糖尿病三大合併症のひとつ糖尿病性腎症はどんな病気?

2017/9/27 記事改定日: 2018/3/7
記事改定回数:1回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

糖尿病性腎症は糖尿病の合併症として発症する可能性の高い病気です。初期症状はほとんどあらわれませんが、最終段階まで進行すると透析療法が必要になるため、早期の発見が治療の鍵になります。
そんな糖尿病腎症について、この記事で詳しくお伝えします。

糖尿病性腎症とは

糖尿病性腎症は糖尿病の合併症の一つです。
高血糖状態が長い期間続くことで全身の動脈硬化が進み、腎臓の糸球体の細かな血管が壊れて老廃物を濾過(ろか)することができなくなることで引き起こされます。

初期の頃は自覚症状がほとんど現れず、尿検査で微量アルブミンを発見できないと発症に気づくことができません。発見が遅れて進行してしまうと元の状態に戻ることが難しく、最終段階まで進行すると透析治療が必要になります。

糖尿病性腎症の病期による自覚症状と治療法について

前述した通り早期のうちは自覚症状はほとんどありませんが、ある程度進行すると〈むくみ、息切れ、胸苦しさ、食欲不振、満腹感〉などが現れ、さらに悪化すると〈顔色が悪くなる、疲れやすくなる、吐き気、嘔吐、筋硬直、手足のしびれ、腹痛、発熱〉といった自覚症状を感じるようになります。
ここまで進行すると腎臓機能をもとの健康な状態に回復させることが難しくなるため、自覚症状がないうちに治療を開始することが大切になります。

糖尿病腎症の病期はタンパク尿と腎機能の状態によって5期に分けられます。
それぞれに見られる症状と治療法を見ていきましょう。

第1期(腎症前期)

糖尿病以外の自覚症状はなく、検査しても腎症であることを診断できない状態です。

第2期(早期腎症)

アルブミンというタンパク質がわずかに尿中(微量アルブミン尿)から検出されます。
それ以外の症状はほとんど見られませんが、血圧が高くなる傾向があります。
この段階で糖尿病腎症を発見した場合、尿検査や血液検査、厳格な血糖コントロールと血圧の管理が必要です。

第3期(顕性腎症)

尿中にタンパク質が出てきて腎機能が低下し、タンパク尿が増加してむくみが出てきやすくなります。
尿検査、血液検査、厳格な血糖コントロールと血圧の管理に加えて、食塩、タンパク質を制限した食事療法に切り替える必要があります。

第4期(腎不全期)

この段階になると腎臓にある糸球体呼ばれる部分で血液がろ過されず、老廃物が血液中にたまって〈むくみ、だるさ、皮膚のかゆみ、夜間の手足の痛み、貧血〉などの尿毒症の症状が出るほか、低血糖を起こしやすくなります。
尿検査、血液検査、厳格な血糖コントロールと血圧の管理と、腎症治療により重点をおいた食事療法が必要です。

第5期(透析療法期)

腎臓の機能がほぼなくなり、慢性透析療法が導入されます。病状や医師の判断によって多少の違いはありますが、人工透析は通常週3回行います。
人工透析でも症状が改善しない場合には腎移植や膵腎移植を行う必要があります。
予後については、5年後の生存率がおよそ50%といわれています。

糖尿病性腎症の治療について

糖尿病性腎症の治療の中心は血糖値のコントロールと血圧のコントロールと食事療法です。具体的には塩分やタンパク質の制限や摂取カロリーの制限を行い、定期的な運動を取り入れることで治療が進められます。また、必要に応じて降圧剤(レニン‐アンジオテンシン系阻害薬が使われることが多い)を服用して血圧コントロールをすることもあります。
第3期まで進行すると、さらに厳しい食事制限が必要になるだけでなく、激しい運動ができなくなります。むくみの状態によっては水分の摂取制限が加わることもあります。

糖尿病性腎症は適切な治療によって症状が改善(寛解する)することもあるので、医師の指示に従いながら血糖値のコントロールと血圧のコントロール、食事療法を続けていきましょう。

糖尿病性腎症を予防するために

糖尿病性腎症を予防するためには食生活の改善が必要になります。間食が多かったり、栄養バランスが偏った食生活を続けていると発症リスクが高まるからです。
加えて毎日決まった時間に体重計に乗るようにするなどして、自分の体重を正しく把握するように心がけることも大切です。

また、早期のうちに腎臓の異常を発見できるように定期的に尿検査と血液検査をすることも重要です。糖尿病性腎症はタンパク尿が現れて自覚症状が出たときには、かなり進んだ状態になってしまっているケースが多いので、早期発見のためには「微量アルブミン尿検査」という尿検査を年に数回、定期的に行い、できるかぎりの早期発見・早期治療を心がけることが大切です。
医師に確認しながら、血糖値や血圧とともに腎臓の状態をきちんと把握しましょう。

おわりに:血糖コントロールと腎臓の状態を確認しよう

糖尿病は単体でも十分怖い病気ですが、合併症に進行すると状況はさらに深刻になります。糖尿病性腎症の発症リスクを下げるためには健康的な食生活を送り、血糖値と血圧をコントロールすることが大切です。
また、糖尿病性腎症は初期の自覚症状が乏しいため、定期的に検査をして早期発見をすることが重要になってきます。医師と相談しながら、血糖値の管理と共に腎臓の状態を把握するようにしましょう。

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