記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/14 記事改定日: 2018/8/6
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
疼痛とは、わかりやすくいうと痛みのことです。疼痛は、痛みを起こす原因によって種類が分けられることをご存知でしょうか。
この記事では疼痛の基礎知識として、疼痛や治療薬の種類、理学療法の有効性について説明しています。
疼痛(とうつう)とは、ひりひり、ちくちく、ずきずきといった痛みや、灼熱感などの症状を伴う状態のことをいいます。疼痛には、慢性的に痛みがある状態の慢性疼痛と病気や怪我などで起こる急性疼痛があります。
疼痛の種類は、原因ごとに侵害受容性疼痛・神経障害性疼痛・心理的性疼痛の3種類に分けられます。
侵害受容性疼痛とは、様々な末梢神経に存在する「侵害受容器」が活発に作用してしまうことで、通常なら痛みを感じない熱や摩擦など些細な刺激に対しても過剰に感知される痛みのことです。
筋肉や骨、関節などの痛みのほとんどは侵害受傷性疼痛であり、何らかの外傷の直後に発症した痛みがその後も続くことがあり、プロスタグランジンなどの痛みを発する物質が産生されるためと考えられています。
神経障害性疼痛とは、末梢神経や中枢神経に直接的なダメージが加わって生じる痛みです。
痛みはダメージを受けた神経の支配範囲に一致して生じ、特に何も刺激が加わらなくても灼熱感を伴う痛みや電流が走るような電撃痛を感じるのが特徴です。また、些細な刺激でも非常に強い痛みを生じ、痛みを伴う部位には感覚の低下や発汗異常、色調の変化など運動障害や自律神経系の異常が見られることが多いとされています。
心理性疼痛とは、神経や筋肉、骨、関節、内臓など体に外傷や炎症などが一切ないにも関わらずストレスが主な原因となって慢性的に引き起こされる痛みです。
明確な発症メカニズムは解明されていませんが、痛みを抑制する「下行性疼痛抑制系」と呼ばれる脳のシステムに異常が生じて些細な刺激などで痛みが生じるとの説があります。下行性疼痛抑制系とは、神経を通じて脳に伝わった痛みの刺激をある一定の強さまでなら脳が抑制するというシステムです。
心理性疼痛は過度なストレスなど精神的な異常によって生じますが、痛みの程度は精神状態の異常の程度に比例するとされており、より大きな問題を抱えている人の方が強い痛みを生じることが多く、それがさらに精神状態の悪化につながるという悪循環を繰り返すことになるのが特徴です。
疼痛で使用される治療薬には次のようなものがあり、まずはNSAIDsやアセトアミノフェンなどの一般的な鎮痛薬を使用し、効果がみられない場合にオピオイドなどの効果の強い薬を使用して痛みのコントロールが可能な治療薬を模索していきます。
痛みの原因となるプロスタグランジンと呼ばれる物質の産生を抑える鎮痛薬です。炎症や外傷などによる痛みには効果的ですが、慢性疼痛や心理性疼痛には効果がないことがほとんどです。
NSADIsと同様に抗炎症効果や解熱効果のある鎮痛薬です。副作用は少ないですが、NSAIDsよりも鎮痛効果は弱いとされています。
一般的に「医療用麻薬」と呼ばれるタイプの鎮痛薬です。
下行性疼痛抑制系を活発にすることで、痛みを軽減する効果が期待できます。主に癌による痛みに使用されますが、副作用も強く最小用量から使用を始めます。
神経から放出される痛みの原因となる種々の物質の分泌を抑制する薬です。神経障害性疼痛に効果があり、治療の最初に使用することが推奨されています。
副腎ホルモンを人工的に生成した薬剤であり、強い抗炎症作用と鎮痛作用が期待できます。また、免疫系統を抑制する効果もあり、痛みの原因となる物質の生成を抑制する作用があります。
疼痛に対して、理学療法が有効な場合があります。特に慢性的に生じる疼痛に効果があると考えられており、筋肉のマッサージや筋力アップ、関節の可動域(関節が動く範囲)の訓練などが行われます。
理学療法とあわせて、定期的に運動を続けることが早期緩和に役立つことがあります。
ただし、運動は負荷が大きくなりすぎない、適度なものを選ぶようにしましょう。
などがおすすめです。
調子のいい日だけではなく、できる範囲で構わないので、毎日続ける方が効果が出やすいといわれています。
痛みにはさまざまな種類や原因があり、原因や状態にあわせた対処が重要です。もちろん、セルフケアで緩和できることもありますが、長引いたり、だんだん痛みが強くなっている場合は、専門的な治療が必要です。早めにペインクリニックなどの専門の医療機関を受診しましょう。