記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/2/7 記事改定日: 2018/4/25
記事改定回数:1回
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
「更年期障害」という言葉、一度は耳にしたことがありますよね。でも、具体的にどんな症状か知っていますか?
「もしかして?」と思う女性にも、パートナーが気になる男性にも、わかりやすく「更年期障害」の知識全般をお伝えします。
更年期とは女性の月経が終わりを迎える時期です。すべての女性に更年期は訪れますが、どんなことが起こるかは人によって異なります。「更年期が人生で一番不安定」という女性もいれば、全く気にならない女性もいます。
更年期は○○歳から始まる、という決まりはありません。平均すると52歳ですが、45〜55歳の間に更年期障害が起こることが多いです。症状は2〜5年続く傾向にあります。ただ、病気などの理由で閉経が早まってしまった場合は、20代や小児期で起きることがあります(「早発性卵巣不全(POF)」と言われています)。
更年期には、ホルモンレベルの変化により以下のような症状が現れます。
また、長期的には骨粗鬆症や循環器系疾患のリスクが増える傾向にあります。
加齢によって骨のミネラル量が減少したり、骨細胞の生成や置換が遅れたりすると、骨が弱くなります。この現象はすべての人に起こりますが、閉経後の女性の方が変化が速い傾向にあります。
実際、50歳以上で骨粗鬆症になる人の割合は、男性だと12人に1人の割合であるのに対し、女性だと3人に1人の割合になります。骨粗鬆症になると、特に手首の骨や股関節、背骨が折れる危険性が高くなります。
循環器系疾患とは、心臓発作や脳卒中を含む心臓や血管の疾患のことで、通常、動脈閉塞によって引き起こされます。60歳以上の女性の最も一般的な死亡原因で、閉経後に動脈閉塞になる可能性が高いという研究結果もあります。
閉経後は胸の形を維持するのが困難になるため、変形したり、乳房にでこぼこができやすくなることがあります。
女性の更年期障害の原因は、閉経に伴う女性ホルモンの減少が原因です。そのため、病院で行う更年期障害の治療は、女性ホルモンを補充するホルモン補充療法(HRT)と、様々な不快症状に対する対症療法が中心となります。
更年期障害を根本から解決するにはホルモン補充療法が必要です。これにより、骨粗鬆症を予防するだけでなく、更年期障害の症状を抑えるのに効果があります。ただ、ホルモン補充療法には副作用(乳癌や深部静脈血栓症(DVT)、脳卒中、心臓病などの病気を発症する危険性が高くなる)があるため、医師の指示に従って治療する必要があります。
対症療法としては、食生活の改善がおすすめです。大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンの中のエストロゲンと同様の働きをすることが知られており、更年期障害に特有の症状を改善に導くことがあります。豆腐やおから、納豆などの大豆製品を積極的に摂りましょう。また、イソフラボンが豊富に含まれたサプリメントを試してみるのもおすすめです。
更年期障害で減少するホルモンの一つに、エストロゲンがあります。エストロゲンは女性の性周期を司るだけではなく、体脂肪を燃焼させ、余分なコレステロールを排出する作用もあります。このため、エストロゲンが減少すると内臓脂肪の蓄積と高脂血症につながり、太りやすくなるのです。また、女性ホルモンの減少によって筋肉量が減り、基礎代謝が低下することも太りやすくなる原因のひとつです。
したがって、更年期のダイエットは、単に食べる量を減らしただけでは十分な成果を得られません。低カロリーでバランスの取れた食事を心がけるとともに、運動習慣を身に付けることが大切です。運動は、体に負担をかけずに確実に脂肪を燃焼させるウォーキングや水泳などの有酸素運動がおすすめです。
更年期障害の症状や始まる時期にはかなり個人差があるため、感じるつらさも人それぞれです。もしほかの人よりも症状が出ていても、更年期障害は身体の仕組みとして誰にでも起きることなので気にしないようにすることも大切です。ただし、症状が重すぎる場合や悪化した場合、骨粗鬆症のリスクが高いとみなされた場合は専門医に相談し、生活習慣を改善しながら、気長に治療に取り組みましょう。