記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
氷を大量に食べてしまったり、土や石を食べてしまったりするのは、異食症という病気のサインかもしれません。
この記事では、異食症の原因や特徴、治療についてを解説していきます。早期発見・早期治療に役立ててください。
異食症は食品以外のものを食べたいと強く思うあるいは実際に食べてしまう摂食障害の一種です。
特に1~2歳の幼児と妊娠中の女性、知的障がいのある子供や成人に多く見られます。
異食症になると食べたくなるものの代表例は氷、土、粘土、剥がれた塗料などであり、少数ですが糊、髪の毛、タバコの灰、便などを欲することもあります。
非食品を食べることで細菌や毒性の成分などが体内に入ってしまい、以下のような症状が現われることがあります。
中でも血便が見られる場合は消化器官に潰瘍ができている可能性があるので、すぐに病院で診察を受けた方が良いでしょう。
異食症の原因には様々なものが挙げられますが、頻度の高いものは鉄分が不足することによる鉄欠乏性貧血、亜鉛欠乏などです。また、妊娠中の女性も一時的に異食症を呈することがありますが、これは妊娠の影響で鉄欠乏性貧血が生じるためと考えられています。
さらに、過度なストレスや精神発達遅滞、認知症などの精神的な変調や病気が原因となることもあり、鉤虫症などの寄生虫感染でも異食症を発症することも知られています。
異食症は下記のような場合に多いといわれています。
子供が好奇心のために食べ物以外のおもちゃなどを口に入れたり、大人でものどが渇いて氷が食べたくなったりすることがあるかもしれませんが、それが一時的なものであるならば異食症の可能性は低いでしょう。
ただし1ヶ月以上続く場合は異食症が疑われます。
長期間にわたり非食物を摂り続けると、鉛中毒、腸閉塞、歯や腸の損傷(岩石などの硬いものを食べることによる)、感染症などの原因になるのですぐに病院で治療を受けてください。
異食症の治療は、その原因となる病気や変調を改善することが大切です。
鉄欠乏性貧血や亜鉛不足による異食症の場合には、それらの補給を行えば症状も徐々に改善していきますが、完全に症状がなくなるまでに三か月ほどかかることもあります。
また、精神的な病気や変調が原因の場合には、異食症自体の治療は困難なケースが多いため、異食しやすいものを近くに置かない、定期的に周辺の環境を見直して異食するものを除くなどの対応が必要です。
異食症は、食べたものによっては胃炎や胃潰瘍、腸閉塞などの合併症を引き起こすことがあります。腹部症状が現れた場合には胃や腸に何らかのダメージが加わっている可能性がありますので、速やかに医療機関を受診して検査・治療を受けるようにしましょう。
妊娠中や幼児期に見られる異食症の場合、ほとんどは出産や成長と共に改善、完治するといわれています。
しかし、食品ではないものを食べることで消化器官が傷つき、毒などの有害な成分が体内に溜まる危険性があり、比較的無害な氷でも1ヶ月以上通常ではない量を食べ続けている場合は健康被害が出る可能性があります。
思い当たる行動が見られる場合は、できるだけ早めに医師の診察を受けましょう。