記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
子供の長引く鼻水が心配で病院に連れて行ったら、「蓄膿症」と診断されてしまった――というケースは少なくないようです。
では、もし子供が蓄膿症(慢性副鼻腔炎)になってしまったら、どうすればいいのでしょうか?治療法や対処法を解説していきます。
子供の蓄膿症の症状は、大人の場合とほとんど変わりません。鼻水や鼻づまり、頬や額の痛み(圧迫感)、味覚の低下といった症状が現れます。なお、大人と比べてこれらの症状は軽度の場合が多い傾向にあります。
頭蓋には鼻の穴につながる空洞がいくつかあります。これを副鼻腔と言い、代表的なものに頬の裏側にある上顎洞や額の裏側にある前額洞があります。
子供の頭痛で「どこが痛いの?」と尋ねたとき、おでこを押えたら副鼻腔に膿がたまって副鼻腔炎になっている可能性があるので注意しましょう。
風邪やアレルギーで鼻の粘膜が腫れると副鼻腔にたまった粘液が鼻の穴に流れる事ができず溜まってしまいます。
膿のようにドロッとした粘液に細菌が感染すると熱が出たりします。こうなると細菌を殺す抗生物質をしっかり飲まなければ治りません。鼻水や鼻詰まりが長引いて頭痛や熱がある時は早目に病院を受診して検査してもらいましょう。
蓄膿症は副鼻腔炎が慢性化したものです。子供の蓄膿症の治療に対しては薬物療法が行われるのが一般的です。
症状や原因に応じて、抗ヒスタミン薬や抗生物質が処方されますが、頭痛や痛みがひどい場合はアセトアミノフェンなどの鎮痛薬が処方されることもあります。
また、副鼻腔の洗浄や鼻水の吸引を行うこともあります。
症状が強い場合や上記の治療で効果がみられない場合は、内視鏡下副鼻腔手術が行われることがありますが、子供の蓄膿症は自然治癒するケースが多いため、基本的には15歳以降に行われます。
まず重要なのが、鼻水を溜め込まないようにすることです。こまめに鼻をかんだり、鼻うがいをしたりしましょう。また、蓄膿症の症状を和らげるためにおすすめなのが、温かい飲み物を飲んだり、ホットタオルを顔にあてたりすることです。水蒸気を吸い込むことによって鼻水の通りがよくなります。
子供の蓄膿症の原因としては、以下のものが考えられます。
子供は一度副鼻腔炎(蓄膿症)を発症すると、再発を繰り返すことがあります。
再発の原因は、副鼻腔炎の治療が完全ではなく、炎症が慢性化することです。副鼻腔炎は治療に長い時間がかかるため途中で治療を中断してしまうと、慢性的に副鼻腔が炎症を起こして荒れた状態となり、細菌やウイルスに感染しやすい状態となります。このため、鼻炎や咽頭炎などを発症すると副鼻腔炎を併発しやすくなります。
副鼻腔炎の再発を防ぐには、医師の指示通りに通院を続け、しっかり治しきることが大切です。そして、風邪が流行している時期には、マスクの着用・手洗いなどの感染対策を徹底することも重要です。
さらに、子供は上手く鼻をかめずに、鼻をすすったり強くかみすぎることがあります。
誤った鼻のかみ方は副鼻腔炎発症のリスクになるため、鼻水が出ている場合にはこまめにふき取り、必要であれば家庭用の吸引機を利用して鼻水を吸い取るようにしましょう。
子供の副鼻腔炎を予防するには、風邪を繰り返さないために睡眠をよくとり規則正しい生活をしましょう。おやつばかり食べないように注意し、ご飯をしっかり食べさせるように見守ってあけましょう。
またネブライザーを使い、気道や鼻腔の線毛運動を助ける薬剤(インタール®など)を吸入する事で風邪をひきにくくする事ができますので、処方された場合は医師の指示通りにしようしてください。
副鼻腔炎はアレルギーが原因のことがあります。アレルギーが原因の場合は、病院でアレルゲンの検査をして原因を特定してもらいましょう。
主なアレルゲンは、
です。
環境を整備してアレルゲンを減らすことができれば鼻炎も軽くなり、副鼻腔炎へのリスクを減らせます。
花粉などに対しては、飛散季節の前から病院で抗ヒスタミン薬を処方してもらうことをおすすめします。ダニやスギなどに対するアレルギー体質の改善に免疫療法もあるので、病院に相談しながら検討してみてください。
鼻炎の原因は一人ひとり違い、よく効く薬剤にも違いがあります。子供に最も適した治療を見つけるためには、かかりつけ医に続けて診てもらい、症状の経過を把握してもらうことが大切です。
子供の蓄膿症は、大人と比べて軽症の場合が多く、自然治癒率も比較的高いとされていますが、放置すると中耳炎などの他の症状を引き起こす恐れもあります。風邪がきっかけで蓄膿症になる場合も多いので、子供が風邪を引いたら早めに病院に連れて行くようにしましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。