記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/20 記事改定日: 2020/2/27
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ループス腎炎は、全身性エリテマトーデスが原因で発症する腎障害で、20~40歳代の女性に多くみられる病気です。今回の記事では、ループス腎炎がどのような病気かについて、原因やの症状、治療法、日常生活の注意点などについて解説します。
ループス腎炎は、全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus: SLE)によって引き起こされる腎障害で、SLE患者の9割に発生するとされています。SLEは腎障害を合併しやすく、ループス腎炎の発症は生命予後に大きく関与します。
ループス腎炎は、SLEによってできる抗原抗体の複合物が腎臓の糸球体に付着し、腎臓の機能を損なうことによって発症します。尿潜血・尿たんぱくが陽性の場合、SLEの診断や病勢の評価のため、腎生検を行うことがあります。
ループス腎炎では次のような症状が現れます。
また、尿検査ではタンパク尿などが見られるのが特徴で、進行すると腎臓の機能は徐々に低下していきます。その結果、身体に必要なタンパク質も尿と共に排出されるため体内に水分が溜まりやすくなり、むくみや倦怠感、息苦しさなどの症状が引き起こされます。
最終的には腎臓の機能が著しく低下するため、人工透析が必要になることもあります。また、全身性エリテマトーデスは腎臓だけでなく全身の様々な部位に炎症を引き起こすため、腎臓以外の症状が悪化していくこともあります。
ループス腎炎は下記の流れで診断、治療を進めていきます。
SLEの症状とともに尿潜血陽性・尿たんぱく陽性がみられた場合、免疫学的検査や腎生検(腎臓から組織を摂る診断法)を行い確定診断されます。大きく6つの病型に分類されます。
巣状ループス腎炎、びまん性ループス腎炎、膜性ループス腎炎が治療対象となり、治療には副腎皮質ステロイド薬が使用されます。
重症の場合は、シクロフォスファミド、タクロリムス、ミゾリビンなど免疫抑制剤を併用する場合があり、ミコフェノール酸モフェチルを併用することもあります。
ループス腎炎が進行し、腎不全になった場合は人工透析が必要となることもあります。
ループス腎炎は再発する可能性がありますが、治療により自己抗体の活動を抑えられていれば、腎機能障害の進行をコントロールすることはできます。
日常生活では、再発を防ぐために気をつけるべきこととして、日光への暴露、風邪などの感染症、、外傷、手術、妊娠、薬剤アレルギーなどがあります。
また、薬を医師の指示なく減らしたり、中止したりしないようにしてください。
緊急の災害時に備えて、治療薬を持って避難できるように、普段から少し余分に持っておくことをおすすめします。
ループス腎炎はSLEによって引き起こされる腎障害です。進行して腎不全に陥ると人工透析が必要になり、再発することもあるため治療が難しい病気ではありますが、治療で自己抗体の活動を抑えられれば腎機能障害の進行をある程度コントロールできるといわれています。
医師の指示を守ってステロイドを服用するとともに、紫外線や化粧品といった刺激物をできるだけ避けるようにしましょう。