記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/29
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病の治療は合併症の治療であると言われるほど、糖尿病の実害として怖いのは合併症とされています。中でも頻度が高く、なおかつ怖いのは糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症の三大合併症です。これらの直接の要因となっている障害や、発症したときの症状などを見ていきましょう。
合併症とは、何かの病気が原因となって起こる別の病気や、手術や検査などが原因となって起こる何らかの医学的問題のことです。例えば、糖尿病であれば、高血糖が続くことによって起こる血管障害(動脈硬化や脳梗塞など)が合併症であり、血管障害は糖尿病の合併症で最も多いといわれています。
血糖コントロールがうまくできずに高血糖状態が続くと、血管が詰まりやすくなったり傷つきやすくなることで血管のダメージが蓄積し、血管障害が起こります。血管障害が起こり血流が阻害されると、栄養分を体の各器官や臓器にきちんと供給できなくなるため、全身に様々な不具合が生じてくるのです。
動脈硬化や網膜症、神経障害、腎症、易感染状態などは代表的な合併症であり、中でも、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症は、糖尿病の三大合併症と呼ばれています。下記で詳しく見ていきましょう。
発症頻度が最も高く、症状も早期に現れるのが特徴です。長く血糖値が高い状態が続くと、末梢神経が傷害されて手足の先に痛みやしびれが生じたり、心臓や胃腸の働きをつかさどる自律神経にも障害が生じます。他にも、細い血管が詰まって部分的に神経が死滅するといったことが、気づかないうちに徐々に進行します。
次第に、足の裏や指先に違和感やしびれを感じたり、足がつったりこむら返りが起こるようになります。手に症状が現れることもありますが、足よりも軽症の場合が多いようです。
さらに障害が進行して神経の死滅が進むと、今まで感じていた違和感や痛みが弱くなったり、なくなったと感じることがあります。この変化は症状が改善したとは限らず、痛みを感じないところまで症状が進行してしまった危険な状態の可能性もあるので、注意が必要です。
網膜の血管がもろくなり出血してしまう病気が糖尿病性網膜症です。悪化すると失明の危険もあります。
糖尿病の発症から、糖尿病網膜症の発症までは、5年以上はかかるといわれているので、発症したからといって、糖尿病性神経障害と同様すぐに症状が現れるわけではありません。自覚症状が現れるまで知らぬ間に進行するため、とても怖い合併症といえるでしょう。
そして、進行した結果、増殖網膜症にまで至ることもあり最終的に失明する危険性があります。
高血糖が長く続いたために腎臓の糸球体という尿をろ過する部位で細血管が障害されるために起こる合併症で、むくみなどの自覚症状が現れた頃には、かなり進行している場合が多いです。
糖尿病になって10年以上経過する頃から尿にタンパクが入り始め、腎機能が悪化してくると体にむくみが出始めます。
さらに悪化すると腎不全になり、乏尿や無尿、血尿、むくみ、疲れやすい、息切れなどの症状が現れてきます。
これが典型的な経過であり、現在では透析療法を受ける患者さんの原因・第1位が糖尿病腎症となっています。
血糖値が高く、血糖コントロールに気を使わないといけない状態でも、糖尿病はそれ自体の自覚症状がないことが多く、なかなか治療に意識を向けられない人が多いようです。
しかし、上記のように、合併症は静かに進行します。血糖コントロールは万全に行なうようにしましょう。