記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/18
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
指先の皮膚が硬くなってきている、指先がなんだか白くなってきた、などの症状が出ているとしたら、それは強皮症かもしれません。タイプによっては内臓にまで影響を及ぼしてしまう強皮症とは、どのような病気なのでしょうか。
強皮症の代表的な症状は皮膚が硬くなること。それが内臓に影響を及ぼし、さらに慢性化する可能性があります。
タイプとしては、局所的なものと全身的なものの2種類があり、「限局性(局所的)強皮症」は皮膚のみに影響し、「全身性強皮症」は皮膚だけでなく血管や内臓にも影響を及ぼします。
両者が全く異なる疾患で,前者は膠原病ではありません.一般的に強皮症といった時には後者の全身性強皮症を指していることが多いです。また、誰でも発症する可能性がありますが、女性に発症する可能性が高いという特徴があります。
強皮症の多くは、「レイノー現象」で始まります。レイノー現象は、寒冷刺激や精神的緊張を引き金として、指先が白色や紫色に変化した後、短時間で元に戻る症状です。他には、指のむくみや関節の痛み、皮膚の硬化で始まることもあります。
ただ、この最初の段階では、しもやけや関節リウマチの症状とも混同されやすく、なかなか強皮症と診断されないこともあります。
また、限局性強皮症と全身性強皮症には、それぞれ大きく2種類あります。
厚く硬化した円形や楕円形の、境界が明瞭な赤い斑点が出始め、時間がたつと斑点の色は真っ青になります。斑点は通常、胸部、胃、背部に現れますが、顔、腕、脚にも出ることがあります。
太くて色が変化する線、または帯状の発疹が腕、脚、額に現れます。小児に発症しやすいです。
頭部に現れた場合は、額から前頭部にかけて、線上に現れます。症状が進むと、切り傷のようになります。
徐々に進行し、症状としては、比較的、軽症のものとなります。皮膚硬化がありますが、体幹の硬化はほとんど見られませんし、重篤な内臓病変を合併することもほとんどありません。
急速に進行し、強皮症の典型的な症状を示します。全身の皮膚に影響を与え、腫れて硬くなり、時には体幹まで硬化が進みます。最終的に皮膚は正常に戻ることがありますが、腸、肺、腎臓、心臓などの内臓にも損傷を与えることがあります。
肺病変として間質性肺炎が多く見られ、細菌が感染しやすくなって肺炎を起こしやすくなります。進行すると息苦しさが生じ、酸素吸入が必要となることもあります。
両者に共通するその他の皮膚症状としては、皮膚の色が黒くなったり、その後白くなるなどの色素異常や、爪のあまかわ部分に現れる爪上皮出血点、指先や関節の潰瘍、毛細血管の拡張、皮膚の石灰沈着などがあります。
さらに、手指の屈曲拘縮や関節痛、便秘、下痢を起こす可能性もあります。
まだ原因は明らかになっていませんが、自己免疫疾患に分類されます。通常、免疫系によって産生される抗体はウイルスや細菌などの異物から身体を保護しますが、自己免疫疾患がある場合、自分自身が体の器官を攻撃する抗体をつくってしまいます。
これが原因となって、皮膚の硬化などの症状が現れると考えられています。
まず試みられるのが、ステロイドによって炎症を抑える治療です。他に有効とされているのが、リザベン(トラニラスト)の服用、紫外線照射療法、局所免疫療法となります。
なお、剣創状強皮症で、皮膚の硬化や剣で切られたような陥没がひどい場合には、形成外科的な手術が行なわれることもあります。
重症であったり、進行性の炎症や免疫異常を抑えるためにはステロイド薬や免疫抑制薬が、軽症の場合は、ビタミンEなどの末梢循環改善薬が使用されます。
また、繊維化を抑えるためには、さまざまな抗線維化薬やD-ペニシラミンが使用されますが、D-ペニシラミンに関しては有効性が証明されておらず、副作用も多かったことから最近はあまり使用されていません。
ステロイド薬としては副腎皮質ステロイド薬が使われますが、使用期間や使用量によって感染症にかかりやすくなる、骨粗鬆症になりやすくなるなどの他、精神的に不安定になったり、下痢や便秘、月経異常といった副作用が起こることがあります。
強皮症によって現れる症状は、患者さんによってかなり違います。肺や消化器系など内臓の症状や関節、皮膚など、それぞれの症状に対して最適な治療を施していきます。
強皮症が発症する際、そのほとんどにレイノー現象が現れます。レイノー現象は血管病変のため、血管に起こる異変が強皮症の原因として有力になっています。
血行が悪くならないように注意しながら毎日を過ごすことも、強皮症への対策として有効でしょう。