記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/2/14
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
寝る子はよく育つ、といいますが、寝かせすぎて赤ちゃんの頭が変形してしまうこともあります!
今回は、その変形症状のひとつの「斜頭症」について、症状や原因、予防法などを広くご紹介します。
斜頭症は、赤ちゃんの頭が平坦になるなど奇妙な形状になってしまう疾患です。
重症度は子どもによってさまざまで、妊娠中や出産後に発生する可能性があります。
斜頭症には主に、
・「位置的(頭位性)斜頭症」(「フラットヘッド症候群」)
・「先天性斜頭症」または「骨癒合性斜頭症」
の2つのタイプがあります。
前者は子どもの約50%に発生する一般的な症状ですが、後者は稀な出生欠陥です。
斜頭症の場合、以下のような症状が現れます。
・頭の背面、側面、または前面が平坦になっている
・髪が生えてこない箇所がある
・頭が傾いている、あるいは形状が悪い
・片方の耳が頭の前方(または上方)に押し込まれている
重症な場合は、以下のような症状が現れます。
・頭頂部の柔らかい部分がなくなる
・頭蓋骨に沿って硬く尾根状の部位がある
・顔面がゆがむ(あるいは一部が欠損する)
・頭のサイズが小さい、成長しない
・発作が起きる
なぜ斜頭症になってしまうのでしょうか。
同じ姿勢で寝つづけることで頭が固定され、平坦になってしまうことが原因です。特に早産や長期間入院した赤ちゃんは、より頭蓋骨が弱いので注意しましょう。
仰向けの姿勢が原因で起きることもありますが、赤ちゃんの間は幼児突然死亡症候群(SIDS)予防の観点から、仰向けが最も安全だと考えられています。
通常、赤ちゃんの頭蓋骨の縫合部分は柔らかく開いた状態で生まれ、脳の成長につれて再形成されていくものですが、縫合部分が早期に閉じてしまうと頭が変形し、先天性斜頭症(骨癒合性斜頭症)になります。
なお、先天性斜頭症は子宮内の圧力によって起きるケースもあります(多子出産の場合は発症率が高いです)。
赤ちゃんの頭蓋骨は柔らかく、時間の経過とともに成長し変形しつづけるものなので、定期的な観察が必要です。
医師が推奨する観察方法は、赤ちゃんの頭を上から直接見る方法です。頭に平坦な部分を見つけた場合は写真を撮り、悪化した場合は医師に相談してください。
先天性斜頭症の場合、X線検査などを行います。
赤ちゃんの睡眠中は頭の位置を少しずつ変えてください。ベビーベッドの上方に動くものを置けば、わざわざあなたが動かさなくても赤ちゃんが自分で寝姿勢を変えてくれます。専用マットレスや枕で、赤ちゃんの頭に負担をかけないようにするのもおすすめです。
起きているときは、腹ばい状態にして見守るようにしてください。
なお、車の座席や抱っこひも、ゆりかごで過ごす時間を減らすのも予防に有効です。
先天性の場合は、原因不明な部分が多いため予防が困難です。しかし、最近の研究では甲状腺疾患やクエン酸クロミフェンの使用、遺伝病によって発症する可能性が示唆されています。
重症度によって治療方法は異なります(いくつかの治療法を組み合わせるケースもあります)が、基本的には、頭蓋骨が形成中である3〜18ヵ月の間に治療を始める必要があります。
家でできる、斜頭症の治療方法は以下のとおりです。
・うつ伏せに寝かせて首を強くする
・授乳中に抱く姿勢を変える
捻挫した頸部の筋肉を強くします。
・ヘルメット療法
治癒率の高い治療法です。数ヵ月間、医療用ヘルメットを着用します。
・外科手術
頭蓋骨を治し、脳の圧力を緩和します。通常、1歳より前に行われます。
・医療用ヘルメット
場合によっては、追加の治療が必要となる場合があります。
斜頭症は基本的には自然治癒や手術での治療が可能なので、通常の生活を送れる可能性が高いです。脳の成長や機能に問題が生じることもありません。
しかし、未治療のまま放置すると、発達的、神経学的、または心理的な病気につながる可能性があります。また、重度の斜頭症の場合は、定期観察やカウンセリングが必要になるケースもあるでしょう。
いかがでしょうか。後天的な斜頭症にさせないためには予防が非常に大切ですが、赤ちゃんの頭をしっかり観察しておくことも同じく重要です。もし違和感を感じたら、早めに病院を受診するようにしてください。