糖尿病の原因について ―遺伝するって本当ですか?

2018/4/26

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

糖尿病の発症に遺伝が関わっていると聞いたことがあるという人もいると思いますが、それは本当でしょうか?糖尿病の家族や親戚がいる人は、絶対に糖尿病になってしまうのでしょうか?糖尿病と遺伝の関係と、発症の予防について詳しく解説します。

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糖尿病はなぜ発症するか

糖尿病の原因は一つに特定できず、人によってさまざまです。しかし、糖尿病の中でも最も多くの人がかかるとされている2型糖尿病は、主に過食や偏食などの食習慣の乱れや、運動不足や不規則な睡眠などの生活習慣が起因していると考えられていいます。

糖尿病は、血液中の糖を代謝する働きをもつインスリンの分泌が上手く行われず、インスリン作用不足に陥ってしまうことで発症します。また、インスリンが持つ糖を代謝する作用が働きにくくなってしまうことも主な原因です。

インスリンを産生する膵臓(すいぞう)の細胞が何らかの原因で破壊されてしまい、インスリンが欠乏してしまう糖尿病を1型糖尿病といい、何らかの原因でインスリンの作用が働きにくくなってしまうことで起こる糖尿病が2型糖尿病です。この2つはそれぞれ発症の原因は異なりますが、どちらも遺伝が発症に関わってくるケースがあります。

糖尿病の要因となるもの

一般的に糖尿病として思い浮かべられる2型糖尿病の場合、生活習慣が主な原因として挙げられるでしょう。糖質や脂質を過剰に摂取するような食生活や、酷い運動不足、喫煙や加齢、あるいは仕事や家庭における強いストレスも原因となると考えられています。

また、上記で示したように遺伝因子もまた発症要因のひとつといわれていますが、親兄弟や親戚に糖尿病患者が多い場合には、食生活や運動といった環境的要因が糖尿病の発症に影響している可能性もあるといえるでしょう。

1型糖尿病の原因である、膵臓の細胞の破壊が起こる原因はまだ明らかになっていません。免疫が間違って自分を攻撃してしまう自己免疫疾患が関与していると考えられています。

糖尿病と遺伝との関係性

父親や母親、あるいは兄弟や祖父母が糖尿病だった場合、その人自身も遺伝的因子を持っていることになります。基本的に家族の体質は似るものであり、インスリンを分泌する膵臓の機能についても、同じ家族同士で似た要因を持つ可能性が高くなります。

また、上記でも説明したように、家族で一緒に暮らすにあたり、似通った食生活を長年にわたって送ることも要因として挙げられるでしょう。食事は人間の体を構成するための大切な要素です。たとえば脂質が多い食事ばかりを取っている家族と暮らしていた場合は、糖尿病リスクは高まります。

ただし、あくまでも糖尿病になりやすい体質が遺伝するというだけで、家族の糖尿病がいるからといって、自分も同じように糖尿病になるわけではありません。もし、家族に糖尿病の人がいる場合は、今のうちに生活習慣を見直し、血糖値を上げないようにしましょう

糖尿病にならないための生活習慣

糖尿病の予防には、血糖値をコントロールすることが大切です。暴飲暴食の習慣がある人や、ドカ食いや早食いのクセがある人、甘いものばかり食べている人や脂っぽい食事を好んで食べている人は、野菜中心の食事に切り替えるようにしましょう。

また、睡眠不足や過度のストレス、喫煙も糖尿病の発症の原因になると考えられています。血糖の代謝のためだけでなく、睡眠の質の改善やストレス解消のためにも適度な運動がおすすめです。少し息が切れ、汗ばむ程度の有酸素運動を習慣化するようにしてください。

おわりに:予防のためにも進行を抑えるためにも生活習慣の見直しが重要!

糖尿病の発症には遺伝が関わっている可能性はあります。しかし、糖尿病になりやすい体質が遺伝することが多く、生活習慣などが複合的に関わることで発症すると考えられています。糖尿病の家族がいるからといって自暴自棄にならず、健康的な生活習慣を送るように心がけて糖尿病を予防しましょう。

また、すでに糖尿病を発症してしまったという人は、これ以上進行させないためにも、さらに厳格な生活習慣の見直しが必要です。医師に相談しながら、自分にあった治療を続けていきましょう。

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