記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2017/8/25
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
ひと言で斜視と言っても、さまざまな種類があり、人によって程度の差があります。中には、斜視眼が切り替わるものもあり、それぞれに対応した治療法を医師と話し合う必要があるでしょう。斜視のいろいろな治療法をご紹介します。
斜視になると、そこから弱視や両眼視異常につながることがありますので、早期発見、早期治療に努めることが大切です。
早めに眼科医にかかり、原因を確かめ、治療方針を立てましょう。現在、手術は最終手段とするのが主流であり、他に有効な治療法がないか、さまざまな方法が検討されます。
最適な治療法を選択するにあたり、原因はもちろん、年齢や斜視の種類の他、手術に耐えられるかどうかなどが考慮され、もっとも適切な治療法が選ばれます。
斜視が片側だけに起こっている場合は、放っておくと弱視になる可能性があります。この場合、治療はアイパッチなどで正常な眼を遮蔽し、斜視の眼をなるべく多く使わせることで機能の発達を促すことになります。
交代性斜視だった場合、弱視にはなりにくいです。しかし、両目の視機能の発達が妨げられるため、2歳前には手術を検討するべきでしょう。
また、斜視の原因が脳の血管異常だった場合は、その原因を取り除く治療を行なうことで、斜視自体も改善されることがあります。同様に、体の筋肉に異常をきたす疾患を持っていた場合は、その治療を行なうことで目の筋肉異常も改善され、斜視が治癒することがあります。
なお、子供は目でモノを見る機能が発達する大切な時期のため、斜視の矯正より弱視の治療をすることが重要と考えられています。
いずれの治療を行なうにせよ、手術に関しては担当の医師と十分に相談のうえで決定しましょう。
まず、斜視の角度を精密に測定します。そのうえで目を動かす筋肉(外眼筋)を調整して眼を何ミリずらせばよいかを決定します。
手術は、ひとつの筋肉につき30分程度で完了します。大人の場合は点眼麻酔のみの局所麻酔となり、痛みを感じることもほとんどないでしょう。子供の場合は手術中に動く可能性があるため、全身麻酔となります。
手術は、眼球についている筋肉の作用を「強める」、もしくは「弱める」ことで、眼球の位置を正常にすることが目標となります。そのために、筋肉を眼球から一度切り離して縫いつけ直したり、筋肉自体を短く切除するといった施術が行なわれます。
目への負担が大きな手術となるので、終了後も定期的な検査をしっかり受けて、ケアすることが大切です。
前述の、斜視眼でない方の眼を遮閉する方法以外では、以下のようなものがあります。
強い遠視が原因で起こる調節性内斜視やの場合は、遠視を眼鏡で矯正することで、斜視を矯正することができます。遠視の程度が強いと弱視になる可能性があるため、まず遠視を矯正することが調節性内斜視の第一の治療となります。
プリズムメガネを使って、正常眼と同じ見え方ができるようにする方法です。つまり、斜視自体を直す方法ではありませんが、両眼視できるように矯正します。ただし、これまでしていなかった両眼視を強制される状態になるため、目の疲労を感じることがあります。
食中毒などを起こすボツリヌス菌を、斜視の治療に使います。ボツリヌス毒素を痙攣している筋に注射することで麻痺させ、痙攣を止めて眼位を矯正します。ただし、この方法は、数ヵ月ごとに繰り返し行なう必要があります。
斜視の程度やタイプによっては、眼を寄せるなど、両眼視の訓練による改善を目指します。
術後すぐは、目が真っ赤に充血しますが、これは数週間すれば元に戻るでしょう。
起こりうるリスクとしてもっとも可能性が高いものは、手術後、時間が経過すると元の斜視に戻ってしまうことです。こうした場合は、再手術となることがあります。
他には、手術用の針が眼球に穴を開けてしまったり、術後に縫合糸がすぐに切れてしまったりといったことがまれに起こります。
また、中には過矯正となって、モノが2重に見えることがあります。再手術するかどうかなど、その後の対応に関しては医師との相談になりますが、多くは時間とともに改善していくといわれています。
斜視を治療するときは、目という非常にデリケートな部位を触ることになります。手術以外にも様々な治療方法があり、状況によって適した方法が違います。どのように治療するか、眼科医とよく相談して決めましょう。