アレルギー性結膜炎は目薬で治せる?他人にうつることはあるの?

2017/8/15 記事改定日: 2018/5/25
記事改定回数:1回

渡辺 先生

記事監修医師

東京都内大学病院眼科勤務医

渡辺 先生

近年、日本での患者数が増加傾向にあるのが「アレルギー性結膜炎」です。では、アレルギー性結膜炎になるとどういった症状が現れ、どのように治療するのでしょうか。原因や対策と併せてご紹介していきます。

アレルギー性結膜炎の症状

アレルギー性結膜炎とは、その名の通りアレルギー反応によって引き起こされた結膜炎のことです。目のかゆみや充血、目やに、涙目、目の異物感といった症状が現れ、ときに鼻水やくしゃみといったアレルギー性鼻炎の症状を伴うことがあります。
重症化すると、春季カタルや巨大乳頭結膜炎に発展することがあるので注意が必要です。

巨大乳頭結膜炎とは

巨大乳頭結膜炎とは、目に生じる重度なアレルギー性病変です。上瞼の裏側に白いブツブツしたできものがたくさんでき、進行するとでこぼこのある大きな塊のような皮疹を形成します。多くはコンタクトレンズによるアレルギーであり、適切な洗浄が行われていない場合や使用期限を大幅に過ぎたレンズを使用している場合に、瞼の裏にできた細かい皮疹に細菌感染が起こることが原因であるといわれています。
強い充血と痛みを伴い、放置すると角膜が傷つけられ、失明に至ることもある恐ろしい病変です。

春季カタルは目やにが特徴

春季カタルは、男児に多く発症するアレルギー性眼疾患であり、特にアトピー性皮膚炎の小児に多く発症する傾向があります。
上瞼の裏側に小さな白いブツブツができ、重症化すると大きなでこぼこのある皮疹を形成します。これは石垣上巨大乳頭と呼ばれ、凹凸が大きく、角膜を傷つけることもあります。
目の強いかゆみや痛み、充血、目ヤニが多く現れ、目を開けることが困難になることも少なくありません。春季カタルは一年を通して発症する可能性がありますが、特に春に多く見られることから、「春季カタル」と呼ばれています。

アレルギー性結膜炎の治療で処方される目薬とは

アレルギー性結膜炎の治療は、抗アレルギー薬あるいはステロイドの点眼による薬物治療が一般的です。
主な薬剤として下記のものが挙げられます。

メディエーター遊離抑制薬

アレルギーの諸症状は、アレルゲンが体内に入り込むと肥満細胞と呼ばれる免疫細胞の一種からヒスタミンやロイコトリエンと呼ばれる物質が放出されることで引き起こされます。このヒスタミンやロイコトリエンはメディエーターと呼ばれ、メディエーター遊離抑制薬はこれらの物質が放出されるのを抑制する作用があります。

ヒスタミンH1受容体拮抗薬

アレルギー症状を引き起こすヒスタミンが作用するH1受容体をブロックすることで、肥満細胞から放出されたヒスタミンの働きを抑制する効果をもつタイプの薬です。
副作用として強い眠気がありますが、最近では眠気がでにくいタイプのものもあり、生活スタイルによって選択することが可能です。

ステロイド薬

ステロイドは副腎皮質から分泌されるホルモンであり、一般的なアレルギー疾患に広く用いられている薬です。
免疫の働きを抑制する効果があり、アレルゲンへの過剰な免疫反応であるアレルギーの諸症状を改善する効果があります。

しかし、アレルギーでの免疫反応以外にも広く免疫を抑制するため、細菌感染を起こしやすくなり、アレルギーによる眼病変に細菌感染を併発している場合には使用は控えた方がよいとされています。

市販薬の目薬でも効果あるの?

市販の目薬でも、抗アレルギー成分や抗ヒスタミン成分が含まれたものがあり、これらは軽度なアレルギー症状であれば効果が期待できます。

具体的には、アルガード®クリアブロックやエージ―アイズ®アレルカットなどの「アレルギー専用点眼薬」と表記されている目薬で、抗ヒスタミン成分の他にも抗炎症作用を持つ成分が含まれるものもあり、おすすめです。
ただし、市販の目薬にはキシリトールのように「目がスーッとする」成分が含まれているものがあります。目に傷ができているときやコンタクトレンズを着用している人は痛みを感じることがあるので注意しましょう。

また、結膜炎はアレルギー以外にも細菌感染などで起こることがあり、その場合は医師から処方される抗生物質入りの目薬が必要になります。結膜炎症状が現れた時には、アレルギーによるものと自己判断せず、病院を受診して原因を特定してもらいましょう。

アレルギー性結膜炎はうつる?

アレルギー結膜炎はアレルゲンに対する自己免疫反応による症状なので、他の人にうつることはありません。
しかし、結膜が傷ついてそこに細菌やウイルス感染を起こした状態の場合には、それが他の人にうつる可能性がありますので強い充血や目ヤニがあるときにはタオルの共用などは避けた方が無難でしょう。

薬以外にも原因(アレルゲン)を遠ざけることが重要!

アレルギー性結膜炎の原因であるアレルゲンは、「通年性アレルギー性結膜炎」か「季節性アレルギー性結膜炎」かによって異なります。通年性アレルギー性結膜炎の場合は、ハウスダスト、ダニ、ペットのフケや毛など年間を通じて身の回りにあるもの、季節性アレルギー性結膜炎の場合は、スギ、カモガヤ、ブタクサなどの花粉がそれぞれ原因と考えられています。

アレルギー性結膜炎の症状を緩和するには薬物治療だけでなく、そもそもの原因であるアレルゲンを特定し、それを避けることも非常に有効なセルフケアとされています。

おわりに:病院で原因物質を特定することが症状の改善につながる

アレルギー性結膜炎は市販薬でも症状改善が期待できますが、アレルギー以外の結膜炎の場合は別の治療が必要になることがあります。
目のかゆみや充血など、アレルギー性結膜炎の可能性がある症状でお悩みの方は、まずは病院で検査を受けましょう。アレルギー性結膜炎の場合、原因物質を特定することこそが症状改善の第一歩になります。

【厚生労働省ホームページを編集して作成】
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku03_002.pdf

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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