若年性更年期障害の原因と治療で心がけること

2021/11/11

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

ほてりや汗、イライラ、不安などの更年期障害の症状は、20代から30代に起こることもあります。このような、若い世代に起こる更年期障害を若年性更年期障害と呼ぶことがありますが、何が原因でどのように治療、対策すればいいのでしょうか。
ここでは、若年性更年期障害の原因と治療方法、自分でできる対策について、更年期障害の違いもあわせて解説します。

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更年期障害と若年性更年期障害

更年期とは、閉経(月経が来ない状態が1年以上続くこと)をはさんだ前後5年程度の期間のことです。更年期に入ると、加齢による「卵巣の機能低下」と「卵胞の減少」により月経周期や経血量にも変化が起こり、卵胞がなくなると閉経をむかえることになります。更年期障害による症状は、加齢による卵巣の機能低下と卵胞の減少により、女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで引き起こされます。

更年期障害は、閉経前後の女性であれば誰にでも訪れる可能性のあるものです。閉経は、平均的には50歳くらいに訪れますが、早い人で40代前半、遅い人で50代後半というように、訪れる時期には個人差があります。

更年期障害では、ほてり、月経周期の乱れや月経困難、過多月経や過少月経、不安やイライラ、抑うつ状態などの多彩な症状が2〜5年続くのが一般的です。ただし、不調をほとんど感じない、毎日の生活が立ち行かないくらい重い症状がある、その日によって症状が違うなど、症状にも個人差があります。

一方、30代から40代半ばの女性でも、女性ホルモンの乱れから更年期障害に似た症状が現れることがあります。明確な定義はありませんが、こうした症状の総称が「若年性更年期障害」と呼ばれています。

なお、40歳未満に自然閉経を迎えることを早発卵巣不全(POF)といいますが、これは一般に言われる若年性更年期障害とは異なり、先天異常や手術操作などにより卵胞が実際に枯渇することで生じます。若年性更年期障害はホルモン分泌の乱れから生じるため、卵胞は通常枯渇していません。

若年性更年期障害の原因

更年期障害の症状は、閉経にともなう「女性ホルモン(エストロゲン)の減少」により引き起こされます。一方、若年性更年期障害は、ストレスや無理なダイエット、過度の運動、食生活を含めた不規則な生活が原因でホルモン分泌が乱れ、エストロゲン分泌がうまくいかなくなることで起こると考えられています。

エストロゲンの分泌がうまくいかない状態になると、ほてりや、末端の手足の冷えや、突然の汗や気分の落ち込みなど、一般の更年期障害と同様の症状が現れます。若年性更年期障害では、倦怠感などの全般的な体の不調や、イライラや抑うつなどの精神症状、月経異常を訴える人が多いようです。また、若年性更年期障害の不調に悩まされた経験がある女性は、実際に更年期をむかえたときに症状が強く現れる場合があります。

最近は、さまざまな社会環境の変化により、睡眠習慣や食習慣が乱れたり、大きなストレスを抱えたりする女性が増えているといわれています。ほてりや手足の冷え、突然の汗や気分の落ち込みなどの変化に気づいたときは、まずは生活習慣を見直し、ゆっくり休む時間を作ってあげてください

ただし、更年期障害のような症状は、ほかの病気の兆候として起こっている場合もありますし、早期に専門的な治療が必要な場合もあります。心身の不調に気づいたとき、更年期かどうか不安に思う場合、日常生活が続けられないほどつらい症状が続く場合は、安易に自己判断せず婦人科などの医療機関を受診しましょう。

若年性更年期障害の治療方法

通常の更年期障害の治療では、症状の緩和と骨粗しょう症の予防を目的にホルモン補充療法(HRT)を行うことがあります。しかし、若年性更年期障害では、一般的には卵胞に著しい減少がなく、エストロゲンを分泌する能力も残っていることから、通常HRTは行われません。

病院の治療では、生活習慣の改善指導が行われ、必要に応じて症状緩和の薬や漢方薬が処方されます。また、1〜3回ほどホルモン剤を使って人工的に生理(月経)周期を作ることで、ホルモン分泌を整える方法も用いられます。

若年性更年期障害の治療で大切なことは、エストロゲンホルモン分泌が乱れる原因を取りのぞくことです。まずは、ストレスの原因を遠ざける、こまめにストレスを解消するなどのストレス対策を取り入れてください。食生活では、栄養バランスが整った食事を心がけ、過食、過度の食事制限、特定の食品に偏った食事に気をつけましょう。著しい体重減少には、とくに注意してください。喫煙や過度の飲酒もよくありませんので、禁煙や減煙に取り組み、飲酒量もきちんとコントロールしましょう。

また、適度な運動は若年性更年期障害の症状緩和に役立つこともありますが、過度の運動は症状を悪化させることがあるので注意が必要です。食事や運動に関しては、医師に相談し、適切な方法で生活を改善するようにしてください。

おわりに:生活習慣を見直し、必要に応じて医師に相談することが大切

若年性更年期障害の多くは、ストレスや生活習慣の乱れによるエストロゲンの減少によって引き起こされます。気になる症状に気づいたときは、まずはゆっくり休む時間を作り、生活習慣、食生活、運動習慣を見直しましょう。また、ストレスが原因のことも多いので、ストレス対策も忘れないようにしてください。

ただし、若年性更年期障害のなかには早期の治療が必要になる場合がありますし、別の病気が原因で症状が現れている場合もあります。間違ったセルフケアで症状が悪化することもあるので、症状が長く続く場合や日常生活に支障が出るほど症状がひどい場合、症状の原因がわからず不安な場合は、早めに婦人科などの医療機関を受診しましょう。産婦人科のかかりつけ医を作っておくと、ちょっとした変化の相談もしやすいです。

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