記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/14 記事改定日: 2018/7/13
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
夏休みやゴールデンウィークなどの長期休暇を利用して海外旅行に行く方も多いでしょうが、その際に注意したい病気があります――それは「A型肝炎」です。では、A型肝炎とはどんな病気でしょうか?症状や感染経路、予防法など全般的な情報をまとめました。
A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(hepatitis A virus HAV)によって引き起こされる急性ウイルス性肝炎の一種です。HAVは糞便中に排泄され、糞口感染で広がっていくことも多いため、その流行率は衛生環境によって大きく左右されます。よって、A型肝炎は環境の整っていない開発途上国で蔓延していますが、一方で水道設備の整った先進国での感染者は減少傾向にあります。
A型肝炎の主な感染経路は、経口感染(糞口感染)によるものです。汚染された水や食べ物を摂取したり、HAVが付着した手で口に触れたりしたことが原因で引き起こされます。衛生環境の整っている日本においては、汚染水による感染はまれですが、HAVに汚染された生牡蠣などの魚介類を食べたことで感染するパターンが多いといわれています。また、衛生環境がよくない国へ海外旅行に行った人が、旅行中にA型肝炎に感染してしまうケースも少なくありません。
A型肝炎は主にカキなどの二枚貝や汚染された井戸水、たい肥を使用した野菜などを介して感染します。このため、A型肝炎は食中毒の一種とも考えられていますが、感染者の便を介して他者に感染を広げることもあります。
感染者の便にはA型肝炎ウイルスが含まれており、便座やドアノブ、電気スイッチなどに付着したウイルスを他者が触れて体内に取り込んでしまうことで感染するのです。このため、A型肝炎ウイルスに感染した人や身近に感染者がいる場合には、手洗いや消毒などの適切な感染対策を行う必要があります。
A型肝炎は性行為で感染する可能性があります。感染者の便にはA型肝炎ウイルスが含まれており、症状がよくなった後も一か月ほどは排出が続くとされています。
このため、オーラルセックスを行うことで陰部や肛門付近に付着したウイルスを取り込んでしまうこともあるのです。
A型肝炎に感染すると、2~6週間の潜伏期間の後、発熱や全身の倦怠感などが現れるようになります。その後、吐き気や食欲の低下といった消化器症状とともに、黄疸や肝腫大などの肝症状が現れるのが一般的です。まれに劇症化して死亡してしまうケースもありますが、ほとんどの場合、1~2ヵ月ほど経過した頃に回復します。なお、A型肝炎の感染者の多くは高齢者であり、さらに高齢者は感染すると重症化しやすいので注意が必要です。
A型肝炎の感染を予防するには、手洗い・うがいといった一般的な予防法に加え、A型肝炎ワクチンを接種することをおすすめします。日本でのA型肝炎ワクチン(エイムゲン®)は計3回の接種が必要ではありますが、接種すればほぼ100%抗体を獲得でき、さらに効果は数年以上続くという高い予防効果があります。
A型肝炎はウイルスに汚染された二枚貝や井戸水、野菜などを口にすることで感染します。
日本では、衛生環境が整っているため、A型肝炎の発症者は非常に少なく、ウイルスが蔓延することはありませんが、東南アジアをはじめとした海外ではA型肝炎は未だ深刻な流行が見られる国もあります。
流行地域へ旅行する際には、生水や魚介類やサラダなどの生食を避け、加熱したメニューを選ぶようにしましょう。
A型肝炎ウイルスは、国内で生牡蠣を食べたときに感染してしまうこともありますが、海外旅行での食事が原因で感染してしまうケースも多々みられます。衛生環境が未整備な国に行く際は口に入れるものに十分注意し、また事前にワクチンを接種しておくようにしましょう。