膝の痛風発作は偽痛風かも?2つの違いと対処法は?

2017/8/16 記事改定日: 2019/10/15
記事改定回数:2回

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

痛風発作が膝に起こると、歩けなくなるほどの激痛になることがあります。また、同じように膝に痛みが起こる偽痛風という病気があるので区別が難しく、それぞれ原因や治療法が異なるため、早期の受診が重要です。

この記事では、膝の痛風発作と偽痛風の症状と対処法について解説しています。急な膝の痛みが起こったときの参考にしてください。

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膝に痛みが出る痛風は危険?

痛風は通常、足指の関節や手の関節にできますが、尿酸値が高い状態が続くと膝や肘などのより中心部の関節に痛みを生じることがあります。

痛風によって膝に痛みが出るということは、進行した痛風である可能性が高く、腎不全や尿路結石などの合併症を引き起こしている可能性もあります。また、膝は尿酸結晶がさらに悪化して結節化した尿酸結節げできてやすい部位であり、注意が必要です。

膝の痛風発作の特徴

痛風の痛みが膝に現れた場合、関節を曲げることができずに歩けなくなることもあります。
症状としては、片方の膝全体が赤く熱を持って腫れ上がり、非常に強い痛みを伴います。

膝が腫れて痛みを伴う病気はいくつかありますが、痛風では片方の膝に起きることが特徴です。
両方の膝で同時に発症することは殆どなく、そのような場合には偽痛風などの別の病気の可能性が高いでしょう。

痛風で膝の痛みがでたときの応急処置

突然の膝の痛みには

  • ロキソニンS®などの市販の鎮痛薬を飲む
  • 膝への血流を少なくする

ことが効果的です。

膝の血流がよくなると、白血球などの炎症細胞が活性化してしまい、更に痛みを増すことになります。

  • 膝を冷やす
  • 膝を高く上げる

などの対処をしましょう。

ただし、これらの応急処置はあくまでも一時的な対処に過ぎません。痛みをやり過ごせたとしても、必ず病院を受診して尿酸値を下げる治療を行いましょう。

痛風発作の再発の予防法

痛風発作は再発を繰り返すのが特徴であり、尿酸値が高い人や痛風発作を起こしたことがある人は厳重な管理が必要となります。

まず一番に注意しなければならないのは食生活です。
尿酸値が高い人の多くは尿酸のもととなるプリン体が含まれる飲食物を過剰に摂取することが原因となっているため、栄養バランスとカロリーなどに注意した食事を心がけましょう

また、体内の水分が不足しがちになると尿酸が結晶化しやすいため、季節を問わずこまめに水分補給をするようにしてください。

食生活の改善とともに大切なのは治療や経過観察を続けることです。尿酸値が高く、痛風発作を起こす可能性がある場合は尿酸値を下げる薬が必要になりますので、必ず医師の指示通り治療を続けるようにしましょう。
また、治療の必要がない場合でも定期的に検査を受けて尿酸値の状態をチェックすることも大切です。

痛風に似た痛み「偽痛風」に気をつけよう!

偽痛風とは、名前のとおり痛風とよく似た症状を示す病気です。「軟骨石灰化症」とも呼ばれ、一般の人が痛風と区別するのは非常に難しいといわれています。

痛風は血液中の尿酸値が上昇して高尿酸血症の状態となり、それが続いた結果、発症しますが、偽痛風は、関節液中にピロリン酸カルシウムの結晶が沈着することによって起こる関節炎です。高尿酸血症は認めません。

偽痛風と痛風の違いは

関節が痛くなったり、腫れ上がったりと、両者の特性はよく似ていますが、上述のとおり発症の原因が明確に違います。
また、痛風は中年以降の男性に多く、偽痛風は男女関係なく60歳以上の高齢者に多くみられることが特徴です。

その他、痛風のほとんどが足の親指の付け根付近や足首周りを中心に発症しますが、偽痛風は膝関節がもっとも多いことも大きな違いです。

偽痛風の症状の特徴

痛風の発作と同じく、突然、発症して自然に治っていきますが、痛風の「風が吹いても痛い」と言われるほどの激痛ではありません
また、発作時には関節腫脹や局所発熱があり、腕や脚の関節に痛みやこわばりが出たり、体重の減少があったりします。

足指など小さな関節に主に発症する痛風と違い、膝関節以外では手首や肘など比較的大きな関節によく起こることが特徴です。

病型は、以下のように6つに分けられています。

A型/偽痛風発作型
  • 急性、亜急性の関節炎を繰り返し起こす
  • 発生する70%以上が膝関節だが、手、肘、足関節に発生することある
B型/偽性関節リウマチ型
  • 偽痛風が慢性的に経過したもの。
  • 体中の関節に発症し、朝に関節のこわばりがみらる
  • CRPが陽性のことがあり、関節リウマチと間違われることがある
C型/偽性変形性関節炎型
  • 徐々に進行する慢性関節炎で急性発作を伴う
  • 圧倒的に膝関節に多い
D型/偽性変形性関節炎型
  • 急性の炎症を起こし、症状の多くが膝関節に出る
E型/無症状
  • 偽痛風の半分以上を占める
  • 関節炎症状がない
  • X線(レントゲン)検査では関節の間に石灰化が見られることがある
F型/偽性神経障害性関節症型
  • 高度の関節破壊がみられ、機能障害も多く出る

偽痛風の痛みが出たときの応急処置は?

偽痛風の痛みへの応急処置も基本的には痛風への対処と変わりありません。市販の鎮痛薬を使用し、腫れて痛みのある関節を冷やすことで痛みは改善するでしょう。
また、体の中に十分に水分が足りていない状態では痛みが増しますので、たくさんの水分を摂取しましょう。

偽痛風の診断・治療法

X線で軟骨石灰化症の存在を確認したり、関節から関節液を吸引して結晶を調べることにより、正確な診断が行なわれます。
なお、偽痛風は、血液中の尿酸値は基準範囲内となりますが、痛風でも発作時の尿酸値は正常のことがあるため、注意が必要です。

基本的な治療方法は対症療法であり、鎮痛剤と安静での対応となります。ピロリン酸カルシウム結晶を取り除くための薬など、完治が見込めるような治療法はいまのところ開発されていません。

痛みがひどかったり、熱が出ているなどの場合は、ステロイド剤や非ステロイド性抗炎症剤などを用いて炎症をコントロールし、痛みを抑えます。

また、関節炎が慢性化した場合も、非ステロイド性抗炎症薬や関節内への注射を使用します。変形性関節症の症状が強い場合は、人工膝関節置換術を行なうこともあります。

おわりに:膝や手の関節が激しく痛むときは偽痛風の可能性も。必ず病院で診てもらおう

膝の痛みが起こる病気には痛風だけではありません。偽痛風という痛風と似通った症状が現れる病気もあります。痛みの場所が足の指ではなく、膝や手だった場合は偽痛風の可能性があります。とくに女性は痛風になることが少ないので、疑ってみてもいいでしょう。

痛風も偽痛風も治療が難しい病気です。早めに適切な対処をすることが重要なので、疑わしい症状が現れたらすぐに病院へいきましょう。

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