電解質異常とは?原因・症状・治療法を解説!

2019/7/19

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

電解質という言葉を覚えていますか?中学理科で習うこの単語は、学生生活を終えてしまうと忘れてしまう人も少なくありませんが、実は体の中で非常に重要な役割を持っているのです。電解質のバランスが崩れ、多すぎたり少なすぎたりすると「電解質異常」という状態になり、体にさまざまな症状が現れます。そこで、この記事では、電解質異常の起こる原因やその症状、治療法について解説します。

電解質ってどんなもの?

電解質とは、一般的に中学理科で習う「酸・アルカリ」の「イオン」のことで、水に溶けると電気を通す物質のことを言います。なかでも、体内で重要な役割を果たしている電解質(イオン)には、ナトリウム(イオン)・カリウム(イオン)・カルシウム(イオン)・マグネシウム(イオン)・リン(イオン)の5種類があります。それぞれの特徴は以下のようになっています。

ナトリウム(イオン)
体内の水分量や浸透圧を調節する
神経伝達や、筋肉収縮などにも関係している
塩(塩化ナトリウム)を構成するイオンの1つで、人間を含めた生物の細胞外液の主成分
カリウム(イオン)
神経伝達・筋肉収縮・心臓収縮などに関係している
98%が細胞内に存在し、細胞の刺激伝達などに関わる
カルシウム(イオン)
神経伝達・筋肉収縮に関係している
骨や歯を作り、血液を固める
99%が骨に存在し、残り1%が細胞内や血液中に存在する
マグネシウム(イオン)
筋肉の収縮、酸素の活性化に関係している
骨や歯を作る
細胞内で代謝に、細胞外で神経や筋肉の伝達に関係する
骨に約70%、筋肉に約20%、細胞外液に約1%存在する
リン(イオン)
約80%は骨や歯に、約14%は筋肉などの組織や細胞膜に、約1%は細胞外液に存在する
骨や歯を正常に発達させたり、細胞膜の構成成分になる
遺伝情報を伝える拡散やエネルギー貯蔵物質などの構成成分になる

このように、電解質は体の中でさまざまな役割を持っています。これらの電解質は主に腸管から吸収され、各種ホルモンによって調整を受けながら、腎臓で再吸収されたり、余剰分が排出されたりします。健康な状態では、それぞれの体内でのバランスが崩れないよう調整されていますが、何らかの疾患などによる異常が起こると血中濃度などに変化が起こり、変化がキャパシティを超えるとさまざまな症状が現れます。

電解質異常ってどんな症状?

前述の「変化がキャパシティを超えた」状態が電解質異常という状態です。電解質異常になると、以下のような症状があらわれます。ウイルスや細菌などの明確な病原体がない異常なため、診断は極めて難しく、精密な問診や精査と時間が必要になります。

しかし、電解質異常はその程度が重篤であったり長期間であったりすると、心臓や腎臓・脳といった重要な臓器にも取り返しの付かない被害を及ぼす可能性があり、場合によっては生命を脅かすことも十分にあり得ます。そのため、できるだけ早く、専門医による適切な診断と処置を行う必要があります。

低ナトリウム血症
血液中の塩分濃度が低下した状態
水分過剰や塩分不足、その他原因がさまざまで、頻度の高い電解質異常
症状:頭痛・意識障害・食欲不振・倦怠感
高ナトリウム血症
血液中の塩分濃度が過剰になった状態
水分だけが不足すると起こりやすく、電解質異常の中では頻度が低い
症状:頭痛・意識障害など
低カリウム血症
血液中のカリウム濃度が低下した状態
症状:重症例で多尿・筋力低下・不整脈・心筋障害・腎障害
高カリウム血症
血液中のカリウム濃度が過剰になった状態。細胞の内外ともに過剰になる
症状:軽症例では全く症状なし。重症例では体内に酸が過剰に溜まり、危険な不整脈やときに心停止を起こすこともあるため、緊急に処置が必要
低カルシウム血症
血液中のカルシウム濃度が低下した状態
症状:重症例で手足のしびれ
高カルシウム血症
血液中のカルシウム値が過剰になった状態。多尿や脱水を伴うことが多い
症状:多尿・口渇・食思不振・胃部不快感。重症例で頭痛・意識障害・腎不全
低マグネシウム血症
マグネシウムの摂取不足または吸収不足で血液中のマグネシウム濃度が低下した状態
症状:嗜眠・手足の震え・手足のしびれ・痙攣・不整脈
高マグネシウム血症
電解質異常の中では非常に頻度が低い
症状:低血圧・呼吸抑制・心停止など
低リン血症
血液中のリン濃度が低下した状態
症状:重症例では意識障害・不整脈・心不全・呼吸筋低下
高リン血症
血液中のリン濃度が過剰になった状態
カルシウム代謝の一環として起こるため、高カルシウム血症に伴う場合と低カルシウム血症に伴う場合の2パターンがある
症状:特にないが、腎不全期に長く続くと血管の石灰化や生命予後に大きく影響する
※4.0mg/dLを超える高リン血症は、死亡リスクや心臓病発症リスクに強く関わっている可能性が示されている

カリウムやリンなどでは、重症例になるまで自覚症状がないことも重要なポイントです。夏は発汗による塩分不足がよく指摘されますが、これは低ナトリウム血症に関係しています。発汗による塩分不足という、比較的誰でも、どこでも起こりやすい異常なので、電解質異常の中でもよく知られています

電解質異常を起こす原因は?

先ほど発汗が低ナトリウム血症につながることを指摘しましたが、ここではそのほかの電解質異常も含め、電解質異常の原因をご紹介します。

低ナトリウム血症
発汗によって水分・塩分を失ったのち、水分のみを大量に補給する
呼吸器などの感染症・ストレス・水中毒(水の飲み過ぎ)・SIADH(体内に水分が溜まりすぎる疾患)
高齢による代謝低下・心不全・腎不全・副腎不全・肝不全・薬の副作用など
高ナトリウム血症
尿崩症(多尿・口渇・脱水)・極度の脱水
低カリウム血症
嘔吐・下痢・過剰な下剤の使用・慢性の低栄養・慢性のアルコール中毒
マグネシウム不足・原発性アルドステロン症・偽性アルドステロン症(医薬品などによる)
クッシング病・ギッテルマン症候群・バーター症候群・尿細管性アシドーシスなど
高カリウム血症
急性腎不全発症時、または慢性腎不全の際のカリウム摂取過剰
副腎不全・低アルドステロン血症・一部の降圧剤の副作用
低カルシウム血症
慢性腎不全・副甲状腺機能低下症(甲状腺全摘出手術後)
くる病(ビタミンD欠乏症・代謝異常など)・慢性の低栄養
高カルシウム血症
原発性副甲状腺機能亢進症・ビタミンD過剰症・利尿薬作用
悪性腫瘍など、骨の破壊的病変を伴うケースが多い
低マグネシウム血症
アルコール依存症・下痢・脂肪便・小腸バイパス術・プロトンポンプ阻害薬の慢性使用
妊娠や授乳・ギッテルマン症候群・一部の利尿薬・副甲状腺腫瘍摘出後など
高マグネシウム血症
腎不全患者が制酸薬や下剤などのマグネシウム含有薬物を服用した場合が最も多い
低リン血症
原発性副甲状腺機能亢進症・慢性の低栄養・慢性のアルコール中毒
下痢・制酸薬内服・腎尿細管障害
高リン血症
慢性腎不全・ビタミンD過剰症・多発性骨髄腫
タンパク質や加工食品の過剰摂取

低ナトリウム血症は、発汗によって水分と塩分の両方を排出したのち、喉がかわいたからと水分だけを大量に摂取することが原因で発症します。塩分を補給しないと水分が細胞内にまで入れないため、血液や体液だけが薄まってしまうのです。最近ではスポーツドリンクや経口補水液など、電解質を含んだ飲料が多く販売されていますので、状況に合った水分を選びましょう。

その他の電解質であるカリウムやカルシウム、リンなどが不足するのは、慢性的な低栄養(そもそもの摂取不足)のほか、下痢や下剤の使用など、腸管からの吸収不足も挙げられます。特にカルシウムは単体では吸収率が低いので、腸管からのカルシウム吸収にビタミンDが必要です。そのため、ビタミンDが少なければ吸収不足の低カルシウム血症に、ビタミンDが多すぎれば吸収しすぎる高カルシウム血症になりやすいのです。

また、高齢者では低ナトリウム血症や低カリウム血症を発症する頻度が高く、既往の認知症が悪化したり、抑うつ症状が出現したりして医療機関を受診し、そこでやっと電解質異常が発覚することもあります。この場合、脳血管障害などの中枢系の疾患ではないため、頭部CTやMRI検査では異常の原因を発見できません。そのため、採血結果で異常があれば電解質異常と判断されます。

電解質異常を治療するには?

では、こうした電解質異常を早急に治療するには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。

低ナトリウム血症
原因によって生理食塩水・水分制限・バソプレシン拮抗薬・原因疾患の治療など
急激に補正すると浸透圧性脱髄症候群などの合併症が起こるリスクがあるため、緩やかに補正する
高ナトリウム血症
輸液・経口で水分補給
低カリウム血症
原因によってカリウム量を補正する・原因となる薬剤の中止
食事療法・薬物療法、原因疾患によっては手術も
高カリウム血症
薬物療法や食事制限、重症例の場合は緊急透析療法など原因による
低カルシウム血症
カルシウム製剤・ビタミンD製剤の投与
高カルシウム血症
原因により、点滴などで脱水やカルシウム値の補正・原因疾患の治療・骨破壊を抑制する薬剤の投与
低マグネシウム血症
薬物療法・点滴・筋注など
アルコール依存などの原因疾患がある場合は、疾患の治療
高マグネシウム血症
静脈注射や点滴などによる薬物療法・血液透析・腹膜透析など
低リン血症
原因により、リン値の補正・禁酒・原因薬剤の中止・手術療法など
高リン血症
腎不全の場合は蛋白制限・リン吸着剤を使う
ビタミンD過剰の場合は原因となる薬剤の中止

いずれの場合も、基本的に原因となる疾患がある場合は疾患の治療を行いながら電解質異常を正常な値に近づけていく必要があります。電解質が少ない場合は電解質を含む注射や錠剤などの薬物療法を行ったり、過剰に消費してしまう薬剤やアルコールなどの摂取を中止します。電解質が多い場合も食事療法などで改善する場合がありますが、緊急を要する場合は透析療法を行って、直接血液中から該当の電解質を除去することもあります。

薬が原因で電解質異常が起こることもある?

「原因」の部分で「薬の副作用」など、薬物を使用していて電解質が多すぎ、または少なすぎる状態になってしまうことがあることをご紹介しました。また、病態によっては、疾患があることで薬剤への反応が変わり、思わぬ副作用が現れることもあります。

甲状腺機能亢進症
低カルシウム血症
副腎疾患アルドステロン症
高ナトリウム血症、低カリウム血症
尿崩症
低ナトリウム血症

このような病態がある状態で薬剤を投与すると、電解質異常が比較的起こりやすいと考えられています。また、異常が起こったとしてもその反応が急性のものでなく、慢性的にゆっくりと進行していった場合、自覚症状が目立たず、採血検査を行って初めて電解質異常がわかる、というケースもあります。

内服薬では、以下のような薬剤に注意が必要です。

ループ・サイアザイド系利尿剤
低ナトリウム血症・低カリウム血症
カリウム保持性利尿剤
高カリウム血症
甘草(主に漢方薬に含まれる)
低カリウム血症

これらの利尿剤は心不全・腎不全・高血圧などの場合に処方されることが多く、甘草は甘草湯・麻黄湯・紫苓湯など、非常に多くの漢方薬に配合されています。こうした薬剤の副作用はもちろん添付文書などに記載されていますので、天然素材だから漢方薬は安全と思い込まず、服用を始めるときには医師や薬剤師に相談してからにしましょう。

また、薬剤の中止や足りない電解質の補正を行えば即時に症状が消えるわけではなく、血中濃度自体が正常になっても、症状からの回復には時間がかかる場合があります。市販の健康食品やサプリメントなどでも、狙った効果と逆の効果が現れることもあるのです。

そこで、対策としては「こまめに採血検査を行うこと」「異常を感じたらすぐに医師に相談すること」「お薬手帳を作り、常に携帯しておくこと」「市販の薬剤やサプリメント、健康食品を摂取する場合は必ず医師に相談すること」が大切です。

おわりに:電解質異常は生命を脅かすことも。早めの対処が肝心

電解質異常は、診断で確定することが難しいわりに、放置していると生命を脅かしかねないという病状です。そこで、例えば夏場や高齢者に起こりやすい低ナトリウム血症などは、ぜひ経口補水液などで早めに対処しましょう。

また、薬剤や疾患によって起こりやすい電解質異常の場合、自己判断で市販薬や健康食品などを使わず、必ず医師や薬剤師などの専門家に相談してから使うようにしましょう。

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