記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
本人の意思にかかわらず、どんな場面でも眠り込んでしまう「ナルコレプシー」。いろいろな場面での周囲への影響は計り知れませんが、その中でも大きなものが、“仕事中”の発症でしょう。ここでは、とくに「ナルコレプシーと仕事」をテーマに解説します。
ナルコレプシーが仕事にどのような影響を及ぼすのか、それを知る前に、ナルコレプシーの代表的な症状を挙げておきます。
前の晩に十分な睡眠をとっていても関係ありません。本人の意思とも関係なく、昼間、突然、耐え難い眠気が襲ってきて眠り込みます。
喜怒哀楽などの強い感情の動きがあったときに、全身の力が抜けてしまいます。症状の度合は人によって違い、少し脱力してしまったり、ろれつが回らなくなってしまう程度から、崩れ落ちるようにその場に倒れてしまう人までいます。
いわゆる金縛りと呼ばれているものは、医学的には「睡眠麻痺」と呼ばれています。レム睡眠中に起こり、数分程度で自然に回復します。
入眠後、すぐに幻覚を見ます。通常の夢よりリアルで生々しく、比較的恐ろしいものが多いのが特徴です。
上記のような症状、すべてが起こる人もいれば、いくつかだけの人もいます。
いずれにしても、「耐え難い眠気」や「情動性脱力発作」が、とくに大切な会議中やプレゼン中に起こったなら、すべてがそこで中断しますし、商談相手を怒らせてしまうような重大な失敗にもつながります。
症状が出なかったとしても、いつそれが起こるか気になってしまい、仕事に集中することが難しくなることでしょう。
また、ナルコレプシーに対する社会の理解がまだ進んでいない現状も関係しています。「いつも居眠りしてる人」「仕事に対して不真面目」というような誤解を受けやすく、周囲との信頼関係を築きにくかったり、壊してしまう恐れがあることも仕事上のデメリットといえるでしょう。
以前は、主に「リタリン」が処方されることが多かったようです。これは昼間の眠気を防いでくれる中枢神経刺激薬ですが、乱用が問題となり、2007年より登録された専門医しか処方できなくなりました。
現在は主に、覚醒効果を与えてくれるモダフィニル(製品名:モディオダール)が処方され、ナルコレプシーや睡眠時無呼吸症候群に対処するために用いられています。
また、昼間に覚醒しておくための薬も有効ですが、前夜に質の高い睡眠をとっておくことも大切です。そのため、睡眠薬を処方されることもあります。
入眠時幻覚に悩まされている場合は、うつ病の治療に用いられるクロミプラミン塩酸塩(製品名:アナフラニール)が有効とされています。
ナルコレプシーは、上述したような薬剤の効果が高く、基本的に職業選択において大きく制限されることはありません。
ただ、やはり症状が出た際に、自分や周囲の人間を危険にさらしてしまうようなことは避けねばなりません。
たとえば、車の運転を伴う仕事や、火などの危険物を扱う仕事、高所での作業を伴う仕事は避けたほうがよいでしょう。
職業選択において大きな制限はないとは言え、いつ症状が出るかわからない以上、周囲に病気のことを話しておく必要があります。
ただ、周囲の理解と協力さえ得られれば、仕事に大きな支障が出ることもなくなりますし、好きな仕事を辞めるという選択肢を選ぶ必要もなくなるので、QOL(Quality Of Life)を保つこともできることでしょう。