記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/25 記事改定日: 2018/3/28
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
急に腰が「グキッ」となったかと思うと、腰に激痛が走る「ぎっくり腰」。「ほとんどまったく動けなくなって、しばらく日常生活もままならなかった」なんて経験のある人も多いのではないでしょうか? ここでは、ぎっくり腰が起こる原因などについて解説します。
俗に「ぎっくり腰」と呼ばれている症状は、正式には「急性腰痛症」といいます。人間の背骨は、たくさんの椎骨が積み重なっていて、その一つひとつの間には、クッションの役割を果たす椎間板という軟骨が挟まっていて、椎骨同士は筋肉と靭帯でつながることで、背骨の形状と可動性を維持しています。
腰痛症とは、腰の部分にある骨や関節、筋肉や靭帯、椎間板や神経などに何らかのトラブルが起こり、痛みなどの症状が起こることです。腰痛症は急に痛みが起こる「急性腰痛症」(ぎっくり腰)の他に、「慢性腰痛症」という痛みが長期間にわたるものがあります。
このぎっくり腰は、X線(レントゲン)検査やMRI検査の画像では異常がみられないことも多く、実はほとんどの場合、原因がわかりません。しかし、「前かがみで重いものを持ち上げようとしたとき」や「顔を洗った後に上半身を起こしたとき」など、前かがみの姿勢がきっかけで起こる場合が多いです。また、くしゃみをしたときや急に腰をひねったときなど、突然姿勢を変えたタイミングで起こる傾向にあります。
突然転んだり、どこかに腰を打ち付けたりしたときにぎっくり腰になるケースも少なくありません。これは、急激な力が腰にかかったことで、筋肉や関節、骨が負傷したことが原因と考えられます。
あまり知られていませんが、ストレスによる脳機能の不具合も、ぎっくり腰の原因の一つと考えられています。例えば、仕事での人間関係のストレスや、ぎっくり腰への強い恐怖感(医学的には「恐怖回避思考」とも言います)を感じ続けていると、その影響で筋肉が血流不足になり、腰痛を起こす可能性があります。
また、脳機能の不具合とは別のメカニズムで、ストレスそのものがぎっくり腰の発症リスクを上げることもわかっています。実際に、「ストレスを抱えた状態で持ち上げ作業をした際、ストレスの影響で姿勢バランスが微妙に崩れて、椎間板への負担が高まった」という調査結果があるのです。
ぎっくり腰は中高年に多いのですが、これは加齢や運動不足のために、腹筋や背筋などの腰付近の筋肉が弱くなったことが原因と考えられます。なお、運動不足の人がいきなり激しい運動をしても、体にダメージが生じやすいので、運動は負荷の軽いものから徐々にスタートさせてください。
椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄、腰部椎間板症、腰部圧迫骨折などの整形外科疾患もぎっくり腰を引き起こす要因となります。これらは、X線(レントゲン)検査やMRI検査で診断できますが、画像上では軽症でも強い痛みが起こることもあるので注意が必要です。
椎間板ヘルニアとは、椎間板の外側の層の線維輪を中にあるゼリー状の「髄核(ずいかく)」が突き破り、飛び出した状態のことです。飛び出した椎間板が脊髄や末梢神経を圧迫すると、腰の痛みやおしりや脚のしびれなどの症状が現れます。また、ひどい場合には筋力低下や麻痺が起こり、歩行困難など重篤な症状が現れる場合もあります。
椎間板ヘルニア=ぎっくり腰というわけではありませんが、椎間板ヘルニアが原因で急な腰痛(ぎっくり腰)が起こることは非常に多いといわれています。重度の椎間板ヘルニアが原因のぎっくり腰を放置してしまうと、たとえ一時的に痛みが改善したとしても、将来的に再発する可能性が高く、再発したときにはさらにひどい症状が現れることになってしまうかもしれません。
椎間板ヘルニアを含め、ぎっくり腰は原因に適した治療を行うことが大切です。
ぎっくり腰ではありませんが、閉塞性動脈硬化症や腎臓病、胃潰瘍、消化器のがんといった内臓の病気が原因で腰痛が引き起こされることもあります。一般的な腰痛は、姿勢を変えると痛みが和らいだり強くなったりするのが特徴ですが、内臓が原因の場合は、どんな姿勢をとっていても痛みを感じるのが特徴です。腹痛や不正出血なども併せて見られる場合は、すぐに病院を受診しましょう。
「ぎっくり腰=中高年の症状」と思っている方は多いですが、実は20〜30代の若い人でもぎっくり腰になることがあります。お伝えしてきたようにぎっくり腰の原因にはさまざまなものがありますが、特に若い人の場合は、仕事による疲労の蓄積が原因で起こることが多いです。長時間のデスクワークや立ち仕事などにより、腰に疲労が蓄積し続けていると、ちょっとした動作がきっかけでぎっくり腰が起こりやすくなります。
また、20代後半〜30代くらいからは筋力が低下し始めるため、若くても運動習慣のない方は、これまでと同じように重いものを運ぼうとすると、筋肉が負荷に耐えられず、ぎっくり腰が起きてしまうことがあります。
ぎっくり腰は、1週間も安静にしていれば治まっていきますが、以下のような症状が現れる場合は、すぐに整形外科に行きましょう。
・痛みが治まらず日を追うごとにひどくなっていく
・夜中に痛みが現れ、痛みで目が覚めたり眠れない状態に陥る
・どんな姿勢をとっても同じようにひどく痛む状態が3日以上続く
・腰痛以外の症状が出始めた。たとえば頭痛や吐き気、腹痛、足の痺れ、歩行障害、脱力感、排尿障害 など
急に重い荷物を持ったり、前かがみになったりしたことが原因でぎっくり腰になるケースが多いですが、ストレスなどの心理的な原因でぎっくり腰が起こることもあります。また、若い人でも腰痛は起こることがあるので、ぎっくり腰にならないよう、日頃から筋トレやストレッチを継続させていきましょう。