と見積もられています。しかし、百日咳菌の感染力は決して低いものではなく、家庭内で感染してしまうケースも少なくありません。特にワクチン未接種の子供は感染しやすいだけでなく重症化もしやすいです。完治するまで子供には近づかないようにしてください。
先述のとおり、百日咳菌の感染力は比較的高く、飛沫や接触を通じて他人に菌をうつしてしまうことがあります。通常、患者からの菌の排出は咳の開始から約3週間程度持続しますが、適切な治療により、服用開始から5日後には菌の分離はほぼ見られなくなるとされます。
感染症法では、「特有の咳が消失するまでまたは5日間の適正な抗菌性物質(抗生物質)による治療が終了するまで出席停止」とされています。ただし、病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認めたときは、この限りでありません。
大人であれば、百日咳に感染しても自然に治ることもあります。しかし、百日咳の原因となる百日咳菌は非常に感染力が高く、ワクチン接種をしていない小児や免疫がない人が菌に暴露されると80~90%は感染するとされています。
また、百日咳菌は感染者の咳やくしゃみと共に周囲へ飛び散り、多くの人に暴露する可能性があります。このため、知らない内に周囲に感染を広げてしまう危険があります。感染拡大を防ぐためにも必ず病院を受診して適切な治療を行うようにしましょう。
百日咳はマクロライド系などの抗生物質を投与することで治療を行います。大人であれば抗生物質の飲み薬だけで症状が治まり、周囲への感染の危険もなくなります。しかし、免疫力が著しく低下している人は重症化して、けいれんや意識障害、無呼吸発作を生じることもあり、入院して点滴や呼吸管理などの治療が必要になることもあります。
子供の頃にワクチンを打った人であっても、百日咳にかかることがあります。原因不明の長引く咳などが見られる場合は、周囲の人にうつす前に、早めに病院で検査を受け、適切な治療を受けましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
【 厚生労働省ホームページを編集して作成 】