記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
統合失調症とは心の病気の1つです。うつ病などはだいぶ知られていますが、まだまだ、きちんと理解している人は少ないでしょう。
この記事では、統合失調症の診断や治療についてまとめています。
統合失調症の診断基準には、WHO(世界保健機関)の国際疾病分類のICD-10と米国精神医学会によるDSM-5が主に使われています。
・妄想や幻覚、一貫性のない会話や行動、ひどく緊張していたり、感情の起伏が乏しかったり意欲が全く見られないなどの症状の有無
・上記のような症状が継続して常に現れているのはどのくらいの期間か
・仕事や学校などでの対人関係や、自己管理に問題が起こっていないか(以前より悪化していないか)
・症状が6カ月以上長期化していないか(はっきりと症状が現れていない期間も含む)
・統合失調症と抑うつ状態やうつ病、躁うつ病が併発していないか
・薬による症状の可能性はないか
・自閉症スペクトラム症や小児期のコミュニケーション障害の病歴はないか
上記の基準をもとに問診を行い、さらに必要な検査や問診がある場合は追加し、所見をあわせ複合的な判断で診断が下されます。
治療は薬物治療と心理社会的治療の組み合わせが原則です。薬物療法なしでは回復が難しく、心理社会的な治療と組み合わせることで治療効果が相乗的に上がることが示唆されています。
治療薬には抗精神病薬が使われます。
抗精神病薬は
・抗精神病作用:妄想や幻覚などの統合失調症の陽性症状に働きかける
・鎮静催眠作用:不眠や興奮、不安や衝動などを抑える
・精神賦活作用:感情障害や意欲低下などの統合失調症の陰性症状を抑える
などの効果があり、さらに定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬に分けられます。症状や副作用などが考慮され、患者の状態に適したものが処方されるでしょう。
また、抗精神病薬には、統合失調症の再発防止の効果が期待できます。そのため、症状が改善した後も継続して服用することが多くみられます。
副作用も一般的な薬物に起こりうるもの(肝臓や腎臓への負担、口の渇き、眠気など)で治まることがほとんどであり、比較的安全性が高い薬とされています。
十数年超える継続服用でも問題ないとされているので、自己判断で服用を中止せず、医師の指示通り薬を飲み続けることが大切です。
ただし、まれに高熱や筋硬直、自律神経の不調などが現れることもあるので、不安があるときはすぐに担当医に相談しましょう。
統合失調症になると、会社や学校、家庭などの生活に大きく影響します。
統合失調症の治療は、症状を抑えるとともに、社会生活でトラブルが起こらないようにリハビリをすることが重要です。
リハビリの内容は症状や家庭環境、職場の環境などでそれぞれ変わってきますが、心理教育や認知行動療法を中心に進められ、認知行動療法をもとに作られた生活技能訓練、仕事の能力を向上し復帰を助ける作業療法やデイケアなどを複合的に利用しながら、社会復帰を目指していきます。
その他、統合失調症の回復には家族からの支えも必要です。統合失調症のつらさをできるかぎり理解するように努め、批判的な接し方をしないように心がけてください。また、統合失調症の家族の中には、自分を責めてしまう人も少なくありません。家族自身の心の健康にも注意するようにしましょう。
一般的に発病から治療開始までの期間が平均で約1年あるといわれています。これが短ければ短いほど回復の経過が早く、予後が良いといわれています。また、治療後に重度な障害が残ってしまう可能性は1~2割程度とされ、5~6割は寛解または軽い障害が残る程度まで回復すると考えられています。
治療薬や心理社会的ケアの研究が現在も精力的に進められているため、今後はさらに治癒の経過や予後が良くなることが期待できるでしょう。
今まで見てきたように、統合失調症は、早期に正しく治療をすれば高い確率で日常生活にもどれるとされています。医師と相談しながら、適切な治療を続けましょう。また、統合失調症の家族は、病院や保健所、精神福祉センターなどを利用しながら、家族自身の心の健康を保てるように心がけてください。不安があるときは、まず問い合わせてみることをおすすめします。