糖尿病を発症する原因にはどんなものがある?

2017/8/29 記事改定日: 2018/3/7
記事改定回数:2回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

「糖尿病ってよく聞くけど、どんな病気なのかよくわからない」。生活習慣病のひとつとして知られる「糖尿病」ですが、名前は聞いたことがあっても、どのような病気なのか、また、どうして糖尿病になってしまうのかはご存じない方も多いのではないでしょうか。この記事では、糖尿病になる原因を中心に、治療法についても解説します。

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糖尿病とは

糖尿病とは、すい臓で作られるインスリンが働かなくなったり(インスリン抵抗性)、インスリンが不足したりしたために、血糖値(血液に含まれる糖の濃度)が慢性的に高い状態が続く病気です。

血糖値が高い状態が続くと、血液中に含まれる糖分が全身をめぐって血管を傷つけます。細い血管が傷つくと、三大合併症(糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害)を、太い血管が傷つくと壊死、脳梗塞、心筋梗塞を発症する恐れがあります。

【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成】
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-048.html
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-04-004.html

糖尿病の原因

糖尿病にはいくつかのタイプがあります。代表的な糖尿病として、1型糖尿病と2型糖尿病があります。

1型糖尿病

1型糖尿病は、自己免疫疾患(本来、病気に感染しないように身を守るはずの免疫機構が、インスリンを作るすい臓のβ細胞を攻撃して破壊してしまう状態)や遺伝的な要因、ウイルス感染などが原因で発症します。

2型糖尿病

2型糖尿病は、遺伝的な原因で発症することもありますが、多くの場合、肥満や脂っこい食べ物の摂りすぎ、運動不足といった生活習慣の乱れが原因で発症することがほとんどです。また、飲酒や喫煙、加齢やストレスなども、発症の原因と考えられています。

2型糖尿病を発症すると、インスリンの働きが悪くなり(インスリン抵抗性)ます。自覚症状がないため、健康診断の血液検査で指摘されて初めて気づくことが多いです。進行するとすい臓からインスリンが分泌されにくくなります(インスリン分泌低下)。

上記のほかに、妊娠中に発症する「妊娠糖尿病」や、ほかの病気や薬が原因で発症する糖尿病もあります。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発症する糖代謝異常です(妊娠前から糖尿病を発症している場合は、妊娠糖尿病ではありません)。

妊娠糖尿病は、妊娠期のホルモン変化によって発症すると言われています。妊娠後期になると、胎盤から分泌されるホルモンの影響で、インスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」が起こるため、血糖値が高くなりやすいのです。

このため、一部の人はインスリン抵抗性に十分なインスリンをつくることができなくなってしまい、妊娠糖尿病になってしまうと考えられています。妊娠糖尿病も肥満との関連が指摘され、妊娠期に体重が増えすぎるのが要因とされています。

ほかの病気が原因で発症する糖尿病

すでに発症している病気が原因で、糖尿病を発症することがあります。糖尿病を併発しやすい病気として、すい炎やクッシング症候群、慢性肝炎や肝硬変などがあります。

すい臓はインスリンを分泌する部位なので、インスリンを分泌する働きを持つ細胞(β細胞)が破壊されると糖尿病を発症します。
また、クッシング症候群はコルチゾールというホルモンが、必要以上に分泌されたのが原因で発症する病気です。コルチゾールは血糖値を上げる効果があるため、糖尿病の症状が出てきます。
そして、肝臓の働きが低下して糖を取り込む働きが低下すると、血糖値が上がって糖尿病のリスクが高くなります。

薬が原因で発症する糖尿病

ステロイド剤に含まれるグルココルチコイドや、C型肝炎の治療で使われるインターフェロンなどが原因で、糖尿病を発症することがあります。

グルココルチコイドは血糖を上げる働きを持つホルモンなので、血糖値が上昇して糖尿病を発症することがあります。

また、免疫力を高めるインターフェロンは、副作用で自己免疫疾患をもたらすことがあります。自己免疫でインスリンを分泌するβ細胞を破壊してしまうと、糖尿病を発症することがあります。

発症した場合の治療法

1型糖尿病を発症した場合、毎日インスリンを自分で注射して、血糖値をコントロールする治療が行われます。一方、2型糖尿病の場合は、食事療法と運動療法で治療を始めるのが一般的です。

食事療法

基本的に「過食を避け、栄養バランスのとれた規則正しい食事をする」ことが大切です。また、合併症を防ぐために、塩分やコレステロール、飽和脂肪酸を多く含んだ食べ物を控えるのが望ましいとされています。
ただし、糖尿病だからといって、食べてはいけないものはありません。食べすぎないよう気をつければ、揚げ物やお菓子などを食べても大丈夫です。

運動療法

運動療法では、できれば毎日(少なくとも週に3~5回)、ややきついと感じる程度の有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)を20~60分程度行うことが勧められます。

食事療法や運動療法で効果がみられなかった場合は、経口血糖降下薬やインスリン治療といった薬物療法も行います。

【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成】
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-002.html
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-004.html
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-05-005.html

おわりに:血糖値が気になり始めたら、食事や運動を見直しから始めよう

糖尿病は血糖値の上昇が原因で発症します。1型糖尿病のように、自己免疫疾患やウイルスなどが原因で発症するものは予防が難しいですが、2型糖尿病は生活習慣が原因であることが多いため、発症を予防することができます。
糖尿病を発症すると、さまざまな合併症を引き起こす恐れがあります。健康診断などで血糖値が高いと指摘されたら、食事を見直したり、運動を習慣づけたりして、予防に努めましょう。

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