吃音症はどんな発達障害?治療するために知っておくべきこととは!?

2017/9/20 記事改定日: 2018/5/28
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

言いたいことばがスムーズに出てこないで、「わ、わ、わ、私は……」など、滑らかに話すことができない発達障害を吃音症といいます。この記事では、吃音症の特徴と吃音症とつきあっていくうえで知っておくべきこと、注意するべきことを詳しくお伝えします。

吃音症と発達障害の関係性

吃音相は、自閉症やアスペルガー症候群、ADHAなどの発達障害に併発しやすいといわれています。吃音者の半数以上が何らかの発達障害を併発しているとの報告もあります。

また、逆に発達障害によって吃音が誘発されることもあります。発達障害の中でもアスペルガー症候群や自閉症は非常に強いこだわりを持ち、周囲の人に吃音者がある場合にはその人に言葉を真似しながら言語を取得してしまし、訓練によっても修正することが困難になる傾向があります。さらに、発達障害の人は集団生活の中で他者との軋轢を生じやすく、これがいじめや孤立の原因となり、大きなストレスを感じることがあります。その結果、吃音を発症してしまうことがあるのです。

吃音症とは

吃音症とは、一昔前まで使っていた「どもる」ような話し方をしてしまう障害のことです。年齢や言語能力に見合った会話が困難であり、次に挙げる、吃音症の特徴的な症状が1つ以上あらわれるときに診断されます。

  • 反復(単音や単語の一部を繰り返す)
    例:わ、わ、わ、私は……
  • 引き伸ばし(単語の一部を長くのばす)
    例:わーーたしは
  • ブロック(単語の出始めなどでつまる)
    例:・・・・・っわたし

吃音の多くは幼児期に症状が現れ、そのうちのほとんどは学童期や成人期までに症状がなくなったり軽減するといわれています。しかし、成人後も持続する場合や思春期頃から発症するケースもまれにあります。

吃音症は、世界保健機関(WHO)による国際疾病分類第10改訂版(ICD-10)で「通常小児期および青年期に発症する行動および情緒の障害」の中に分類されています。

吃音症の種類と原因

吃音症には、発達性吃音と獲得性吃音の2種類あり、吃音症の人の9割は発達性吃音です。

発達性吃音

発達性吃音の特徴

発達性吃音には、次に挙げる特徴があります。

  • 幼児が2語文以上を話し始める時期に起きやすい
  • ほとんどが2~5歳の幼児に発症する(小学校以降の発症もある)
  • 吃音の発症率は約5%
  • 国や言語による発症率の違いはみられない
  • 有病率(全人口における吃音のある人の確率)は1%程度
  • 男女比は4:1ほどで、男性に多いが幼児期には男女差はみられることが少ない

発達性吃音は、うまく話せる時期があり、7~8割の人は自然に治るとされているのが特徴です。

しかし、残りの2~3割の人は、少しずつ症状が固定化してしまい、なめらかに話せる時期が減ってしまいます。さらに進行すると、話そうとしたときに最初の言葉が出なくなることが頻繁にみられるようになります。

その状態が長期化したり、さらに言葉が出にくくなってしまうと、話すことに嫌悪や恐怖を感じるようになり、よりいっそうことばが出にくくなるというループが起こります。

その後は、身体を動かして勢いをつけて話したときに言葉がうまく出たというような経験をしたときに、それを学習していつもその方法を使って話をするような行動がみられることがあります。

発達性吃音の原因

原因が完全に解明されたわけではありませんが、次に挙げることが影響し合って発症するといわれています。

  • 体質的要因・・・吃音になりやすい特徴が子供自身にある
  • 発達的要因・・・身体や認知能力、言語能力、情緒が爆発的に発達する時期の影響
  • 環境要因・・・周囲の人との関係や生活していくなかでのできごと

獲得性吃音

獲得性吃音の特徴

獲得性吃音には、

  • 獲得性神経原性吃音・・・神経学的な病気や脳の損傷などが原因で現れるもの
  • 獲得性心因性吃音・・・心的ストレスや事故や怪我などの体験のあとに現れるもの

の2つがあります。
2つとも青年以降(10代後半~)に発症することが多いと言われています。

吃音症は治療できる?気をつけることと知っておくべきこと

吃音を治すために何ができるかを見ていきましょう。

初期の頃に気をつけること

吃音症の発症する初期の頃は、本人には、話すことに関するいやな気持ちはありません。周囲の大人の否定的な反応から、話すことと恐怖の感情がリンクし、自己否定的な価値観となり、よけいに話すことがいやになります。
また、良かれと思って、「お腹に力を入れると話しやすいよ」などと技術的なアドバイスを行うと、自然に話せなくなり、症状は悪化するおそれがあります。

脳の障害から起こる可能性も

吃音症は、口や舌の動きが滑らかでないことや脳の機能障害が主な原因ですが、腫瘍などの脳の器質的な障害が原因になることもあります。

脳の器質的な問題が原因の場合は、器質的な問題を取り除く専門的な治療が必要になることもあります。まず病院を受診し、吃音の原因が脳の器質的な問題から起こっているものでないかを診てもらい、治療をどのように進めていけばいいか相談しましょう。

吃音症の訓練方法には「間接法」と「直接法」がある

吃音の治療の中で、意図的に話す訓練をしない方法を間接法といいます。間接法は吃音症状を本人に意識させることがないため、話すことへの不安や恐怖を感じにくいことがメリットです。反面、効果が現れるまで時間がかかるというデメリットがあります。

間接法に対して、吃音緩和と流暢性形成を組み合わせて訓練のアプローチをする方法を直説法といいます。吃音症状に即時に対処できるメリットがある反面、吃音症状を本人が強く意識してしまうため、不安や恐怖を感じやすいことがデメリットになります。

本人の性格や取り巻く環境を見ながら使い分けていきましょう。

吃音の人と接するときの注意点

最初は、子供自身も自分の症状に気づきません。どもったり、ことばが出なかったりした経験を、自分でも驚いたり、うまく話せないことを不満に感じたりしてします。

成長とともに吃音が定着し、うまく話せない経験が積み重なると、周囲の人から指摘され、吃音症を意識するようになります。そのトラウマから、話す前に不安や恐怖を感じようになることもあるでしょう。子供自身の気持ちの安定や伝わったという成功体験を増やすようにすることで、少しずつ改善が見込めることもあります。

受けられる社会的支援のことも知っておこう

吃音症の人は、様々な場面で社会生活に困難を生じることがあり、これらの困難を少しでも軽減できるように社会的支援を受けることが可能です。
子供であれば、療育センターや育児支援センターなどによって適切な言語訓練を受けることができます。また、大人では就労支援センターなどで勤務先の紹介や職業訓練を受けることができます。
それぞれのサービスの内容は、自治体やセンターを運営するNPO法人などによって異なりますので、よく下調べをして希望する支援を受けられるところを探してみましょう。

障害者手帳

吃音症は発達障害に含まれるため、精神保健福祉手帳の交付を得ることが可能です。また、耳鼻科的な疾患などで吃音症を発症している人は身体障害者手帳の交付を受けることもできます。

これらの手帳を交付されると、税金の一部免除や公共交通機関の利用料金の減免、就職での配慮など様々なメリットを得られます。しかし、交付されるには、医師から診断書や意見書を発行してもらい、自治体に申請を行う必要があります。これらの手帳の交付審査は非常に厳密に行われるため、中には申請をしても交付が受けられないこともあります。
申請しようと考えている人は、主治医に取得可能かどうかをよく相談してみましょう。

おわりに:吃音は発話障害の一種。会話への不安を少なくしてあげよう

吃音は、脳の機能障害である発達障害の1つです。努力で治るものではありません。記事の中にもあるように、話したいという気持ちを大切に、話すのが楽しくなる環境を作ってあげましょう。
また、本人だけでなく吃音症の人を支える家族の負担を減らすためにも、受けられる社会的支援についても理解しておきましょう。

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