狭心症と心筋梗塞と心不全の違いとは?移行することはあるの?

2017/9/14 記事改定日: 2020/6/1
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

狭心症、心筋梗塞、心不全は共に動脈硬化などが原因で発症する、日本人の死亡原因の上位を占める心臓疾患です。この3つの心臓疾患の原因や治療方法はどのような違いがあるのでしょうか。この記事それぞれの特徴をわかりやすく解説します。

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狭心症とは

多くの狭心症は、粥状動脈硬化(じゅくじょうどうみゃくこうか:コレステロールが血管の内部に溜まって粥状の物質ができること)によって、心臓に酸素や栄養を運ぶ冠動脈という血管が狭くなり、血流が悪くなることで起こるといわれています。動脈硬化が発生していなくても、動脈が痙攣して縮むことで狭心症が発生する場合もあります。

血の流れが悪くなると心筋に必要な酸素や栄養分が不足し、次のような症状などが生じますが、症状は数分間で治まることが多いです。

狭心症の症状
  • 突然の胸の痛み
  • 胸の圧迫感、締め付けられる感覚
  • 動悸や息切れ
狭心症の代表的な危険因子
  • 高血圧
  • 喫煙
  • 糖尿病
  • ストレス
  • 運動不足
  • コレステロール値が高い

心筋梗塞とは

心筋梗塞は冠動脈がが完全に閉塞してしまうことで発生します。
動脈硬化が悪化すると、冠動脈の粥状硬化部位にできていたプラークという塊が破綻して内容物が血管内に飛び出します。飛び出した内容物が冠動脈を完全に塞いだ結果、塞がれた部分より先に血液が流れなくなるため、心筋の細胞が壊死してしまうのです。

心筋梗塞は下記のような症状を伴う不整脈によって、突然死が起こる可能性がある病気です。

心筋梗塞の症状
  • 動悸や息切れ
  • 突然の激しい胸の痛み
  • 呼吸困難
  • 激しい脈の乱れ
  • 吐き気
  • 冷や汗
  • 顔面蒼白
心筋梗塞の代表的な危険因子
  • 高血圧
  • 喫煙
  • 糖尿病
  • ストレス
  • 運動不足
  • コレステロール値が高い

特に高血圧、喫煙、コレステロール値の上昇は、心筋梗塞のリスクを高めます。心筋梗塞の予防には生活習慣の改善が重要です。

狭心症と心筋梗塞の違いは?見分け方はあるの?

狭心症と心筋梗塞は症状に似ている点がありますが、下記のような違いがあります。

心筋の状態の違い

狭心症は血液の流れが悪くなるものの、ある程度の血流が保たれており、血液が心筋へと流れていきます。
しかし、心筋梗塞では冠動脈が完全に閉塞し、血液が流れなくなってしまい、心筋の一部が壊死(細胞や組織が破壊されていること)している状態です。

症状の程度や持続時間の違い

狭心症と心筋梗塞の症状は、胸の痛みがあらわれるという点は似ています。しかし痛みの程度や症状が続く時間が異なります。

狭心症の胸の痛み

程度が軽いわけではありませんが激痛というほどではありません。症状は数分で治まることが多いです。

心筋梗塞の胸の痛み

程度がかなり強く、痛みは20分~数時間続くことがあります。

対処法の違い

狭心症

狭心症の症状は、安静にしていると治まることもあります。発作をくり返すようなら、ニトログリセリンなどの常備薬で発作を抑えることが多いです。

心筋梗塞

心筋梗塞の発作が起きた場合は早急に対処する必要があります。処置が早ければ早いほど治癒する確率も高くなるので、痛みがあらわれたら我慢せずにすぐに救急車を呼びましょう。ニトログリセリンを用いても完全に閉塞している血管は再開通しないため、痛みが改善しないことが多いです。

狭心症から心筋梗塞に移行する?予防法は?

狭心症は冠動脈の動脈硬化による閉塞や痙攣が生じることで、一時的に心臓の筋肉への血流が減少することで生じます。一方、心筋梗塞は冠動脈が完全に閉塞することで、心臓の筋肉に全く血液が送られなくなり、心臓の筋肉が酸欠状態となる病気です。

狭心症の胸痛発作は数分で治まるため、放置する人も多いです。しかし冠動脈の動脈硬化がどんどん進行すると、完全に閉塞して心筋梗塞へ移行する可能性があります。心筋梗塞は生命に関わる重篤な状態で、突然発症して死亡するおそれのある病気です。

狭心症が疑われる場合には早期に検査を行い、適切な治療を開始して心筋梗塞への移行を予防するようにしましょう。

心不全とは

心不全とは、心臓の働きが弱くなり、血液を全身に送り出すポンプ機能が低下する状態のことです。ポンプ機能の低下によって全身に十分な量の血液を送り出せなくなり、肺に水がたまる、呼吸困難になるなど、さまざまな症状が引き起こされます。

心不全を発症すると以下のような症状が見られるようになります。当てはまる症状が多い人は、心不全を発症している可能性がありますので早めに病院を受診しましょう。

心不全の症状
  • 尿量が減る
  • 全身にむくみが生じる
  • 息切れがあり、特に横になるとひどくなる
  • 夜間を中心に咳が止まらなくなる
  • 疲れやすく、階段の上り下りなどができなくなる
  • 動悸がある
心不全の原因
心不全を発症する原因にはさまざまなものがあり、心臓の働きを障害する病気はすべて心不全になり得ます。もちろん狭心症や心筋梗塞によって心不全を発症することがあります。

狭心症と心不全

狭心症は心臓の筋肉に血流を送る冠動脈が狭窄することによって引き起こされる病気のため、進行すれば心不全を引き起こすこともあります。

狭心症の症状(胸痛など)の症状は身体を動かした後などに数分程度続くのみで自然に治まりますが、このような発作を繰り返すたびに心臓の筋肉は酸欠状態によるダメージを受けます。
ダメージが蓄積していくことで心臓の機能も徐々に低下し、最終的に心不全を発症することもあるのです。

心筋梗塞と心不全

心筋梗塞になると心筋の壊死が生じ、ポンプ機能の低下が引き起こされます。そのため、心筋梗塞の合併症として心不全を発症することがあります。

心筋梗塞が原因で生じる心不全は、重症なケースが多く、尿量の減少によるむくみが顕著に現れやすいのが特徴です。まれに心筋梗塞を発症しても胸痛などの症状が見られないことがあり、心不全を発症したことで心筋梗塞が発見されることも少なくありません。
尿の減少やむくみが生じたときは、なるべく早く病院で検査を受けるようにしましょう。

前兆に気づいて早期治療をすることが重要

狭心症も心筋梗塞も発作が生じる前に前兆があらわれることがあります。この前兆は冠動脈に閉塞が起き始めたことによる症状で、初期症状と考えられます。

代表的な前兆
  • 体の痛み
  • 前胸部の不快感や吐き気
  • 息苦しさ

痛みの程度は人によって異なり、初期の状態から脂汗が出るほどの痛みを感じる人もいます。また、痛みは心臓のある左前胸部に限らず、肩や首、歯や背中に痛みを感じることもあります。

早期治療を開始するには、これらの異常に気づくことが大切です。特に狭心症は発作が数分で治まってしまうため、そのまま放置される傾向があります。気になる痛みなどの症状があらわれたら、早めに病院を受診して医師に相談してください。

おわりに:心臓の異変は命に関わります!数分で治まる発作でもすぐ病院で相談を

狭心症、心筋梗塞、心不全は極めて緊急性が高い疾患です。命に関わることもありますので、痛みなどの前兆と思われる症状があわわれた場合、我慢せずに病院へ行く、救急車を呼ぶなどの対応をしましょう。早期発見・早期治療が重要ですので、前兆に気づいた段階で検査を受けてください。

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