記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/1/31
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
いつまでも健康でいたい、と誰しも思います。しかし、いつがんになるかわからない不安は常にあります。どうしてがんになるのか? 防ぐ方法は?
がんについては、まだ分かっていないところもたくさんありますが、がんのおもな要因とその予防法についてお伝えします。
原因は直射日光にあり!?日光にさらされることは、皮膚がんに大きな関連性があります。外出しているときは保護する服や帽子を着用するのが最善です。日焼け止めも非常に重要です。肌を保護し、皮膚がんを防ぐのに役立ちます。
露出した皮膚(顔や手など)に日焼け止めを1年中使用するようにしてください。 少なくともSPF 15とUVAとUVBの両方の光を遮る広スペクトルの日焼け止めを選んでください。
メラニンは私たちの皮膚を保護し、またビタミンDを生成します。体が紫外線から自身を守るとき、肌が暗色化、褐色化します。過度に日光にさらされると紫外線は内側の皮膚層に届きます。 これが一般にいう日焼けです。 これにより、皮膚細胞が死亡・損傷したり、発がんする可能性があります。
胸の健康のための時間をとる! 乳がんは、女性にとって最も一般的な死亡原因のひとつです。 50歳から74歳までの間に、乳がんのスクリーニングには2年ごとにマンモグラフィーを撮影する必要があります。
乳がんの家族歴など、乳がんのリスク要因を持つ女性は、より頻繁に乳房X線撮影を受ける必要があるか、または早期に乳がん検査を開始する必要があります。
最新の乳がん症例のほぼ半数が65歳以上の女性です。50歳から74歳までの女性は、2年ごとにマンモグラムを受ける必要があります。場合によっては、より頻繁にマンモグラムを受けることが推奨されます。
定期的に子宮頸部細胞診を受ける! 医師がもっと頻繁に必要とすることをすすめない限り、子宮頸部細胞診を以下の頻度で受けるべきです。
・21歳から65歳までは3年ごと
・30歳から65歳の者で子宮頸部細胞診を少なくしたい場合は、5年ごとに子宮頸部細胞診とヒトパピロマウイルス(HPV)検査を組み合わせることを医師に相談する
特定の要因は、子宮頸がんのリスクを高くするか低くします。子宮頸部細胞診がどのくらいの頻度で必要かを推薦する際に、医師はこれらを考慮します。
65歳以上の場合は、子宮頸部細胞診が必要な頻度について医師に相談してください。 定期的に子宮頸部細胞診を受けていて、結果が正常値であった場合、検査を続ける必要はないかもしれません。
子宮摘出術で子宮頸部を摘出した場合は、子宮頸部細胞診がどのくらいの頻度で必要か、医師に相談してください。高悪性度の前がん病変や子宮頸がんを経験したことがない人は、子宮頸部細胞診がどのくらい必要なのか医師にご相談ください。
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、ウイルスの総称です。
HPVにはさまざまなタイプがあり、それらが引き起こしうる症状に応じて、危険性の高いウィルスもしくは低いウィルスのいずれかに分類されます。
たとえば、HPVの中にはいぼやたこができるものがあります。そのほか、子宮頸がんと関わりがあるものもあります。
99%の症例において、子宮頸がんは、危険性の高いHPVに感染した結果発症しています。多くの場合、HPVへの感染に自覚症状がありません。HPVには100種類以上あり、そのうち約40種類が陰部に感染します。リスクの高いタイプのHPVに感染すると、異常組織の増殖だけでなく、子宮頸がんの発症につながるほかの細胞変異を引き起こすことがあります。
そのほかのタイプのHPVに感染すると、
・生殖器疣贅:生殖器や肛門部、あるいはその周辺にできる腫瘍もしくは皮膚の変化
・皮膚のいぼもしくはたこ
・膣がんもしくは外陰部がん(ただし、これらはあまりないタイプのがんです)
・肛門がんまたは陰茎のがん
・頭部や頸部のがんの一部
・喉頭乳頭腫(喉頭もしくは声帯のいぼ) などを引き起こすことがあります
子宮頸部検査は、がん化する前に子宮頸部の異常な細胞を見つけ出す方法です。検査で見つかった子宮頸部異常を早期に発見し、治療することで、子宮頸がんの4分の3を予防できることがわかっています。
定期的に子宮頸部検査を受けることは、子宮頸部の異常な細胞変化を見つけるのに最適な方法です。したがって、HPVワクチンを受けた子であっても、25歳になったら定期的に子宮頸部の検査を受診することが欠かせません。
がんを予防するための確実な方法はありませんが、そのリスクを軽減することはできます。
以下のようなものは、がんのリスクを下げるのに役立ちます。
・健康でバランスの取れた食事を食べる
・健康的な体重を維持する
・体をよく動かす
・飲酒量を減らす
・禁煙する
・日焼けから肌を守る
・自分の体を知る
がんの予防に関連するさまざまな食べ物や食生活に関する話題は、頻繁にニュースで取り上げられます。これは、多くの研究が食生活とがんの関係に集中しているためです。しかし、食生活とがんとの関連性を研究することは容易ではありません。というのも、さまざまな要因が関係していることや、がんの進行に数年かかるためです。
がんの発症を防ぐことができる唯一の食べ物やサプリメントはありません。全体として、特定の食品群(特定の食品、ビタミンまたは栄養素ではなく)を食べることとがんのリスクを低下させることの間に関連があることが研究によって判明しています。
健康でバランスの取れた食生活を心がけると、がん発症のリスクを低下させることができます。以下のような食事を摂るようにしてみてください。
・果物や野菜
・パン、米、ジャガイモ、パスタ、そのほかのでんぷん質の食べ物(食物繊維が多く含まれるので、全粒の食品を選ぶとよい )
・肉、魚、卵、豆、そのほかの乳製品以外のタンパク質
・牛乳や乳製品
・ケーキやチップス、ビスケットなど、脂肪分や糖分が多い食べ物や飲み物は控えめに
健康でバランスの取れた食事により、体が必要とする栄養素をすべて摂ることができます。
十分な食物繊維を摂ると、大腸のがんにかかるリスクが低下することがはっきりわかっています。繊維が多い食事は、腸の健康を保ち、便秘の予防に役立ちます。
食物繊維が豊富な食品として、全粒粉のパスタ、パン、朝食用シリアル、米があります。豆、果物、野菜も、繊維質を摂りやすい食べ物です。
肉は、タンパク質、ビタミン、鉄、亜鉛などのミネラルを豊富に含む食品です。しかし、赤身の肉や加工肉と大腸のがんにかかるリスクとの間には関連がありそうだ、ということも明らかになっています。こうした肉をたくさん食べる人は、あまり食べない人よりも大腸のがんにかかるリスクが高くなります。
牛肉、豚肉、ラム肉はすべて赤身です。加工肉にはベーコン、ソーセージ、サラミ、ハムなどがあります。
1日あたり90グラム以上の赤身または加工肉(ローストビーフ、ラム肉、または豚肉の薄切りを3枚[1枚分はスライスされたパン半分ぐらいの大きさ]分に相当)食べているとしたら、 70グラムまで減らすことをお勧めします。
抗酸化物質サプリメントによくみられるベータカロテンは、喫煙者や職場でアスベストにさらされている人の肺がんのリスクを高めることが判明しています。大量のベータカロテンサプリメントを服用すると、ほかのがんリスクも高める可能性があります。
肥満だと、たとえば以下のようながんのリスクが高まる可能性があります。
・大腸のがん
・膵臓がん
・食道がん
・乳がん(閉経後の女性の場合)
・子宮がん
・腎臓がん
健康的な体重になると、がんを発症するリスクを減らすことができます。 BMI(要解説)に基づく計算をすることで、健康的な体重かどうかを知ることができます。
体をよく動かしていると、腸や乳房のがん、子宮内膜がん(子宮の内側にできるがん)のリスクを減らすことができることが証明されています。体を動かすことがこれらのがんのリスクをどのように減少させるかははっきりとわかっていないものの、定期的な運動がホルモンのレベルを正常に保つのに役立つことが研究で明らかになっています。ホルモンのレベルが高いと、がんのリスクが高まる可能性があります。
また、体を動かすことは健康的な体重維持にも役立つため、がんのリスクを軽減することにもつながります。
飲酒は、以下のようながんのリスクを高めることがわかっています:
・口腔がん
・咽頭がんおよび喉頭がん
・食道がん
・男性の大腸がん(結腸または直腸のがん)
・乳がん
女性の大腸がんや肝臓がんは、おそらく飲酒以外の要因が原因であると思われます。
また、週のほとんどで酒を飲んでいるなら、健康へのリスクを減らすために以下のことをお勧めします。
・男女とも、1週間あたり14単位以上の定期的な飲酒をしない
・1週間あたり14単位以上飲む場合は、3日以上間隔を空ける
ドリンクチェッカーを使用すると、さまざまなアルコール飲料が何単位かを調べることができます。
禁煙すると、がんの発症リスクが大幅に軽減されます。禁煙が早ければ早いほどその効果は大きいものの、禁煙が遅すぎるということはまったくありません。30歳で禁煙する人は、タバコを吸わない人と同じくらい長生きしますが、50歳で禁煙する人でさえ、タバコによるダメージを半減させることができるのです。
日焼けしないよう日光に気をつけることは、皮膚がんを予防する上で重要です。以下のことに気をつけましょう。
・午前11時から午後3時までは日陰で過ごす
・絶対に日焼けしないようにする
・Tシャツ、帽子、サングラスで体を覆う
・子どもが日焼けしないよう気をつける
・SPF(紫外線防御指数)15以上の日焼け止めを使う
ほくろやそばかすに気をつけてください。少しでも変わった場合(例えば、今までより大きくなったり、出血したりする場合)は、がんの初期症状である可能性があるので、GP(要解説)を確認してください。皮膚がんは早期に発見されればされるほど治療が容易になるので、できるだけ早くGPを参照してください。
健康な骨の形成に欠かせないビタミンDを作り出すために、肌に日光をあてることが必要です。
成人は、50歳になったら結腸直腸がんを検査するべきか医師に尋ねるべきです。リスクファクターや家族の病歴に応じ、医師は他の種類のがんを確認することができます。
健康スクリーニングは、毎年の健診に取って代わるものです。 すべての人が同じ検査を受けるのではなく、適切なものだけが行われます。 危険因子及び合った検査方法について、医師に相談してください。
自分の体を知り、腫れ物や原因がわからない出血といったがんの隠れた兆候に気づくこと、そして、こうした兆候が深刻かどうかについてアドバイスを受けることは大切です。やはり、体に良くないことはがんに限らずほかの病気にもつながります。
常に体と心のケアを大事に生活習慣に心がけましょう。