記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/2/7
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
更年期障害の治療薬、「ホルモン補充療法(HRT)」。
多くの病院やクリニックで採用されている治療法ですが、「HRTは太る」「効果がない」といったウワサもちらほら。
「更年期障害はツラいけど、なんかコワくて踏み出せない・・・」
という人に向けて、HRTのウソ・ホントをまとめてご紹介します!
ホルモン補充療法(HRT)は、更年期によって引き起こされるホルモンエストロゲンおよびプロゲステロンの低下を補い、更年期の症状を緩和する効果がある治療法です。
健康な骨の発達にとって重要なエストロゲンを補うため、骨粗鬆症予防の効果もあります。
HRTのメリットは以下のとおりです。
・ホットフラッシュを緩和する
・膣乾燥、尿漏れ、尿路感染の頻発を軽減する
・性的欲求を改善する
・骨粗鬆症に関連して起こる骨折の危険性を減らす
・大腸がんの危険性を減らす
しかしながら、以下の病気を引き起こす確率を少し高めるというデメリットもあります。
・乳がん
・卵巣がん
・血栓症(深部静脈血栓症)
・脳卒中
2000~2004年の間で実施された多数の医学研究ではHRTによる健康リスクが取り上げられ、HRT治療を支持しない女性もいました。
リスクがあるのは事実ですが、現在、ほとんどの専門家は「HRTを5年以内の短期間で使用した場合、その利益はリスクを上回る」と考えています。
HRTでの治療に興味がある人は、まずHRTの詳しい治療法やメリット・デメリットについて医師から説明を受けるようにしてください。
基本的にHRTは、慣れるために3ヵ月治療を続けることを推奨しています。
更年期障害になって2年以内で、まだ閉経を迎えていないの女性の場合は周期的HRTが、1年間月経を迎えていない場合は連続的HRTが一般的です。
なお、下記に該当する人は、治療前に更年期障害の専門医の診察を受け、自分に適した治療法かアドバイスを受けることを推奨します。
・乳がんや子宮がんなどのホルモン依存性がん患者
・狭心症や心臓発作などの血液が凝固状態の人
・45歳以下(骨を保護する観点からHRT治療はおすすめしません)
以下、HRTに関するよくある誤解をご紹介します。
HRT治療を受けるかどうか、決定するうえでの指針になるでしょう。
「HRTを受けると体重が増える」というイメージを持つ女性は多いかと思いますが、この主張には根拠がありません。
まず、女性はHRTを受けているかどうかに関わらず、更年期の周辺で少し体重が増える傾向にあります。これは定期的な運動や健康的な食事によって改善できることです。
HRTには50種類以上の異なるタイプがあります。錠剤、パッチ、ゲルなどさまざまな方法があるので、それぞれ試して自分に適した方法を見つけてください。
HRT中でも妊娠します。
HRTは避妊薬ではありません。50歳未満または50歳になってから1年経っていない場合、閉経の後2年間は避妊薬を使い続ける必要があります。
これは必ずしも事実ではありません。
<子宮全摘出術を受けている場合>
エストロゲンのみのHRTが最も適しています。
エストロゲンとプロゲステロンを含むHRTを併用すると、乳がんになるリスクを高める可能性があります。
<部分的な子宮摘出術を受けている場合>
まだ子宮内膜があるかもしれません。このため、HRTを併用するべきです。
「大豆などを用いた薬草療法は天然のエストロゲンが含まれているため効果がある」という人もいますが、HRTも主にこれらの植物エストロゲンに由来します。
なお、薬草療法などの補完的治療が有効だという医学的証拠はありません。むしろ副作用をもたらし、ほかの治療を妨害する可能性があります。
更年期障害のほかの治療法として、漢方があります。
また、乳がん、脳卒中、血栓などを経験したことがある場合などHRTを受けることができない女性は抗うつ剤が推奨されることもあります。
検討している場合は、医師や専門家に相談し、どんなメリットとデメリットがあるか尋ねてください。
ホルモン補充療法(HRT)へのギモンは解消したでしょうか?HRTにデメリットがあるのは事実ですが、根拠のないウワサも多数。HRTは更年期障害のツラい症状を改善してくれる頼れる治療法でもあります!「やってみようかな?」とお考えの人は、病院で相談してみてくださいね。