記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
つかまり立ちを始めた赤ちゃんがころんでケガをしたとき、なんだか血が止まりにくいと感じたことはありませんか? それは血友病を疑ったほうがよいかもしれません。ここでは、血友病について解説します。
血友病は、出血が止まりにくい病気です。これには2種類あって、血液を止めるために血を固める凝固因子のうち、第VIII因子、あるいは第IX因子が欠乏している状態であり、前者を血友病A(第VIII因子欠乏症)、後者を血友病B(第IX因子欠乏症)と呼んで大別しています。
また、凝固因子が正常に働く度合いはパーセントで表し、健常者の数値は50~150%です。血友病患者の場合3段階に分かれており、1~5%が中等症型、5%以上が軽症型、1%未満が重症型となります。
血友病の多くは、生後6ヵ月程度経過した頃、ハイハイによって生じる膝や肘の皮下出血などで気づきます。つかまり立ちや歩行が始まると、転んだときの口内の出血が止まりづらくなったり、関節から出血したりします。関節からの出血は、繰り返すと、血友病性関節症をきたすことがあります。
通常、私たちの体に外傷があって出血したときは、「血小板」が血栓という血の塊をつくることで傷口をふさぎます。しかし、血栓だけでは不十分なため、さらに凝固因子を使うことで完全に止血が完了するのです。
この凝固因子には12種類あるのですが、どれが欠けても止血できません。そのうちの血液凝固第VIII因子、もしくは第IX因子に先天的な欠乏や変異(遺伝子の欠損、点変異など)があることで、出血が止まりにくい現象が起こるのです。
ただし、後天的な要因によって、第VIII(IX)因子活性が減ってしまう人もいます。
血友病が起こるのは、血液凝固因子の欠乏があるからです。そこで、治療は静脈注射を使って、正常な凝固因子を体の中に補充することで行なわれます。
投与のタイミングとして、出血時に注射する「出血時補充療法」と、定期的に注射する「定期補充療法」があります。
また、子供の患者に対して、運動会などのケガの可能性のあるイベントの前に、予防的に摂取させる方法もあります。
さらに、静脈注射を打つためのそれなりの手技が必要となりますが、自宅にて自分で注射を打つ方法もあります。
他には、クレオプレシピテートという治療薬も開発されています。ただし、この薬を保管するために-30℃の環境が必要なため、対応した冷凍庫を持っていることが条件となります。
出血の回数が多かったり、処置が遅れたりすると、血友病性関節症を発症することもありますから、自宅で、その場で対処できるようにしておくに越したことはありません。やはり、家庭で血液凝固因子を注射できるようにしておくことが重要です。
できるだけ早く注射を行なったあとは、動かないようにして、安静にすごすようにしてください。
ただし、腫れが大きかったり、関節の運動障害が出ているなどの症状があった場合は、かかりつけ医に連絡をとりましょう。
最近では治療技術も進み、定期的に治療を行なうことで、ふだんは特別に病気を意識することなく生活できるようにもなってきています。
あまり過保護にしすぎるのもよくありません。親の側で十分に緊急時の備えをしつつ、自由に体を動かせる時間をつくってあげましょう。