記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/22 記事改定日: 2020/5/22
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
口腔カンジダ症は、赤ちゃんから大人まで発症する可能性のある病気です。通常カンジダ菌は誰の口の中にも存在しますが、正常な状態であればほとんど発症することはありません。では、なぜ発症するのでしょうか。今回の記事では、口腔カンジダ症について詳しく解説します。
口腔カンジダ症とは、日和見感染症の一種です。カンジダ菌は、通常誰の口腔内にも存在していますが、免疫力の低下などによりカンジダ菌が異常繁殖した場合に発症します。
口腔カンジダ症になると、口の中、特に舌と口蓋と唇の周りにミルクのカスのような、痛みを伴わない白い斑点を生じさせます。これらの斑点は、食べるときや歯を磨くときに剥がれてくることがあります。
斑点の白っぽい表面を削り取ると、赤く炎症を起こした部分があらわになり、わずかに出血している場合もあり、口の角もひび割れ、赤くなり、痛みを伴うこともあります。
さらに、口の上の盛り上がった傷口を引き起こし、クリーム状で黄色っぽく見えることもあります。
カンジダ自体に臭いはありませんが、カンジダによる炎症で口の中に傷ができると、そこに細菌感染が生じることがあります。細菌感染はひどい場合には膿を生むこともあり、口臭の原因となります。
また、カンジダの特徴的な症状である口の中の白いカスのようなこびりつきは、食べかすが付着して不潔になりやすくなり、これが口臭の原因となることもあります。
口腔カンジダ症にかかりやすい原因として以下のことが挙げられます。
新生児の場合、哺乳瓶や母親の乳首が清潔でなかったり、母親に外陰カンジダ症や腟カンジダ症の感染がある場合に発症しやすくなります。
カンジダは人の常在菌であり体のいたるところに潜んでいますが、口の中にカンジダがいても必ず口腔カンジダ症を発症するわけではありません。カンジダ症は、免疫力が低下しているときなどに、カンジダに対する抵抗力がなくなり、カンジダが異常に増殖することで発症します。
ただし、口腔カンジダは人から人に感染することもあります。最も多いのは、口腔カンジダの人とキスをしたり、性器カンジダの人とのオーラルセックスです。また、乳幼児では、哺乳瓶の口やおもちゃなどにカンジダが付着していることで感染することもあります。
乳幼児は体の抵抗力が弱いため、カンジダが体内に入り込むとカンジダ症が引き起こされやすいですが、大人の場合には正常に免疫が作用すれば発症することはほとんどありません。
しかし、体調が悪かったり、疲れが溜まっていたりして免疫力が低下していると発症することもあるので、感染を防ぐだけでなく日ごろから体調を調え、体の抵抗力を維持する必要があります。
口腔カンジダ症かもしれないと思ったら、まず医師の診察を受けることが重要です。治療しないで放っておくと、症状が消えずに残ったり、不快感が続いたりするようになり、さらに症状が進むと肺炎を発症する可能性もあります。
口内にいつもと違う様子がみられる場合や口腔カンジダと疑わしい症状に気づいた場合は早めに病院を受診しましょう。
口腔カンジダ症は抗真菌薬で治療します。ジェル状や液体状の口内用の抗真菌薬を、1~2週間の間、1日数回、口の中の患部に直接塗り治療します。抗生物質が原因となっている場合は、使用を中止します。
新生児の場合は、通常自然治癒の可能性が高いため、経過観察となることが多いですが、長期化する場合は、検査や治療が必要となる場合もあります。
口腔カンジダを治せる、口の中専用の抗真菌薬は市販されていません。通販などでは、海外から輸入した口腔カンジダ用の薬が販売されていることもありますが、偽物も多く出回っているのでおすすめできません。
口の中専用でない市販の抗真菌薬は口の中に塗ると思わぬ副作用が生じることもありますから、自己判断で市販薬を使用するのはやめましょう。
また、大人の口腔カンジダは、HIV感染症や重度の糖尿病、がんなど免疫力を著しく低下させる病気が原因のこともあります。口腔カンジダに疑わしい症状が出たときは早めに病院を受診し、適切な検査・治療を受けるようにしましょう。
口腔カンジダ症は免疫力が著しく低下したときに発症します。成人の場合は上でも述べたような病気が原因となることがほとんどであるため、まずは原因となる病気の治療を行うことが大切です。
そして、口腔カンジダ症の発症を予防するためには、毎食ごとの丁寧なブラッシングや頻回なうがいなどで口の中を清潔な状態にキープする必要があります。また、疲れやストレスなどをためない、睡眠時間をしっかり確保する、など免疫力を保つための対策を行うことも大切です。
口腔カンジダ症用の市販薬はありません。舌が白っぽい、またはひりひりするなどの気になる症状がある場合、医師の診察を受けるようにしましょう。
口腔カンジダ症の予防には、口腔内を清潔に保つことと免疫を保つことが重要です。オーラルケアと生活習慣を見直し、合わない義歯がある人や口腔トラブルのある人は早めに歯科に相談しましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。