記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/31 記事改定日: 2018/4/13
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高血圧と糖尿病には相互関係があることをご存知でしょうか。
糖尿病は高血圧を引き起こし、高血圧は糖尿病の合併症リスクを高めます。
この記事では、高血圧と糖尿病の関係性と予防対策について解説しています。いつまでも健康に過ごせるようにするための参考にしてください。
高血圧の患者数は、国内で約4,300万人といわれています。同じように糖尿病も、予備軍を含めると患者数2,050万人に上ります。
糖尿病の人は血圧が高くなりやすく、40~60パーセントが高血圧をあわせもっています。これは、糖尿病でない人の約2倍の頻度といわれています。また、糖尿病の人は年齢が若いうちから血圧が上がり始めることが多く、罹病期間が長い人が多いため、合併症が現れる頻度が高くなっています。
食事によって吸収されたブドウ糖は、膵臓から分泌されるインスリンによって血中から細胞内に取り込まれます。しかしインスリンの分泌量が足りず、効き目が悪くなると、血液中にブドウ糖が残り、慢性的に血糖値が高くなります。
高血糖の状態が続くと、様々な臓器に障害が生じます。
たとえば、腎臓で排泄されるはずの塩分がうまく排泄されずに高血圧の原因となります。そして、肝臓では中性脂肪がつくられ、脂肪肝のもとになります。血管では動脈硬化が促進されてしまいます。
近年、日本人にも肥満の人が増えてきていますが、肥満でもおなかに脂肪がたまる内臓脂肪型肥満(内臓脂肪蓄積)が動脈硬化を進行させる原因のひとつであることがわかってきました。
内臓脂肪が蓄積されると、糖尿病や高脂血症・高血圧などがおこりやすくなります。これらが重複すると、動脈硬化を進行させる危険が高まります。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-002.html
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-001.html
インスリンは、脂肪の合成を促し、脂肪が分解されて血中に放出されるのを妨げる働きがあります。このため、インスリンが不足している糖尿病の人は、脂肪の代謝が妨げられ、脂質異常症を発症しやすくなります。特に悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールが増加し、動脈硬化の原因となります。
動脈硬化が生じると、血管の内側の粘膜が硬く狭くなるため、血流が悪くなります。それを補うために血圧が上昇しやすくなってしまい、高血圧を引き起こしてしまうのです。
また、高血圧自体も動脈硬化を悪化させ、脂質異常症と相まってどんどん動脈硬化が進行するというスパイラルに陥ります。
糖尿病の人は、血圧がそれほど高くない軽い高血圧でも、積極的な治療が必要になります。それは、高血圧がそのまま進行すると、血管の中の壁が弾力性を失い傷ができ、壁にできた傷にLDLコレステロールなどが沈着すると、動脈硬化が促進されるからです。
糖尿病の人は健康な人よりも血管の壁が弱っているので、合併症のリスクが高まります。
また、肥満がなくメタボリックシンドロームの基準に当てはまらない場合でも、高血圧は多くの病気の原因になるといわれています。
糖尿病も高血圧も、どちらも症状のないまま進行します。そして、直接死につながる病気を引き起こします。
脳卒中は、脳の血管が破れたり詰まったりすることで発症します。特に問題となるのは、脳の血管の動脈硬化です。動脈硬化は血管を脆弱化させ、破裂や詰まりの原因となるのです。
糖尿病は動脈硬化を引き起こしますが、血管が脆弱した状態で血圧が上昇すると血管が破れたり詰まったりする可能性が高くなります。
糖尿病と高血圧は動脈硬化を引き起こしますが、心臓を栄養する冠動脈と呼ばれる血管に動脈硬化が生じると、血管が詰まり、心筋梗塞や狭心症の原因となります。
糖尿病がある人は、ない人に比べて2~4倍心筋梗塞や狭心症になりやすいといわれています。ここに高血圧が加わると、動脈硬化が更に進行し、心筋梗塞や狭心症のリスクは健康な人の6~7倍に上昇します。
腎臓は、血液中の老廃物をろ過して尿を生成する働きをします。この働きを効率よく行うために、腎臓には糸球体と呼ばれる細かい血管の塊が多く存在し、多くの血液が流れ込みます。
糖尿病によってこれらの腎臓の血管が動脈硬化を起こすと、ろ過機能が十分に働かず、老廃物や尿の排出が十分に行えなくなり、最終的には人工透析が必要となります。
また、腎臓の働きが悪くなって、水分や塩分が体にたまりやすくなると、血圧が高くなり、これが原因となって更に腎臓に負担がかかり、腎臓のダメージも多くなるというスパイラルに陥るのです。
高血圧と糖尿病の両方を罹患している人は多くいます。
現在、高血圧はACE阻害薬やARBと呼ばれるタイプのものを第一選択とされることが多いですが、中にはβブロッカーと呼ばれるタイプの降圧薬を使っている人もいます。
βブロッカーはインスリンを効きづらくすることが知られているだけでなく、糖尿病治療薬で最も注意するべき副作用である「低血糖の症状」をマスクする(隠してわかりにくくしてしまう)ことがあるのです。
低血糖時には、交感神経が刺激されて動悸や冷や汗などの症状が現れますが、βブロッカーはこれらの症状の出現を抑制する効果があります。低血糖は症状に気づいたら、速やかに適切な対処を行わなければ意識障害やけいれんなどの重篤な症状を引き起こす頃があり、βブロッカーによる症状のマスクは非常に危険です。また、低血糖からの回復を遅らせることもあります。
高血圧と糖尿病を別の病院で治療している場合には、必ず医師に薬の飲み合わせについて確認しましょう。
糖尿病も高血圧も「生活習慣病」といわれ、生活習慣の改善が最も効果的です。
塩分を摂り過ぎると、体内を流れる血液量が増加します。また、血管を収縮する物質(アンジオテンシンIIなど)に反応するレベルが高まり、血圧が上がってしまいます。
日本人の食塩摂取量は1日平均約11gで、アメリカ人の平均約6gと比べて、摂り過ぎといわれています。日本には、塩分の多いメニューがたくさんあります。食塩を1日10g未満、できれば6g未満に抑えましょう。
高血圧の大きな原因のひとつに肥満があります。肥満の人が減量すると、それだけで血圧が正常域まで下がることも珍しくありません。目安として、体重1kgの減量で約1mmHgの降圧効果が期待できます。
喫煙すると、血管が収縮し血圧が上がります。たばこ1本で血圧は約10mmHg(人によっては20~30mmHg)上昇し、その状態は喫煙後30分経っても継続しています。喫煙者は、一定の間隔で常に吸い続けていますので、血圧は低くなる間がありません。そのうえ、喫煙は、動脈硬化の進行を加速します。
適度な運動は、血管を広げ、インスリン抵抗性を改善し、血圧を下げる効果があります。1回60分、週3回の運動療法を3か月続けると、血圧は平均約10mmHg下がります。
運動の種類によっては、運動中に血圧が上がり過ぎる危険もありますので、医師の指示に従って進めましょう。
日常生活の中で感じるストレスも血圧を上げてしまいます。ストレスを発散する方法を見付けましょう。軽い運動はストレスを軽減します。
過度の飲酒は高血圧を悪化させます。
1日30mL(日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本、ワインなら200mL)以内ならよいされていますが、糖尿病がある場合は、この限りではありません。必ず医師に相談してください。
今まで見てきたように、糖尿病と高血圧は相互に悪影響をもたらす病気です。どちらも、命を縮める危険をはらんでいます。生活習慣を見直し、健康的な生活をしましょう。